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しんやの餃子世界紀行 Vol.45

「年に1度しかこない大切な日を大切な人と過ごす」

先週の土曜日から細かく鳴る電話。

「来週の火曜日予約したいんですけど友達が誕生日で・・・」

「ケーキを先にお店に届けたいんです・・・」


今日の時点の予定だと18時くらいに店に着けばってスケジュールだったけど、どうしても17時とのことで、餃子世界でもやらないといけないことはあるし良いかなって思って

「じゃ17時にお店で待ってますね」

って言って電話を切る。

女の子のお願いは断れないんだよな。

なりくんとかカンタとかブッチーなら

「なんとかしろ!!!」

って言ったかも。

言わないか。

拭き取りきれてない汚れを落としたり、ゴミの分別をしていたらあんなちゃんがケーキを持ってやってくる。

「今日はよろしくお願いします・・・」

そんな怯えないで良いよ。

「あと、これ良かったら・・・何が良いかわからなくて」

とポカリと麦茶をくれる。

ケーキの袋を見たら1と9のろうそく。

なんて可愛らしい。

どんなコンビニやスーパーで売ってるどんなポカリと麦茶より愛おしい。

時間が来てもう一度あんなちゃんと絢野ちゃん。

誕生日は絢野ちゃんか。

せっかくのあんなちゃんの一生懸命のサプライズだからなんとかして成功させてあげたいな。

アンディが作った餃子を美味しいって食べる2人をポカリ飲みながら眺める。

学芸館高校を卒業したばかり。

学芸館ってシンガポールとかに修学旅行に行くんだって。

すごいよね。

自分の高校時代を思い出そうとしても人との思い出がなかなか出てこない。

思い出がないのか、時が流れすぎたのか。

2人は本当に仲良さそうに話すし、食べる。

高校時代の友達って一生だと思う。

恥ずかしながら自分にも数人、この年になっても連絡を取る友人がいるが、あの当時仲良くしてくれたみんなも含めて元気にやっているだろうかって2人を見て思う。

あの頃に考えたことや楽しい、しんどかったことが今にも絶対つながるんだよな。

アンディと萌Pもそう。

近くにいるうちは仲良くできるけど、離れてから人って真価が問われる。

あー。

もっと人のことを思いやる人でいたら良かった。

自分が18歳の時なんて、どうやって女の子口説くかしか考えてなかったよ。

「俺もそうっす」

アンディが小さい声で言う。

だよな、男の子ってやっぱりバカだ。

「お会計お願いしますってあんなちゃんが言ったらそれを合図にケーキ持ってこよう」

来店前の約束通り、あんなちゃんからの「お会計お願いします」を合図にケーキを取りに2Fに上がる。

BGMはアンディの仕事。

きっとあんなちゃんドキドキしてる。

なんか少し伝染してるかもしれん。少し緊張する。

音がなって、ケーキを出したら絢野ちゃん喜び爆発してる。

おめでとうの気持ちが溢れる。

良かったね、絢野ちゃん。
君の友達は最高の人だね。

これから大人になって行くにつれて色々な人に出会うし、色々なことを思い悩み、憂い尽きない日を過ごすかもしれないけど、あんなちゃんと過ごした「ティーン最後の最初の日」のこと忘れなければなんとか乗り越えられる。

「私センスないけど服飾の勉強するんです!」

結構じゃないか。
なりたいって強い気持ちはセンスより大事なことだよ。

今年1年、ハッピーな年になると良いね。

そしてあんなちゃん。
君の友達が素直に喜ぶ顔が見れて最高だね。

サプライズ、うまくいって良かった。
大切な人の大切な日を祝いたいと言う純粋な気持ちは、全人類に平等に与えられた気持ちじゃない。

興味ない人は本当に興味ない。

でもあんなちゃんがどうして祝いたいって気持ち、おじさんに伝わったよ。

ケーキ落とさず渡せてホッとしてます。

「私はボートレースの選手になりたくてそのための学校に行くんです」

すごいじゃない。
美人アスリートになれるよ。

あんなちゃんが初めて出ることになるレースがきたら、それが何号艇だろうと、どんなしょぼいモーター積んでいようと単勝ぶっこむから。

おじさんに夢見さしてくれ。

こうやって誰かの大切な日を、今日も日本全国津々浦々の飲食店で祝っているのだろうけど、そういう店の1つに餃子世界が選ばれることが嬉しい。

だって絶対来たこと忘れないでいてくれる。

これからも、誰かの大切な日を大切なまま終われることができるお店でありたいよね。

「本当はこっちかけようと思ってたんすけど遠慮して普通のBGM流したんすよ」

って言ってアンディがB’zの『Happy Birthday』を流し始める。

良かった、アンディ。
最初の方の音楽で。

流石に違うと思うよ。
すごい良い歌だけどさ。

流石に、ね。


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