"休み力" 正直な気持ちと向き合うこと

 長期的な休みを取得する、というのは、言い換えると現在の自分状況から距離を置くことを意味しています。そして、新しいことに挑戦したいという想いや、今の環境から抜け出したいという気持ち、混沌としている考えを整理したい、など様々な感情を伴うため、一歩を踏み出すためには起こりうる将来をきちんと見つめる必要がありました。

最悪のケースを想定する

 私が過去に2回の長期的な休みを取得した時は、いずれも社会人でした。そのため、考慮すべき大きなポイントは収入面やキャリアにおいてどのような影響が出るか、となります。

 昇進と育休取得がトレードオフではないという意見とは矛盾してしまうかもしれませんが、長期的な休みを取得する上で、その影響を具体的な数値に置き換えて検討することは非常に重要だと思います。

 シミュレーションのときに心がけていたことは、自分の状況が悪くなったことを対象ケースにしていたことです。例えば、年収の場合は、休んだことによってどれくらいの減収となるのか、考えうる最悪のケースを想定します。私は、楽観的な性格のため、あえて「休んだら、こんな素晴らしい将来が待っている」という憶測はせずに、最悪こんな仕事に就かざるを得ない、であったり収入が〇〇万円以下となり、このような生活を強いられる可能性がある、ことを想定していました。

リスクの顕在化が、自分を正直な気持ちに導く

 ここで、改めて「なぜ、自分が長期的に休みたいのか」と自問自答します。そこには、将来への挑戦だったり、本当に大切なものと向き合いたい、という気持ちが根底にあるはずです。

 もし、ここで自分が本当にやりたいことと、将来における最悪のケースを比較したときに、現状に留まることを選択をしなかったらどうなるのでしょうか。それは、将来的な減収や昇進を、自分の夢と引き換えにすることを意味します。何かを実現したいという気持ちは、その程度の金額なのでしょうか。「また機会があればやってみよう」と先延ばしにすることによって、"今"という貴重な時間を犠牲にしてもよいのでしょうか。そう考えると、自ずと本当にやりたいことであれば、休むというリスクを取ってでも、その選択をすると思います。踏みとどまるようであれば、そこまでやりたいことではなかったと、自分の気持ちをふるいにかけることができます。

休むことは、能動的で、自発的

 "休む"という行動は、それによって自分ができること、得られることと、起きうるリスクを比べて選択することであり、極めて能動的なアクションです。仮に、暦通りで勤務している方が、休みに仕事をしなさいと言われたら反発する方が大多数だと思います。休みの付与は受動的なものなので、それが得られないと納得がいかないからです。ところが、自分が主体となるべき長期的な休みの取得になったとたんに、上司や同僚の顔色を伺って調整をします。GWや夏休み、年末年始の休暇も、連休ではなく申し訳程度の出勤を入れてしまう人も少なくないと思いますが、本当は旅行に行きたい、連休をとってリラックスなどの本音があるはずです。積極的に「休みます」と宣言して、きっかり休暇を取る方が周りに一人や二人いると思いますが、その人は、休むためには、自発的に取り組むことが欠かせないことをきちんと理解しています。 

 有給取得が全然できないという声はよく聞きますし、もちろん職場環境や取りにくい風土もあったりして、できない方がいるのも理解しています。ともあれ、休みを取得するという行為が実は主体的な行動であるということをきちんと認識することが、"休み力"を向上させる最初の一歩ではないでしょうか。

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