他社事業支援と自社事業の両立でシナジーを生み出す「ii-inc.」流のブランドビジネス
事業開発、プロダクト開発、営業支援、マーケティング戦略、TVCM制作、PR、イベント制作など川上から川下まで多岐にわたるコンサルティングとクリエイティブによってクライアントの事業成長をサポートしつつ、自社事業としてマウスウォッシュブランド/飲食事業を展開するプロデューサーブティック「ii-inc.(イイ)」。クライアントの事業支援と自社事業の両面を知るからこそのブランドビジネスの考え方について、ii-inc.代表の岩城さんにお話をお聞きしました。
クライアントの本質的な事業グロースに貢献するために、あえてコミット領域を絞らない
- ii-inc.では、クライアントに対してどのようなサービスを提供されているのでしょうか?
クライアントの成長のために、事業の全領域に対して、マーケティングとクリエイティブの力を使って支援するチームです。制作会社やPR会社と領域を限定することなく、「プロデューサーブティック」と名乗っています。
クライアントは、ECプラットフォーム、IT企業、食品・飲料メーカーなど様々です。マーケティング起点のコンサルティングやブランディングから、経営指標の策定、採用や営業支援などの案件も増えています。
岩城大祐 / ii-inc. CEO
2014年:関西大学卒業。2016年:株式会社博報堂入社。2020年:ii-inc.設立。
- コミットする領域を限定しないスタイルが特徴的だと思うのですが、博報堂での経験が影響していたりするのでしょうか?
博報堂は大好きでした。ただ、広告領域のサポートだけでは、どうしてもクライアントの事業グロースを実現することは難しいと感じる経験があって。クライアントが広告で課題解決しようと思っていたとしても、客観的に分析すると、ベストな解決手法が広告でなかったりする。本質的な事業グロースに貢献できて、博報堂のフィロソフィーでもある「生活者発想」をもっと事業の全領域に活かしたいと思って、会社を立てました。
人がワクワクした時と、本当に困った時に一番に相談される存在になりたいとも思ってます。ワクワクしたアイデアを実現したり、困りごとを解決するときにも、「ここのポイントだけは助けられます。」ではなく「全部、まかせてください」といえるほうが、カッコいいと思っているし、やりたいことです。
どんな仕事、どんな課題だとしても僕たちのマーケティングの定義である「人の感情と体を動かす」という視点を持って、フラットに考えていくことを大切にしてます。
マウスウォッシュを新しいファッションカルチャーに
- クライアントワークもお忙しいと思うのですが、そんななかでなぜ自社事業/ブランドを立ち上げたのでしょうか?
プランニングが提供価値になるコンサルティングやクリエイティブは、自分が健康じゃないと続けられないし、いつか若い人には勝てなくなると思って。自分の人格が外れても収益を作れる事業を持ちたいと思いました。マウスウォッシュの「YET」、ホットドックカフェの「BABY HOTDOG CAFE」、会員制のバーを展開しています。
- 飲食店も経営されているのですね。今日は、マウスウォッシュの「YET」について詳しく聞かせてください。どういった背景や想いだったのでしょうか?
日本にいままでなかった文化をゼロからつくる。新しい常識をつくることへの挑戦が面白いと思ってます。着目したのは、日本は海外に比べて口腔環境にお金をかける人が少ないこと。市場背景としても、コロナ禍でマスクによる口臭ケアニーズが顕在化してきていたこともあり、マウスウォッシュに可能性を見出しました。
ターゲットは20代後半から30代後半の女性。ドラッグストアで「殺菌力!大容量!」みたいな効能・機能では響いていなかった人たち。マウスウォッシュを買ったことない人が、ファッションアイテムとして買っていく世界線を仕掛けていきたいなと思いました。
- ホームページは洗練されたデザインで、パッケージも風合いの良い紙を採用されたりと相当こだわってつくっていますよね。
家ナカ需要も高まり、日用品にもデザイン性が求められ、高価格帯も売れていたりもあったので、マウスウォッシュを香水のようにファッション感覚で選んで、当たり前のようにマウスウォッシュにお金をかける時代を目指したいと思いました。「フレグランスド マウスウォッシュ」と銘打って、自分の口からいい香りがする瞬間・体験を楽しむブランドにしたいなと考えています。それで、アパレルっぽいマーケティングをしたいと思って、ホームページも、アパレルのように商品を見せたり、パッケージのデザインにもこだわっていきました。
ブランドづくりの本質は、自分たちが熱量をかけられる「好き」のファンになってもらうこと
- お客様の反応はいかがだったでしょうか?
