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聴覚を拡張するテックアイウェア「HYPHEN」が世界との繋がりをつくる。

アイウェアに着脱できる完全ワイヤレス骨伝導イヤホンを搭載したスマートアイウェア[GLASSHORN](グラスホーン)を11月にローンチし、コミュニケーションに関する社会問題の解決に挑むヘルステックアイウェアブランド「HYPHEN(ハイフン)」。ブランド成り立ちの背景、プロダクトやパッケージにかける想いを、株式会社HYPHEN代表の中屋さんと、マーケティング担当深田さんにお聞きしました。

中屋光晴/HYPHEN株式会社 代表(写真右)
大学卒業後、アパレルベンチャー企業創業期に入社し、ブランド立ち上げや再生を経験したのち、株式会社ジェイアイエヌ(現:株式会社JINS)に入社。商品企画、マーケティング責任者を経て2017年に新規事業「J of JINS」を立ち上げる。2021年に独立、HYPHEN株式会社を創業。

深田菜生/HYPHEN株式会社 マーケティング担当(写真左)
大学卒業後、日本語学校の立ち上げメンバーとして入社。日本語教師として教壇にも立ちつつ、学校運営、事務、営業に携わる。その後、転職し、留学エージェントの事業の立ち上げから参画。SNSを中心としたマーケティング領域をリード。2022年にHYPHEN株式会社に参画。


最新テクノロジーのスニーカーから見出した眼鏡の新しいカタチ

- ブランド立ち上げのきっかけを教えてください。

JINSの在籍時に、これまでの顧客層とは違うターゲットに向けた新規事業としてハイエンドラインの立ち上げを進めていました。ただ、コロナ禍がかぶっちゃって、本業に選択・集中するという会社の判断で 続けることができなかったんです。それまでに開発した技術や構想を引き継ぐ形で、JINSの社長にもご理解いただいたうえで、独立しHYPHENを創業しました。

モノが溢れてる時代なんで、単に高級なものを作ればいいってわけではないと考えていて。当時、JINSの社長からも、「”高級”ではなく”最高”のもの作れ」とミッションをもらいました。そこで着目したのが、眼鏡の名産地である鯖江の製造技術と最新テクノロジーの融合です。

- どのような最新テクノロジーに着目されたのでしょうか?

「3Dプリント技術」です。シリコンバレーのカーボン社が3Dプリントで制作したランニングシューズのミッドソールとの出会いがきっかけになりました。

眼鏡って400年ぐらいの歴史があるプロダクトなんですけど、形自体はそんなに変わっていないんですよ。一方で、靴って昔は革靴だったのが、運動靴やスニーカーと進化して、靴底が硬かったものが、ミッドソールができて、より快適になったり、ファッション的にも多様化してったっていう歴史があるじゃないですか。眼鏡はファッション的には多様になってきてるかもしれないですけど、快適さの面では靴でいう革靴の域から進化できてないと思っていました。

3Dプリントで出力したラティス構造のクッションパーツ

そんななかで、3Dプリンターで出力できるラティス構造が、クッションパーツとして眼鏡に加わると、靴と同じように、より快適になっていく新しい流れが生み出せるんじゃないかって思いました。まさにスニーカーのミッドソールに近いような役割を眼鏡に付加できたら面白いだろうなと様々な可能性を探り、研究開発していました。

眼鏡って、鼻や耳の付け根など、肌を押さえつける部分がストレスになりやすいです。ラティス構造を用いれば、肌への圧力を分散しつつ、通気性が良くなるので、より快適になります。締め付ける構造をしていても、柔らかくクッション性があるので、グリップして痛くないし重くないしで、いろんなメリットを引き出せる構造だなと考えています。

ラティス構造のクッションパーツは鼻パッドにも搭載

目指すのは、従来価値も維持したアップデートによる、眼鏡の新しい役割と価値の創造

- HYPHENさんにとって「最新技術を組み合わせた快適性の向上」を重要視しているのですか?

