『翻訳の妙』 てくてく通信+🎈 #32
こんにちは、英会話Oneのただともこです。読む瞑想マガジンへようこそ。
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翻訳の妙
新しい年になりました。みなさん新しい年のお祝いをできましたでしょうか。私は、長年の疲れを全部出すかのように、深く深く眠っていました。そして、目覚めましたよ。ゆっくり、新しい年を味わいながら、今年したいことを考えています。
今日は翻訳のお話。
日本語は、とても高度な言語です。構造的な文章も、雰囲気だけの文章も、ニュアンスもとてもよく伝わる言語です。そういう言語は実はあまりないのではないかなと思います。
英語は逆にとてもシンプルな言葉です。おそらく世界で一番シンプルな構造をしている言語です。私が手を付けた5カ国語の中でも、最もシンプルでした。そのシンプルさと大英帝国の強い宣伝があって、今、英語は世界で2番目に広く使われる言語になりました。
0から英語を学ぶのと、0から日本語を学ぶのだと、日本語を学ぶ方がずっと大変です。英語のほうが簡単です。そして、言語によって表現できることが違います。
はじめてアメリカに行ったのが14歳の時だったので、その時、理科を英語で習ったら、とってもシンプルでわかりやすかったことを覚えています。数学もそうだったのですが、数学は日本語でもそんなに変わらなかったのですが、理科は、英語になると、最初の概念が英語やドイツ語で考えられているので、翻訳されたむつかしい漢字の訳語がない分、理論がとても理解しやすかったのです。なんだ!理科って面白いじゃない!と初めて思いました。
しかし、文学になると、英語文学、そして、ミステリーや恋愛小説はとても面白いのですが、そのころ大好きだったドイツ語が母国語の「モモ」(ミヒャエル・エンデ著)が英語だとさっぱり面白くないのです。そして、その後、ノルウェーに行って、ノルウェー語でちょっとモモを読んだらやっぱり面白いのです。同じことが吉本ばななさんの文学の翻訳にも言えて、ばななさんの小説にはプロット(あらすじ)がなく、流れがあるだけなので、それを英語に訳すと本当にスカスカになってしまいます。なんて味気ないんだろう?同じ小説かしらと思うくらい違いました。ちょっとだけわかるイタリア語でみると、やっぱり面白そうなので、言葉によって得意な領域というのは違うんだなぁということがしみじみわかります。
文学でもうまくいく例はあります。例えば村上春樹さんの小説は英語と相性がとてもいいです。なぜかというと、彼の小説には構造があるからです。出てきた人たちがここでやったことは、あとから、きちんと構造を持って終わるようにできています。理論ではないかもしれませんが、出てくる人物の一つ一つの行動に構造があるのです。それは英語が得意とする表現の領域で、だから春樹さんの小説は英語で読んでも面白いです。
そもそも、村上春樹さんは、英語から日本語への翻訳をとてもたくさんされています。そこから、文章を学ばれたのだと思います。そんな所以もあって、春樹さんの小説は世界中の言語に翻訳されて広く読まれています。
しかし、ここで注目してほしいのは、何より、その両方の文学を生むことができる日本語という言葉の力です。日本語は、枕草子みたいな、印象や雰囲気ばかりの文学も、ばななさんが書くような流れの文学も、村上春樹さんが書くような構造を持った文学も、全部日本語で生み出すことができます。そのくらい、日本語の度量は広く、極めて高度な言語として、日本語は発達したのです。
例えば、議会のもとの言葉はparliamentです。これがフィリピンに行くと、訳語が宛てられなくて、パーリアメントォという言葉として、使われます。明治維新の時に、ありとあらゆる言葉に漢語をあてて、翻訳した時、日本人は、同時に概念も翻訳して、自分たちの文化に取り入れたのです。それができるのは、そういう文化の度量がある言語と国だけです。日本の文化はそれができる懐があるのです。それは、とても素敵なことだと思います。
この間ブッククラブをしていて、話題に上がったのですが、そもそも、本がこんなに安い国は他にありません。500円でムーミンが買えてしまうのです。いくら著作権が切れているからといって、印刷代も、デザイン代も、出版費も、流通費も考えたら、破格です。ほかの国では800円から1000円以上するでしょう。そのくらい日本人は本を読むし、好きなのです。日本語という言葉をそうやって大事にしてきたのです。英語を学ぶとき、例えば、そういうことも、私は一緒に皆さんに伝えられたらいいなと思います。私が日本に住んで一番誇りに思うのは、日本の文化です。だから、私は文化を創ります。それが私の得意なことで、日本の得意なことだと知っているからです。そうやって、誇りに思える日本の文化を皆さんにも紹介していきたいです。そして、ぜひ、そのことを誇りに思って、外国に行ってください。
ちょっとしたおすすめ
紅茶五月
私は日本のお茶が好きです。
外国に行くと、ティーバックでしかお茶を淹れたことがない人がいっぱいいて、お茶の葉を渡すと困惑する場面に出会ったことがあります。
このお茶は無農薬です。
そして、ちょっと強めです。
おしゃれに飲むには向いてないかもしれませんが、
毎日にちょっと花を添える逸品。
編集後記
お正月は眠りました。泥のように。新しい商品について考えようとか1年をまとめようとかいろんな画策をしていたのですが、半分も終わりませんでした。唯一できたのは、アトリエのカーテンを縫うことだけです。しかし、そういう何にも考えない時間が私には、大事だなぁと思いました。孤独と無心から創造が生まれるのです。今年もよろしくお願いします。
(初出:2019.1.12)
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