今日も電車が遅れている。
去年の冬のある日。
乗っていた電車がけたたましい警笛を鳴らし、直後に急ブレーキがかかった。
ラッシュのピークを少し過ぎているせいかそれほど混雑はしていなかった車内。
立っていた人はまばらで、それでも何人かがよろけてバタバタという靴音が響いた。
私は会社に向かうためその電車に乗っていた。降りる駅の出口に近い、後ろから2両目の車両で、空いていたシートに座って文庫本を読んでいるところだった。
警笛に驚いて顔を上げ、前方を見た。
しばらくして車内アナウンスが流れた。
ただいま当車