【自分でできる】発信者情報開示請求のやり方~爆サイを例に解説~
※この記事では、弁護士に依頼しなくても発信者情報開示請求ができるように、書面や訴状の例をダウンロードできます。
※質問は、コメント欄に記載していただけますようお願いします。
なお、申し訳ございませんが、すぐに回答することはお約束致しかねますのでご理解の程、お願い申し上げます。
こんにちは、地方在住弁護士です。
このnoteを公開してから、多くの人に購入していただき、予想上の反響がありました。
この度、いただいたコメントや私が担当した訴訟の体験を基に、noteの内容を改訂し、より皆様のお役に立つことができるようにしてみました。
0 はじめに
最近、こんなニュースやツイートを見かけました。
春名風花さんの記事ですね。
アルバイトなどして弁護士費用をため、発信者情報開示請求をされたそうです。
その後、加害者と示談金315万円で示談することができて良かったです。
元AKBの川崎希さんが、インターネット上で誹謗中傷を受けているという記事です。
匿名の掲示板での誹謗中傷に被害が増えていることや、発信者の特定のためには、数十万円もの弁護士費用がかかることが書かれています。
発信者情報開示請求にチャレンジされた方のツイートです。
誹謗中傷する書込みの発覚から、特定後の交渉、裁判、そして和解に至る流れが非常にリアルに書かれています。
このように、
最近になって、インターネット上の匿名の掲示板での誹謗中傷が、問題としてよく取り上げられるようになりました。
地方では、特に
「爆サイ.com」
での誹謗中傷やプライバシーを侵害する書込みが、
深刻化しています。
しかし、
匿名の掲示板では、誹謗中傷する書き込みが、頻繁に行われる反面、
それをやめさせるための法的な手続をするには、
大変な労力とお金がかかります。
そこで、今回は、「爆サイ.com」を例に、
一般の人でも、弁護士に依頼せずに、自分で発信者情報開示請求ができるように、
やり方を解説していきたいと思います。
1 匿名掲示板の誹謗中傷への2つ対応方法
大きく分けて2つあります。
(1)削除請求
匿名掲示板の削除フォーム、つまり書込みの削除を受け付けるページに行き、問題の書込みの削除を求めるというやり方があります。
ただ、掲示板側の判断で削除されないことがあります。
削除フォームでも削除されない場合は、
匿名掲示板を運営している会社に対し、書面を送付する方法により削除を求めます。
それでもだめなら、
裁判所に訴えて、書込みの削除を求めることになります。
今回は、発信者情報開示請求をメインに書くので、
削除請求のやり方は、後日解説します。
(2)発信者情報開示請求
全体の流れをまとめると、図にすると次のとおりになります。
※作成者の許可を得て掲載しています。
流れを文章でまとめると、次のとおりとなります。
匿名掲示板は、書き込みをした人物の名前や住所といった情報は持っていません。
その代わりに、
その書込みを行った電子機器のいわばインターネット上の住所であるIPアドレスという情報を持っています。
そのため、まず、このIPアドレスを匿名掲示板から開示してもらいます。
IPアドレスが分かれば、書込みをした人物がどこの電話会社と契約しているのかが分かります。
そして、開示してもらったIPアドレスを基に、
電話会社に書き込んだ人物の住所と名前の開示を求めていくことになります。
しかし、電話会社は任意の交渉では、書込みをした人物の名前や住所を、
基本的に教えてくれません。
そのため、訴訟を起こすといった裁判所を利用した手続をとる必要があります。
2 「爆サイ.com」とは?
