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アメリカの山中で神を信じた瞬間

20代最後の年、会社を退職し、”自分探し”と称して1年間は勉強したり海外に行ったり、とにかく自分がやりたいと思ったことをやる年にしようと決めた。

まずはアメリカ、ユタ州にいる友人宅に居候してそこを拠点に、大好きなアメリカの国立公園を回る旅をした。
地球上の壮大な芸術作品ともいうべきダイナミックな風景、巨岩、巨石、岩山、そしてネイティブアメリカンの遺跡、私の大好きなものばかり。

国立公園を巡る現地発のキャンピングツアーに参加して、キャニオンランズ、アーチーズ、ブライスキャニオン、ザイオン、キャピトルリーフなどメジャーどころには行くことができた。次はどこに行こうか、インフォメーションセンターに行って置いてあるカタログをかたっぱしからもらい、友人宅で見ていた。

「ここに絶対に行きたい」と心を揺さぶられたのは
“ナインマイルキャニオン”
山中の道沿いにネイティブアメリカンの壁画が多数、鮮やかに残っている場所。そこへ行くツアーはないが、マイカーで行けそうなところだった。友人宅からは車で3時間くらいの距離で日帰りできる。山道は得意じゃないという友人に頼みこんで、連れて行ってもらうことになった。

当日、まずはスタンドで車の点検をしっかりしてもらい、ランチやおやつ、飲み物などを買い、車につんでいざ出発。
順調な旅だった、途中までは。

山道を走行中、突然、車が左右に大きく揺れ始めた。最初は友人がふざけているのかと思った。
「ハンドルがきかない」友人が叫んだ。
二人でハンドルをしっかり押さえ、車をまっすぐに走らせようとするがどうにもならず急ブレーキ。車はとまった。
あと数十センチで崖から落ちるというところで。
外に出て、車が止まった場所を見ると怖ろしくなった。あと2,3秒でも止まるのが遅かったら崖から落ちていた。

さて、このあとどうするかが問題だ。
車は動かない。歩いて戻れる距離ではない。もう夕方近くで、車も人もまったく通らない。無情にも闇が訪れるのは早かった。あっという間に暗闇に包まれた。絶体絶命ってこういうことをいうんだ。

私たちは冷静だった。できることはただ一つ、神様に祈ることだけだ!
友人はキリスト教徒、私は日本人として八百万の神々に、自分の信じる神なる存在に向けて天を仰いで祈りをささげた。
「神様、どうかお願いです。助けてください」

その願いはすぐに聞き入れられた。山奥の暗闇からライトが近づいてきた。
車だ! 
友人は叫んだ「車のライトつけてみるから、とにかくあの車を止めて」
私は答えた
「私、黒いコートに黒髪で黒いパンツで、暗闇に溶け込んでいるんだけど」
あとになると笑える答えだった。

闇の中、黒ずくめの私は
「止まって~、助けてください」と叫びながら大きく手を振った。
止まってくれた車は、パトロールから帰る途中のレンジャーで、私たちをふもとまで送り届けてくれた。そして、翌朝、私たちの車を山から下ろしてくれると言ってくれた。

助かった。

翌朝、引き上げられた車を見て愕然とした。積み込んだ食料が凍っていた。大きなガロンボトルに入った水がコチコチに凍っていた。
もし、あの時、レンジャーが通らず、山中で一晩過ごしていたら、私たちはこんなふうになっていたのだろうか。そんな想像をして身震いした。

きっと日米協力体制、様々な神様が助けてくださったのだろう。それまでも神様の存在を疑ったことはなかったが、この経験を通して、絶体絶命の時、神様は助けてくれると信じるようになった。

いつの日かまたあの場所へ、あの時行けなかった山の奥まで行ってみたいと思うことがある。その時はきっとまた神々が見守ってくれるだろう。

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