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義母とテレビでゴルフ観戦

夫が実家に行くのに同乗して、義母の様子を見に行った。

介護保険で借りた、シルバーカーの調子も確認したいと思ったからだ。

夫の後に続いて玄関に入ると、出迎えてくれた義母が気づいて、

「なーに、今日は暇だったんか」

暇じゃあない。

しゃーないなぁと、と心で突っ込んでおく。

日ごろはご近所の2、3人と話すだけの義母、少しでも気分転換になればいい。

テレビの前にいる義母と、ゴルフを見る。
石川遼くんは義母も知っているし、ゴルフはわかりやすいのがいい。

そのうち、義母流の解説が入る。

「だいたい上手い人は、真っ直ぐ飛ばすね」

確かに!そのとおりだ。
夫は左右に飛ばして林の中を歩くと言うから。

遼くんのセカンドショット。

「あのペチャパイがイカんのや」

お義母様、ペチャパイって…。

グリーンの手前に、バンカーが2つ。
ハートを潰したような形、だからペチャパイなのか。

想像力を働かせて話を聞く。

セカンドショットがグリーンに乗らない。

「あの辺の草を、ちょっと刈ればいいんやわ」

パットが決まらないシーンで、

「あそこに芝の株がひとつありゃ、入っとったなぁ」

お義母様の名解説で楽しむ日本オープン。
最終ホールまでドキドキの展開だった。

結婚以来、義母独自のやり方に、随分戸惑うことがあった。

世間の常識ではなく、義父母が白いと言ったらカラスも白い。

価値観も違うし、悲しい思いもした。

そんな関係も、気づいたら「まいっか」で済ませるようになっていた。

夫に「なんでこうしなきゃイカんの?」と訴えることももうない。

35年かかって、ようやくここまで来たんだと思う帰り道だった。

そして気づけば、私は姑になっている。

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