思い出はいつもきれい、なわけではないので
あるバンドの名前を目にするたびに、そのバンドが好きだといっていたひとのことを思いだす。
気紛れなお誘い。不意打ちの「誕生日おめでとう」メッセージ。お気に入りの置時計が、とある画家の絵に由来するものだと気づいてくれたことも。
わたしは彼を好きだったけれど、彼はそうではなかった。彼には恋人がいた。ただ、自分に好意を寄せている存在は、欲求を満たす遊び相手としてちょうどよかったんだろう。
きっと歯牙にもかけられず、使い捨てられたわたしのあこがれ。
彼から与えられたのは、すべて計算づく