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【濡れ手にアワ】(新釈ことわざ辞典)記事版
ソープランドのサービスの一種(らしい)。
ご存じのように、
《ソープランド》はかつて、《トルコ風呂》と呼ばれていました。そこで働く女性たちは《トルコ嬢》と。
《……風呂》まで続けて言うのならまだしも、通常の会話はこんな具合でした。
「……こんな風に居酒屋で酒を飲むこと、ボクはほとんどないんだよ。生活を切り詰めているからね」
「ふうん。バイトしてないの?」
「修論実験に追われて、それどころじゃないよ」
「奨学金、借りてるんだろ?」
「……うん。それじゃギリギリだから、実家からも少しだけ送ってもらってるんだけどね」
「うん? じゃあ……」
「実は、……月に1回、《トルコ》に行くんだ。……そんな余裕ないんだけど、……我慢できないんだよ」
「はあ……それで?」
「うん。それで、生活が苦しいんだ」
この人はもちろん、毎月「トルコ共和国」に出張していたわけではありません。
思えばひどい話です。トルコ人留学生が横で聞いていたら、怒り出すことでしょう。
実際、この会話が行われたのとほぼ同時期に東大地震研に留学していたトルコ人学生、ヌスレット・サンジャクリさんは、母国の名がそのまま性風俗店の呼称になっているのを知ってショックを受け、厚生大臣に「トルコ風呂の名称変更」を直訴するなど、改名運動を始めました。
ひょっとしたら、ホントに居酒屋で隣のテーブルにいたかもしれません。
当時は「大使館」という名のトルコ風呂まであって、正式な電話帳に「トルコ大使館」と掲載されていたそうです。
── そりゃ、怒りますよね。
《トルコ風呂》をどう改称するかということになり、いろいろな案が出たあげく、一般公募なども経て、1984年末に《ソープランド》に決まったらしいのです。
しかし、《ソープランド》のライバル候補だった《ロマン風呂》の方がいいじゃないか、という勢力があり、この勢力の中心になっていた週刊誌だけは、世間が《ソープランド》で「一件落着」した後も、かなりしつこく、
《ロマン風呂》
名称を使い続けていたそうです。
こういう人間臭い話、私は好きです。
大々的にキャンペーンのようなことをしていたので、引っ込みがつかなくなってしまったのでしょうね。
でも、今から思うと、名称に《風呂》を残すよりも、《ソープランド》という「わけのわかんない」呼び方にして良かったんじゃないでしょうか。
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