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『悲しみのイレーヌ』の感想は読んだ人にしか語れないという私見 #読書の秋2022

『悲しみのイレーヌ』を無言で推す

まず最初に、このnoteを読んでくださる方に謝らなければならないのが、『悲しみのイレーヌ』についての感想を多くは語れない、という点である。

おそらく皆さんは、「こいつは何を言っているんだ…?」と思われるに違いないだろう。
自分でも、「それじゃ感想文にならんだろうよ」と突っ込まずにはいられない。

しかし、「この本のここが面白い!ここがいい!ぜひ読んでくれ!」と前のめりになっておすすめするほど、うっかり重大なポイントをネタバレする自信しかないのである。
そして、その軽率なネタバレは、私が『悲しみのイレーヌ』を推したい理由をすべて無に帰してしまう。

この時点ですでに、「ネタバレすると面白味が半減するような要素があるんだな?」と察せられるかもしれない。
すみません、おっしゃる通りです。
いや、でも、本筋には触れていないから大丈夫なはず。

とにかく手に取って読んでみてほしいのだ。
タイトルが不穏だとか、洋書に馴染みがないとか、苦手意識はぜひ取っ払って。

文学部出身でありながら本を読まなすぎることに定評のある私。
数少ない読書歴に説得力は皆無。
とはいえ、『悲しみのイレーヌ』はあまりに衝撃的で、忘れられない一冊となった。

もともとミステリーやサスペンスが好き、という背景も少なからず影響しているかもしれないけれど、やはり純粋に、ストーリー展開の秀逸さがずば抜けていると思う。
ここも詳しく話すとよろしくない(自己判断)なので、口をチャックせざるを得ないのがくやしい。

主人公が好きすぎる

あまりにも物語に触れられないので、せめて登場人物の良さについて語り、少しでも興味を持ってもらえたら幸いだ。

『悲しみのイレーヌ』、実は3部作の1作目にあたり、全シリーズにおいて主人公が共通している。
カミーユ・ヴェルーヴェン警部。
巻き舌の不得手な私ではすんなり呼べそうもないファミリーネームだ。

カミーユはパリの優秀な刑事でありながら、身長145cmというボディコンプレックスを抱えている。
これは、母親がカミーユを妊娠しているにもかかわらず喫煙していたことが原因と考えられていて、カミーユの複雑な母への思いを象徴している。
そんなカミーユの心からの支えとなっているのが、妻・イレーヌの存在だ。

自分よりもずっと背の低い男が警察手帳を示してきたら、と想像してみたことがある。
きっと困惑し、どこか不安になり、カミーユの頭頂部と地面の間で視線を行ったり来たりさせるのではないだろうか。
けれどカミーユは、私の不躾な反応をものともしないと思う。

心が強いから?もう慣れているから?

いずれにせよ、カミーユ・ヴェルーヴェンは意志の強いひとだ。
信念を持って事件を追いかけられる刑事だ。
だからこそ、読者はカミーユに惹きつけられ、深く心を寄せる。
そしてカミーユと共に、原作者ピエール・ルメートルのとんでもない仕掛けに引っかかるのである。

私はカミーユ・ヴェルーヴェン警部のことがとても好きだ。
正直、3部作で終わらないでほしかったといまだに思っている。
一方で、好きすぎるがゆえに、「続編が出るよりも潔く完結してくれてよかったのかもしれない」とも思うから、ファン心理とは厄介なものである。

読み順、大事

『悲しみのイレーヌ』以降は、『その女アレックス』『傷だらけのカミーユ』の順番でシリーズ展開している。
ちなみに中編として『母なるロージー』も刊行されていて、時系列としては『その女アレックス』と『傷だらけのカミーユ』の間にあたる。

もしもカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズに興味を持ってくれたなら、必ず『悲しみのイレーヌ』から読むようにお願いしたい。

その理由は…「これもネタバレになるんでない?」と囁く私がいるので説明できないのだけれど、だまされたと思って読み順を守ってもらえるとありがたい限りだ。
そして、「ああ、そういうことね」と納得してもらえたらなお嬉しい。
ついでに感想を教えてくれたら、私が泣いて飛びつくだろう。

#読書の秋2022

以下、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ


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