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奇跡のめぐりあわせ

私はひとりだった。孤独だった。
最近笑うことも話すこともなかった。
ある朝思い立った、神社へ行こう。
途中で雨が降り出した。
傘を持っていない。
ベランダの洗濯物がぬれてしまう。
今戻ればそんなにぬれずに済む。
そんな気持ちを一掃するひらめき。
このまま進もう。
すぐに雨はやんだ。

参道のど真ん中に黒猫がいた。
片足を高く上げて毛づくろい中。
離れたところからじっとみつめた。
黒猫は視線に気づく。
お互いしばらくの間、見つめあう。

黒猫がのそのそ近づいてくる。
私は身動きせずじっと立っていた。
黒猫はすれ違いざま私に寄り添った。
黒猫の体のぬくもりが足に伝わった。
その瞬間、私の顔に笑みが浮かんだ。
その瞬間、私は孤独を忘れた。

鳥居をくぐると光が差し込んだ。
雨雲は去り、太陽が姿を現したのだ。
見上げると、虹が出ていた。
その瞬間、私の顔に笑みがこぼれた。
この瞬間、私は孤独ではなかった。
いつも大きな存在に見守られている。
そのことを思い出させるための虹。

虹がでていたのはほんの数分の間。
あきらめずにここに来たから、
黒猫がいて参道で止まっていたから、
何気なく空を見上げたから、
これは奇跡のめぐりあわせ。

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