1歳の娘におそわる、笑顔の効力
1歳5ヵ月の娘が、くしゃっ!という笑顔をつくるようになった。
以前から、楽しいときに声をたてて笑ったり、自然に笑顔になる、ということはあった。でもそれはなかなか貴重なことで、必死にご機嫌をとってようやく見られる、という感じのものでもあった。
ところがどうして、最近は笑顔の大安売りである。
「◯◯ちゃんの〜、にっこり〜!が見てみたい〜!」とリズミカルに声をかけると、顔のパーツをくしゃしゃ!っと寄せて、なんともいえない、全力の笑顔をみせてくれる。
全力の、というのはまさにそのとおりで、自然な笑顔とはちょっと違う。頬や口元にキュッ!と力が入って、ちょっとぎこちなく、がんばって表情をつくっている感じがあるからだ。
そのようすがなんとも愛らしくて、思わずこちらも頬がゆるむ。ゆるみっぱなし。
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つまり娘は、「笑顔という表情をつくる」ことを習得したのだな、と思う。
言い方をかえれば「つくり笑顔」だけれど、一般的にいう「つくり笑顔」が「楽しくないのに無理をして笑っている」ということを指すのなら、それはちがうなぁ、とも思う。
娘の場合は、笑顔をつくることで、まわりのおとなたちが思わずつられて笑顔になる、そのようすを楽しんでいるように思えるからだ。
自分の笑顔が、どんな効力をもっているか、ちゃあんとしっている。
いってみれば、「コミュニケーション手段としての笑顔」を、1歳ながら自然と使いこなすようになったのだなぁ、と思う。
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「楽しいから笑顔になるのじゃなくて、笑顔になるから楽しくなる」というようなことをだれかが言っていた。
うろ覚えだから確かではないけれど、笑顔の表情をつくることで、額の体温がさがって気持ちが落ち着く、という科学的なデータも出ているといつか聞いたことがある。
そんな小難しいことなんて知らなくても、1歳の娘は「笑顔をつくる」ことで、日々まわりのひとびとの気持ちをハッピーにしている。
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保育園でも、「最近は笑顔をたくさん見せてくれるようになってうれしいですー!」と、これまたにこにこと、先生方から言ってもらえた。
そう、家ではたまに自然な笑顔をみせていた時期でも、4月から通い始めた保育園では緊張していたのか、ほとんど笑顔を見せることはなかったのだ。
それがいまでは、毎日のように笑顔をふりまいているらしい。まさにコミュニケーション手段としての笑顔を駆使しているのではないか。
たしかに、昨日のお迎えのときも、にこにこ!をなんども繰り返していた。
そしてその表情に、保育士の先生方が「にこにこね〜!」と、こちらもまたまたにこにこしながら嬉しそうに応えてくれるので、にこにこのループがつづくのだ。
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もちろん無理はしなくていいのよ、と思いながらも。
「笑顔をつくる」ことを、“まわりの反応が変わる”というひとつの遊びとして、楽しんでいるような娘をみていると、いいね、にこにこ楽しいね、と応援したくもなる。
まあいちばんは、娘の「にっこり!」が、ただただ見ていて幸せなだけなのだけれど。
わたしも夫も、今月は発熱やら入院やらでぐったりと、笑顔の消え去った娘をずーっとみていたから、よけいにいま、毎日の笑顔大安売りにメロメロなのだ。
笑顔が笑顔をよぶ、いちばんシンプルなコミュニケーションを、ちいさな娘から教わる日々である。
自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。