フリーランス母の葛藤
「まぁ小さい子がいると、まず『予定どおり』になんて進まないから」。
耳ではよく聞いていたはずの、その一節。
4月に仕事を再開してからはや2ヶ月、身をもって、痛いほど実感中である。
* * *
気管支炎から肺炎、無気肺という診断に発展し、1週間ほどおやすみしていた保育園。
長引いていた咳も、毎日の吸入ケアでようやくなくなり、かかりつけ医からもお墨付きを得て、ひさしぶりの登園。本人もにこにこと笑顔で、嬉しそうであった。
しかしその2日後には、また発熱である。
朝、元気でにこにこの娘を、保育園の連絡帳に体温を記入しなければならないからと検温してみて、初めて熱に気づく。
「えっ、熱あるじゃん!」
もうその瞬間に、その日の自分の仕事の予定なんてものはガラガラガラッと音を立てて崩れおちる。
そして新たに最重要ミッションが天から目の前にドンッと落ちてくる。
今日予定していたことのうち、本当に今日、どうしてもやらなければならない優先事項は何か、その時間を捻出するには今この瞬間からどう動いたらよいのか。
まずはそれをクリアしないと、予定していた仕事になんて絶対にたどり着けないのだ。
* * *
我が家の場合、娘が複数のアレルギーを抱えていることもあって、かかりつけ医が遠い。車で30分ほどかかる距離である。
だがその病院は腕の確かな医師がおり人気で、病児デイケアルームもその院に併設されているので、安心である。
たとえば喘息の場合、数時間おきに吸入薬のケアが必要なのだが、その院をかかりつけにしておけば、病児デイケアに預けた場合にもそのケアをしっかり行ってくれる。
さまざまなアレルギー症状を併せ持つ我が子だが、これまでの診断結果もその院のカルテにあるので、万が一体調に変化があった場合にもその医師に診察してもらえる。これは大変ありがたい。一度ほかの病児デイケアも利用したが、体制や、対応してもらえるケアの内容には開きがあるなと感じた。
なので、どうしても今日は死守したいアポがある!進めないともうにっちもさっちもいかない作業がある!というときは、迷わずこの院の病児デイケアに頼る。
ただ人気のその院、予約もうまりやすい。確実に予約をとるには、早朝に玄関前に並ぶ必要がある。距離のある我が家の場合、朝7時には家を出たいところだ。
娘の朝ごはんをダダダッと容器につめて、1日保育分の準備物をバッグに押し込み、出勤前の夫に運転を頼んで、家族一同なんとか家を出る。
院についたら、夫に列に並んでもらっている間に私は車内で娘にごはんを食べさせ、連携プレーで開院を待つ。無事予約がとれれば、ひと安心だ。
というのはまあ、うまく行った日の話で。
ときには、「まず診察をしないと、預かれるかどうかの判断ができない」と、そこから1〜2時間以上かかることもよくあるので、そんなスムーズにいくばかりではない。
もちろん、娘を抱いて待合室にいる間に仕事は進まない。
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そして困ったときには頼るありがたい病児デイケアだが、フリーランス母としては常に、いつも葛藤の渦のなかで利用している。
まずは、娘の精神的な負荷のことだ。
1歳を越えてこの4月から保育園に通っている(休みのほうが多い気がするが)娘は、まだまだ1日預けられることに抵抗を感じている。ようやく数ヶ月をかけて、普段の保育園であれば木の香りに囲まれて環境もなかなかよく、笑顔が見られるようになってきたと聞いたところだ。
それが、慣れない部屋で、慣れない先生で1日預けられるというのはやはりかなりストレスになる、と思っている。実際、いつもの保育園に預けて出ていくときの泣き方と、病児デイケアに預けて出ていくときの泣きっぷりは、天と地の差がある。
「いやだーー!!なんでここに置いてくの?!いやだーーーやだーー!!」
実際には「んぎゃああああああ!!!!!んぎゃああああああああああああ!!」であるが、まあ母の耳にはそんなふうに、聞こえる。
もうひとつは、経済面。
病児デイケアは、私の住んでいるところでは、市からの補助が出て、市内住民であれば1日2,000円で利用できる。
単発の利用であれば、仕事をするのなら十分利用する価値のあるサービスだと思う。
だが今回のように、1週間続いて、治ったと思ったらまた熱を出して……、となることが続けば、毎回利用していると気づいたら数万レベルにまではねあがってしまう。
その間、休んでいる保育園の保育料が返金されればいいけれど、もちろんそんなことはない。単純に月々払い続けている保育料に、病児デイケア代が上乗せされるということだ。
かたや、デイケアへの送迎時間や準備などがあり、仕事に費やせる時間は常時より減る。必ずしもというわけではないが、収入が増える、とはなかなか言い難い状況だ。
娘のメンタルケアが一番の要素だが、加えて経済面もやはりいくぶんか気になって、今日は病児デイケアに頼る、今日はうううう、家でみよう……、と決めている。
オフィスに出勤するという効力がない分、気持ちが揺れてしまう。逆にいうと、そういう一辺倒じゃない、柔軟な対応ができるようでありたいから、この働き方を選んでいるはずなのだ。自分がそう決めたのだ。
フリーランス母の葛藤である。
* * *
昨日発熱した娘は、1日病児デイケアのお世話になった。
そして今日も熱はさがらない。
今日は1日、家で娘と過ごす。
平日はnoteを毎日更新したいな、とひそかに数日前からトライ中の私は、夫の出勤時間を少し後ろ倒ししてもらって、この時間を捻出した。
1日に1時間でもいい、集中してPCに向き合えるということが、私の精神衛生上どれだけ大切なことか。
これがあるとないとでは大違いなのだ。
ほんとうは外で人と会う予定があったのだが、自宅に来てもらうことにした。
柔軟に、柔軟に。
目下のテーマはこれである。
何が正しいのかなんてわからないが、その場その場で、気持ちと向き合いながら、臨機応変に変わり続けながら、進んでゆくしかない。
自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。