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ひよっこ社員の動きを止めたかっこいいひと言

大学を卒業後、入社したのは旅行会社。とても忙しい部署に配属され、毎日無我夢中で頑張った。唯一気が休まるのは同期の仲間とのランチタイム。食堂で気の置けない仲間が集まると、仕事上のたいへんなこと、つらいことの話題で盛り上がる。ある日、いつものように皆でおしゃべりしていたらうしろから声が聞こえた
「そんなにいやなら辞めちゃえば」

皆いっせいに凍りついた。びくっとして動きが止まった。まだひよこの私たちはおしゃべりに夢中で回りに気を配ることもできなかった。振り返ると、仕事のできると評判の先輩が、本を読みながら、私たちのことを見もせずに、何の感情も見せずに放ったひと言だった。いまでも忘れないひと言。

学生気分が抜けず、場所をわきまえずにおしゃべりに夢中になっていたことが恥ずかしくなった。皆、旅行業界で働きたくて熱意をもって入った会社で、辞めたいってわけではなく、たいへんだけどやりがいも感じつつあって、ただつい苦労話で盛り上がっていただけなのだけど、他人が聞けばそれは愚痴としか聞こえないのだ。

毎年新入社員が入るたびに、あの日のひと言を思い出すことがあった。
「私だったら、新入社員が愚痴を言い合って盛り上がっている最中にあのひと言を発せられるだろうか?」
すごい勇気のある先輩だな。こんなこと言ったら嫌われるとか気にしないんだろうな。

いくつも急ぎの業務を任されても、取り乱さず、回りに圧迫感を与えることなくスピーディーにてきぱきこなしているその先輩の仕事っぷりを見て
「こういう仕事のスタイルってかっこいい」って憧れて、仕事のできるクールビューティを目指したのだけど、、、
いまだに忙しくてテンションが上がると、慌てて逃げ惑うヒヨコのようになってやしないかと・・と思ったりする。

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