眼鏡をもっと快適にしていくのが目的のひとつではあります。ただ、どちらかというと眼鏡を通じた新しい価値提供、 新しい眼鏡の役割を探していく方が大きいです。

眼鏡はこれからIT化する兆しがあります。眼鏡のIT化によって、眼鏡が重くなって掛け心地が悪かったら、どれだけ便利だとしても、使わないと思ったんです。ラティス構造によって装着ストレスが緩和された眼鏡がハブになり、様々な機能とコネクトしていくことで眼鏡の可能性が広がり、新しい価値を創造する未来を加速させられると考えました。

- なるほど、ラティス構造による快適性は、眼鏡の新しい役割と価値をつくるためのベースになるということですね。

あと、ファッション性も重要だと思っています。メガネは顔の一部になるので、ひとりひとり似合う形も全然違いますし、シーンごとに使い分けたりするので、ファッション要素がかなり強いんですよね。 

一方で、現状の眼鏡型のウェアラブルデバイスは、電子基盤の全てがメガネフレームに内蔵された状態で販売されています。限られた種類のデザインから選ばなければならいない状態になっていて、眼鏡の本質的なニーズから離れてしまっている。

従来からの眼鏡の価値が落ちた状態で、IT技術が付加されたとしても、プラマイマイナスゼロなんじゃないかなって思ってるんです。 HYPHENを通じて、これまでの眼鏡の価値は維持しつつ、そこに様々なITの便利さを繋げ価値提供していくブランドになっていきたいです。


世界初の音漏れしない骨伝導モジュールとアプリケーションがコネクトするアイウェアで「世界に繋がりをつくる」

- 快適性を基礎にしつつ、どのような新しい役割・価値を提供していくビジョンなんでしょうか?

HYPHENでは、アイウェアにコネクトする、最高音質の完全ワイヤレス骨伝導イヤホンのモジュールデバイスを開発しました。この骨伝導イヤホンは世界で初めて音漏れしない振動板を使っていて、声を聞き分けるAIの半導体チップも搭載しています。

この骨伝導イヤホンは、HYPHENのラティス構造を搭載した全ての眼鏡フレームに取り付け・付け替えが可能で、快適性とファッション性も両立しており、眼鏡の従来からの価値も維持しています。骨伝導イヤホン単体でも使えるイヤーカバーも提供していくので、マルチな場面で使えます。

今回は、オーディオ機能でローンチしますが、2024年には集音機能を追加したモデルも展開していきます。聞きたい音だけを拡張できるので、様々な音が溢れる中でも相手の話し声を“骨”で聞き取るというような体験が可能になります。アプリケーションとして、音質調整、トランシーバー、同時翻訳を今後リリースしていく計画です。

こういったプロダクト、アプリケーション、サービスを中長期的に提供していくことによって、「人間の視覚と聴覚を強化して、世界に繋がりをつくる」というビジョンを達成していこうとしています。

- そもそも、なぜ、アイウェアで繋がりをつくろうと思ったのでしょうか?

自分の祖母が105歳まで生きたんですけど、後半の20年間ぐらいは難聴で、コミュニケーションが取りづらい状況だったんですね。僕は、おばあちゃん子だったんで、色々話したいのに、コミュニケーションできない状況が、かなりのストレスでした。そのうえ、日本には耳が聞こえない人が1100万人いるって言われています。補聴器も聞こえづらさや恥ずかしさで付けない人も多いです。

また、近年ではイヤホンの普及で若年層まで難聴予備軍が広がっています。骨伝導に着目したのもこの点の懸念を排除したかったからです。これらを解消していき、繋がりを作っていきたいと思っています。


眼鏡の新しい売り方に挑戦しつつ、既存流通ともコラボレーション。

- プロダクトはどのように販売していくのでしょうか?

