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【詩】その日まで

  その日まで

うちのうちがわ
どろどろしとるんじゃ
自分でもどうなっとるんかわからんで
気持ち悪うて仕方ない
ほやのにどうしょうもないけん
どろどろのまんまじゃ

どっか開いとるアナから出せたら
ちょっとは楽になるんじゃなかろか
ほう思うけんの
あがいてみよんやけど
ぜんぜんいかん

言いたいことは形にならんで ほやけど
ないんとは違うくて
言えんけんってないことにせんといてって
くちびる噛んだら血い出ただけで
やっぱりなんちゃ言葉は出てこん

さなぎ
チョウチョもカブトムシも
さなぎの中身はどろどろじゃって
きいたんじゃ
ほんまかどうか確かめたりはできんけんど
ほんまだったらちょっとうれしい
どろどろ
うちだけじゃないんじゃって思ったら
なんかとろとろの気分になった

いつかはぱっくりひらいた背中からちゃんと
きれいに飛んでいくんじゃ
うちのどろどろもちゃんとした形をつくって
きれいにひらひら
羽ばたく日が来るんじゃね

きょうはちょっと空が青いよ
背中ぐんと反らして深呼吸したら
うちの鱗粉
きらきら見えた気いする

                  初出「詩と思想」2008年4月号

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