「爆サイ.com」とは、
インターネット上に存在する匿名掲示板で、
地域に特化したローカルコミュニティサイトです。
内容は、日常の雑談から性風俗まで、書き込まれる内容は色々な種類があります。
地域に特化している性質上、
個人を標的にした誹謗中傷などが行われやすいです。
今回は、この爆サイを例に、発信者情報開示請求のやり方を説明していきます。
3 発信者情報開示請求のやり方
(1)問題のスレッドをプリントアウトする
まず、書き込んだ人物を特定したい書込みを決めます。
そして、その書込みが行われている画面をプリントアウトします。
その際、URLの全部が映るように印刷します。
スクリーンショットで保存するのでもいいですが、
URL全体が映るようにする必要があります。
(2)ログの保存を専用フォームで申請する
次の、爆サイにある次のページから、問題の書込みのログを保存する申請をします。
アクセスすると次のような画面が表示されます。
※上のリンクから上手く
飛ぶことができない場合は、次のサイトで試してみてください。
ここに、
「所属機関名」、「部署名」、「担当者名」は、個人の場合は、個人名をそのまま入力してもいいでしょう。
「詳細・備考」については、入力は任意ですが、問題の書込みが、
・なぜ自分の名誉を毀損したといえるのか
・なぜ自分のプライバシーを侵害したといえるのか
という理由も書いた方がいいでしょう。
ログの保存を申請すると、受付をした旨のメールが届きます。
3日~1週間程度で、次のようなログの保存が完了した旨のメールが届きます。
これで、ひとまず爆サイにある書込みのログは保存されたことになります。
(3)爆サイに開示を求める文書を郵送する
ア 爆砕への開示請求の文書
しかし、このままでは開示されないため、
爆サイに対し、次の開示を求める文書を送付しなければなりません。
※書式を、最後の章でダウンロードできます。「書式①」です。
その際、次の書類も一緒に送る必要があります。
これらの書類をそろえて、爆サイの住所に郵送します。
書類の量が多いのと、ちゃんと届いたか確認できるようにするため、
レターパックで送るといいでしょう。
返信用封筒も、レターパックにしてシールの番号をあらかじめ控えておけば、爆サイ側がいつ返信用封筒を発送したか分かるため、いいと思います。
イ IPアドレス、接続先アドレス、接続先IPアドレスとは
IPアドレスとは、パソコンなどのネットワーク上の機器を識別するために割り当てられている識別番号で、いわばインターネット上における住所のような役割を果たすものです。
接続先IPアドレスは、発信者が通信を行う際にどこに向けて情報を発信を行ったかを示す情報であり、書込みがなされたサイトで「送信」ボタンをクリックしたときに入力された情報が送信される先のIPアドレスです。
接続先URLも、接続先IPアドレスと同様に、発信者が通信を行う際にどこに向けて情報を発信を行ったかを示す情報であり、書込みがなされたサイトで「送信」ボタンをクリックしたときに入力された情報が送信される先のURLです。
IPアドレスとURLは、互いに変換可能である関係なのです。
アクセスプロバイダによっては、IPアドレスとタイムスタンプだけでは、どの通信記録か特定することができない場合があります(NTTドコモやソフトバンクなど)。
そのため、アクセスプロバイダによっては、接続先IPアドレスや接続先URLも伝えた上で、通信記録の開示や保存を求める必要があります。
(4)爆サイからIPアドレスなどが開示される
爆サイに発信者情報開示請求の書類を発送すると、
1~2週間程度で、
問題の書込みについてのIPアドレス等が開示されます。
ここまでで、爆サイに対する作業は終了となります。
(5)「Who.is」検索にかける
爆サイから開示されたIPアドレスが、
どこの電話会社から送信されてきたデータのものなのか調べるため、
「Who.is」検索にかけます。
「Who.is」検索は、次のサイトから行うことができます。
合資会社アスカネットワークサービスが提供する検索サービス
株式会社シーマンが提供する検索サービス
どちらのサイトを利用しても構いません。
これらのサイトに、
爆サイから開示された12桁のIPアドレス(「●●●.●●●.●●●.●●●」と表示されている数字です)を入力します。
「Who.is」検索をすると、次のように表示されます。
ここでは、
右上の方に「Softbank Corp.」と表示されているため、
書込みをした人物が契約している電話会社は、ソフトバンク株式会社
だということが分かります。
(6)電話会社に対する開示請求
電話会社は、任意により開示を求めても、ほぼ教えてくれません。
そのため、裁判を起こすか、仮処分の申立といった、裁判所を利用した手続が必要になります。
しかし、通常の裁判ですと、
開示を認める判決が出るまで時間がかかり、その間に、電話会社が保存しているログが消えてしまうおそれがあります。