店舗チェーン展開が、眼鏡業界で主流にはなってるんですけど、これからIT技術が進化していく中で、それをベースにしてしまうと、そこから抜け出せずに淘汰されかねない。そうではないやり方で、成功パターンを見つけていきたいっていうのが大前提の考えとしてあります。

基本的にはオンライン上で売れることを目指します。ライブコマースもうまく使って、販売促進していきたいです。モデルさんが眼鏡をかけた姿に、憧れをもった瞬間に、購買意欲が高まる可能性があると思っています。お客さんのリクエストを聞きながら、モデルさんがいろんな種類を試すことで、オンラインでの試着のハードルを超えたいなと考えています。AR技術でご自身の顔と商品を合成することも検討していきます。ファッション系のライブコマースが盛り上がっているのも追い風にしていきたいですね。

オンラインでの販売を中心にしつつも、リアルな接客を求められるお客様もいらっしゃいます。打開策として、体験会や、フラッグシップとなるリアル店舗を考えています。購入後は検眼、加工、フィッティングが必要です。そこに関しては、日本全国にある既存のメガネチェーンとの、卸売りも踏まえたパートナーシップが理想的かなと思っています。デジタルのいいところを引き出しつつ、リアルなタッチポイントとの掛け合わせが必要だなと考えています。

売り方やマーケティングは、既存のものとうまく組み合わせていく方針なので、HYPHENでは眼鏡自体のクオリティをどんどんあげて、製品として勝負したいです。


プロダクトと一貫した強いコンセプトが、唯一無二のパッケージ体験をつくる

- パッケージのコンセプトやこだわりについて教えてください。

プロダクトもパッケージについても、全てに共通してることなんですけど、コンセプトはブランド名の通り、ハイフン、コネクトする、つなぐということです。パッケージも同じで、コネクトをベースに考えてます。

外箱にはバックルベルトを巻きつけており、ベルトがロゴの帯のデザインになるようになっています。ベルト自体がいろんなものにコネクトでき、メガネケースにつなげることで取っ手になったり、カバンに取り付けたり、パンツにぶらさげたりなどができます。使い方自体は色々あると思うんですけど、繋いで便利になることもコンセプトにしてます。

- パッケージについてる付属品がプロダクトに連結するっていうのは、初めて見ました。いろんな試行錯誤があったのでしょうか?

アイデア自体は、アートディレクターと一緒にブレーンストーミングするなかで出てきました。そのままデザインしていただいたので、意外とすんなり決まりました。

外箱もウェブで注文できるやつですし、ベルトもメーカーさんに元々あるものの中から帯の幅が狭いものを選んでつくったものです。ケースは、メガネケースというわけではなく、化粧品のポーチをアレンジして製作しました。実は、そこまで特殊な物ではないです。

- 既製品をうまく使いながらアレンジして、ここまでのオリジナリティーとブランド体験をつくるって、本当にすごいなと思いました。

経験上、どれだけ悩んでも一向にアイデアが出ない、うまく作れないっていうケースはあるんですよ。でも、今回は自分が創業して、自分が作ったプロダクトっていうのもあって、 コンセプトが明確だったからアイデアが出てきたというのは結構大きいのかなって思ってます。

アートディレクターと色々進めていく中で、今後もプロダクトはいろんな機能とコネクトしていくということもあるので、パッケージも、お店での什器も、全てが繋がりを持てるような、ディレクションでやっていこうと共通認識をもっています。

コンセプトを共感して、アートディレクターが動いていただいてるっていうとこが、やっぱり迷いがなかったポイントかなと思っています。


編集後記

プロダクト開発に集中するためにも、売り方やパッケージングにおいては、完全オリジナルではなく、使えるものを最大限活用していく。アイデンティティが薄まる懸念もありますが、芯となるコンセプトを貫くことで、しっかりとブランドらしさが表現されていました。不確実な未来に向け、変化しながら成長していく過程では、最適な選択だと気づきをいただきました。[GLASSHORN]をかけて、カバンにはHYPHENのサングラスも携えて、世界を旅する未来が楽しみです。


[HYPHEN株式会社]
新たな感覚器官を提供するヘルステックアイウェアカンパニー。骨伝導オーディオを活用し、アイウェアの本来の価値を保ちつつ、「聞こえるアイウェア」を製作。
 https://hyphen-tokyo.com


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