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その里の女は、恋をすると光る - 【かすみ燃ゆ】 坂水様

完結するのを今か今かと待っていた作品の一つです。
他の読者の方も絶賛していたのでワクワクしながら読み始めたのですが、すぐに驚愕する事になりました。

え、エロい…!(; ・`д・´)ゴクリ

いや、これだと語弊がある気がします。(いえでもエロいんですが。笑)
いわゆる読者サービス的なエロシーンという訳ではなく、このお話には必要な濡れ場であると私は感じました。(読む度に歓喜はしてましたが。笑)
糖度も残酷度も濃い目なお話です。

お話は大人向けのファンタジー小説といった感じでした。
ただし、便利な魔法は何もありません。

ただ、恋をするとその里の女は光ります。

山奥にある安是の里のかすみと、寒田の里の燈吾という男女が恋に落ちます。この二つの里は対立しており、夫婦となりたい二人の障害となっていきます。
情熱的な愛のお話ね、ロマンチック!と思ったそこの貴方。
全然違います。笑

もっと泥臭く、血臭がして醜く、なおかつ、絢爛で美しく、神秘的で淫靡なお話でした。
物語の文章内でも多々見られるのですが、相反する感情が入り混じっている作品なのです。
これは主人公であるかすみの生い立ちによるものが大きいためと思われます。

かすみの母親は狂った女でした。色狂いで、里中の男達を手玉に取って、それ故に里中の女達に恨まれていました。
母親は女達に疎まれ里を出奔した後、誰の子かも分からぬかすみを身籠り、狂った状態で里に戻ってきます。そしてある日、行方をくらましてしまいました。

かすみは幼い頃からこの狂った女の世話を言い付けられていました。またこの母親の娘だという事で、里中から疎まれ、蔑まれてもきました。
なので、自分に辛くあたる母親も里人達も、彼女からしても嫌って恨んでいました。
かすみを女扱いする安是の男はおらず、かすみも里男に恋をする事はありません。そうして恋をしなければ光る事もありません。
光らないかすみを、里人達は"かすのみ"と馬鹿にします。

しかしそんなかすみが、唯一、一人だけ、心を許し、恋い慕い、光り濡れる男がいました。
それが敵対関係にある寒田の男、燈吾です。

二人はお互いの里には秘密で逢瀬を重ねていきます。いつしか夫婦になる事を夢見て……。
しかし、ふとしたきっかけで"かすのみ"が光る事を知られてしまい、物語が大きく動き始める事となるのです。


この燈吾への恋慕と里人達への憎悪が、相反する感情を混ぜこぜにした作品にしており、「残酷で血生臭いのに、艶やかで美しい」お話になっています。
印象としてはダークファンタジー?伝奇?といった感じがしますが、坂水様はこの作品のジャンルをホラーとしています。

いやぁ、そのチョイスが素晴らしいです。
何故ならこの作者様、肝をヒヤッとさせるのがとても上手い方なのです。
本作を読み進める内、何度「( ゚Д゚)ヒエッ……」と言った事か。笑
人間の仄暗さや執着みたいな、どす黒い感情を書くのが本当に上手い方です。

あとは相手役である燈吾がとても魅力的な人であるのも、本作の特徴の一つです。
もう、かっこいいんですよ、この男が。そりゃ惚れるわってなります。
「こいつ悪い男だな」って思うんですが、それも含めて魅力的に見えるんですよね。笑

あと、情景描写にも是非注目して読んで頂きたいです。
舞台となっている二つの里がある黒山の、澱んだ神聖さが本当に分かりやすく表現されています。
都に住んでいる人間が夢想するような自然いっぱい夢いっぱいの森ではなく、歪んだ主人公とその森の最奥にある歪んだ里に住む者だからこそ見える景色や空気がありありと文面から感じられます。

そして何より、出だしが良いです。
コメント欄を拝見し、残酷なお話になっていくのは分かっていましたが(私はグロい話が苦手)、2話まで読んだ時点でこの話は最後まで読むと決めました。
しとどに光るってどういう表現ですか……何それエロい……となってしまって。笑

残酷で困難なお話ですが、最後まで読んだ私の感想は「ロックだな!!」でした。
読後感は痺れさせてくれますよ……。
是非、ご覧ください!

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