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上高地で新雪を踏む 雪山歩けば [1/3] (山で★深読み)

12月初めの《しまなみ海道サイクリング》では、強い向かい風の中、電池切れキリギリスになりました。

懲りもせず、今度は1月の終わりに信州の山で、ただただ雪の上を歩き回る、という1泊2日の旅に行ってきました。

1日目は標高1,500 mの上高地、2日目は2,600 mの木曽駒ケ岳千畳敷カールを、スノーシュー(≒かんじき)を履いて闊歩する、というツアーです。

名古屋駅を朝7時初の《特急しなの》に乗り込みます。
この時、ホームの向かい側に、在来線の《ドクターイエロー》がやって来ました。新幹線だけじゃないんですね。

ラッキー! 在来線のドクターイエロー@名古屋駅

少し遅れて9時10分ぐらいに松本駅に到着。ここからバスで《釜トンネル前》まで行きます。途中の道の駅でガイドさんが合流し、ストックとスノーシューを貸してくれます。

冬の上高地は入山禁止と思っている人も多いのですが、侵入禁止は車両のみ、真っ暗なトンネルの中を歩いて行軍するのは構いません。

上高地に行くには通るしかない、お先真っ暗《釜トンネル》

この《釜トンネル》、距離は1310 mで標高差約100 mをひたすら登ります。最高傾斜はなんと10.9°でかなり息が上がります。暗闇の中、持参したヘッドライトを額に付けての《行軍》です。
今回、足回りは登山靴に近いトレッキングシューズにするか、スノーブーツにするか、かなり迷ったのですが、防水に強い後者にしたため、この《行軍》がかなり辛かった。やはり、靴底が厚いトレッキングシューズにすべきでした。
暗闇を歩いていると、闇の中から何かが出てきてもおかしくない感覚に襲われます。トンネルの中央辺りに雪かき用のブルドーザーが駐車してあり、ここだけライトが灯っています。
ようやく出口に来ました。しかし、次の《上高地トンネル》が待っています。こちらは長さ600 m弱。

釜トンネルの「ひたすら登り」を抜けたと思ったら次の上高地トンネルがぽっかり口を

上高地トンネルを抜けると《雪国》です。左側にほのかに煙を吐く焼岳、先方に大正池と穂高連峰が見えます。

大正池の向こうに穂高連峰が

雪道をさらに歩き、大正池のほとりで《スノーシュー》を装着します。
日本の雪国で昔から使われている《かんじき》と同じく、靴底よりひとまわり大きくて、新雪に載った場合にも体重を分散しやすくしています。
それに、底に金属製の《鍵爪》のようなものが突き出す構造なので、凍った雪でも滑らないようになっています。

スノーシュー。つま先側は丸くスキー板のように上に反っており、かかと側が尖っている。
靴を装着すると、こんな感じ。靴底の面積が5倍以上にはなってるね。

これを装着して、大正池のほとりから梓川に沿って遡り、新雪の上をひたすら歩き回るハイキング。
ただし、このスノーシュー、前進はいいのだが、後退が苦手で、雪に尖った部分が入って転んでしまいます。面倒でも、前進しながらぐるっと回転して後ろに廻るという《急がば廻れ》作戦を採用しよう。

湖畔の林の中、新雪の上を、「おりたちてあとつけなど」やりまくる!

途中、動物の足跡があると、ガイドさんが、
「この、ふらふら左右にぶれるのは狸」
「狐は必ず前足の跡に後ろ足を置くので、これがそう」
などと教えてくれます。
キツネもタヌキもイヌ科の動物なので、ところどころにマーキング跡の黄色い雪解け跡も見つかります。
「キツネはネズミやウサギを捕まえて食べます。野生のウサギは常に狙われているのでものすごいストレス下で生活しています。だから、野生での寿命は2年ぐらい。それが飼いウサギになると、安全で三食昼寝付きなので7-8年生きます
(へーえ、人間もそうなんだろうな

白銀の上、鳥の鳴き声もよく聴きました。
「鳥は木の芽の柔らかい部分を食べていますね」

この日は幸い、とても晴れていて、穂高連峰も、焼岳も、くっきりと見えました。

雪に埋もれた湿原の向こうの高みは穂高連峰
梓川をせき止めて大正池を作った大正4年の焼岳噴火で立ち枯れた二千数百本の木の、ついに最後の1本(左)とその元凶・焼岳

帰りはまたヘッドライト点けて、今度はトンネルをひたすら下る。
昔、職場の同僚に、
「山に登るヤツの気が知れん。苦労して登って、その後は降りてくるだけじゃねーか
と言われたことがありました。
(オメーなんかに登山の醍醐味はわかんねーよ)
と思ったものですが、この暗闇の中を歩いて帰る時は、ちょっとそんな思いが頭を掠めましたね。

この日は伊那谷を南に下って駒ヶ根に泊まり、翌日は木曽駒2700 mの高みにロープウェイで!

〈2/3につづく〉

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