そのため、裁判を起こす前に、電話会社にログの保存をお願いする手紙を郵送します。
※書式を、最後の章でダウンロードできます。「書式②」です。
このときも爆サイのときと同じように、次の書類を送ります。
爆サイから送られてきた回答書のコピーも、2通用意して、一緒に送付します。
(7)電話会社からの回答
電話会社にログの保存を求める手紙を送ると、
2~3週間程度で、
任意の開示には応じないが、ログは保存する、
という返事が来ます。
(8)電話会社に対する裁判
自分が今現在住んでいる場所を管轄する裁判所(要するに最寄りの裁判所)に、
電話会社を相手にした、
発信者情報開示請求と開示をしなかったことを理由とする慰謝料請求
の訴訟を起こします。
慰謝料の請求が必要なのは、それがないと管轄が東京地裁になってしまうため、自分が住んでいる場所で裁判を起こすために、便宜上、一緒に請求する必要があるからです。
※訴状の書き方や電話会社に対する反論の方法は、別のnoteで詳細に報告します。
※書式を、最後の章でダウンロードできます。「書式③」です。
(9)裁判の進行
ア 判決が出るまでの期間
裁判では、判決が出るまで大体
6か月~1年かかります。
イ 電話会社側からの反論
さらに、電話会社は、開示を頑なに拒否する理由付けとして、
”あなたについての書込みではない”
”名誉毀損になるような内容ではない”
”プライバシーを侵害する内容ではない”
というような反論をしてきます
そのため、電話会社からの反論に、さらに反論する必要があります。
反論の仕方については、後日、別の記事でまとめたいと思います。
法律の素人が反論の仕方を考えるのは大変なので、
反論の仕方がわからない場合は、弁護士に相談した方がいいかでしょう。
ウ 慰謝料請求の取り下げ
裁判所から、慰謝料請求を取り下げることを勧められることがあります。
この慰謝料請求は、最寄りの裁判所で裁判を起こすための便宜上の請求であるため、
裁判が始まり、その裁判所で裁判が行われるようになったのであれば、取り下げてもいいでしょう。
(10)判決~開示
判決が出て、2週間が経過すると、判決の内容が確定します。
そうすると、さらに1~2週間程度で、
電話会社から、書込みをした人物の、
住所と名前が手紙により開示されます。
以上で、発信者情報開示請求が完了したことになります。
4 注意点
書込みをした人物のデータは、
3か月程度で、
電話会社のサーバー等から消えてしまいます。
そのため、書込みがされてから、
3か月以内に、電話会社にログの保存をお願いしなければなりません。
したがって、爆サイへの書込みが発覚した場合、
1か月以内に上で説明した手続に着手しなければ、
書込みをした人物を特定することができなくなる可能性があるため、注意が必要です。
5 電話会社の反論
発信者情報開示請求の裁判では、
電話会社から色々な反論が出てきます。
その1つが、源氏名や伏せ字で書込みをされたケースで、
被害者の実名が直接書かれている訳ではないので、
誹謗中傷する書込みが、被害者についてのものなのか特定できない
(被害者と書込みを受けた人物が、同一人物かはっきりしない)
というパターンです。
これに対する反論方法を次の記事で書いたため、参考になれば幸いです。
6 発信者情報開示請求のまとめ
以上が、発信者情報開示請求の流れです。
弁護士に依頼せず、一般の人で、かつ地方に住んでいてもできるように説明しました。
インターネット上の誹謗中傷被害の回復に少しでも役に立てていただければ幸いです。
最後の章で書式のダウンロードができます。
7 発信者を特定後にやること
(1)刑事告訴
名誉毀損罪や侮辱罪を理由に刑事告訴する方法があります。
やり方は、
最寄りの警察署に、
告訴状と資料を提出します。
※告訴状の例(編集可能)、最後の章でダウンロードできます。「書式④」です。
(2)損害賠償請求
書き込みをした相手に、損害賠償請求をします。
やり方は、
まず、内容証明郵便を送付し、慰謝料の支払いについて交渉し、
交渉が決裂したら、裁判を提起します。
ただ、内容証明郵便といった損害賠償請求の手紙を送ると、
相手がその手紙をインターネット上に公開する危険があります。
そのため、交渉はせずに、いきなり裁判を起こしてしまう、
という方法もあります。
※損害賠償請求の内容証明の例(編集可能)は、最後の章でダウンロードできます。「書式⑤」です。
※示談書の例(編集可能)を、最後の章でダウンロードできます。「書式⑥」です。
9 慰謝料の相場
インターネット上の誹謗中傷による慰謝料の裁判における相場は、
事案にもよるものの、
100万円前後が多い
ようです。
ただ、法人の代表者の名誉をWEB上で毀損されたケースでは、
200万円以上の金額が認められたケースもあるようです。
したがって、
金額は、個別ケースによってかなり左右される
と考えられます。
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