ローンチの直後に結構売れて。高級ホテルのアメニティにも採用されています。ただ、一般販売のほうは、後回し後回しになっちゃってて、実は、一時休止中。でも、このままじゃii-inc.の未来はないねってなって、来年の4月にリニューアルして、改めて本気でブランドを展開していきます。
- 今後は、どのような方針でリニューアルをしていくのですか?
自分たちがやりたいと思う事業じゃないと「進まない。続かない。熱が入んない。」っていうことにメンバーみんなで気づいた。自己資金で誰からも急かされず、自分たちがやりたいことだけをやっていこうと思っています。
市場環境を捉えてブランドをつくって、マーケティングにお金をかけて広めるのも正しいと思う。だけど、 僕らは、そういうブランドじゃなくて、自分たち自身が本当に好きで、欲しいと思って、人に薦めたいものをつくっていきたい。「これめっちゃ良くない!?使った方がいいよ!!」って感じで、ブランドをつくった人も起点になって、どんどん共感とファンが広がっていくブランドづくりが1番大切やと改めて思って。その方向性でブランドをリニューアルしていこうとしてます。
ブランドの骨格をつくるために、まずは、自分たちがどんなデザイン、ブランド、カルチャー、アートが好きかを知るのが重要。なので、国内と海外の美術館やお店を回り、自分たちの好みを見つめ直しました。周りの人が好きじゃなかったとしても、ブランドをやる人間が好きって言ったらそれでいいと思ってる。それが、ブランドづくりの本質だなって思ってます。
ブランドってある意味「年輪」だとも捉えていて。1日1人でも、1ヶ月5人でも、ゆっくりでいいからコアなファンを増やしていくっていうやり方でやっていこうと。モノがありありふれてる時代だからこそ、そのほうが可能性があるんじゃないかなって思っています。
自社事業から広がっていく仕事の輪
- 自社事業/自社ブランドをやっててよかったと思うことはありますか?
コンサル事業だけをやってても繋がれない憧れのブランドとも仕事ができること。たとえば、自分が一緒に仕事をしたいめちゃめちゃカッコいいアパレルブランドのオーナーやデザイナーさんに、真っ向から「課題を教えてください、解決します」って売り込んだとしても仕事ってできない。コンサル的な会社って、結構何者かよくわからないから。笑
僕らは「ホットドッグ屋の顔した、なんか頭ええやつ」みたいになってて、相談しやすい感じにもなってると思う。それに、自分たちのブランドで、どんな世界観が好きかとか、どんなものが作れるのかってことが発信できてる。そこで、お互いの世界観がマッチしたら「コラボしましょう」ってことで、繋がりができて、次の仕事も生まれていく。
そして、場(飲食店)をもっていると、こっちから会いに行かなくても、向こうから来てくれる素晴らしさも感じる。いろんな人がいろんな人を連れてきてくれて、好きなカルチャーが似た仲間も集まってきてくれて、仕事の輪が広がっていく。ハンバーガーチェーンの偉い人とか。大手スポーツブランドの人とか。そこから、僕らがプロデュースして決実した案件もいっぱいあるから、めちゃめちゃ面白いです。ある意味、マーケティングとしてもワークしてるなって思ってます。
広告会社もコンサル会社も事業グロースをするためになんでもやりますという、領域を絞らずにサービスを提供する会社が増えてきている。そのなかで、誰と仕事をするのかを選ぶときに重要になるのは、「好きな人かどうか」だと思う。対外的なPRをしているわけではないけど、自分たちらしさを出して、好きになってもらえてたら、いつか相談したいなって思ってもらえる。だから、出会う人全てにモテようっていうのは、ii-inc.のコンセプトとして、意識してます。
編集後記
他社事業支援と自社事業の両面を知っているii-inc.さんのブランドの考え方はとても興味深かったです。トライ&エラーしながら磨き込み、変化と失敗を恐れないブランドづくりをされていました。最適化の過程だとしても、ブランドオーナーのぶれない「想い」があることが重要で、それが、ブランド自体が継続するモチベーションとなり、ファンが惹きつけられる魅力になるのだと感じました。また、自社ブランドをある種「自己紹介」として活用する強みにも気付かされました。事業会社か?支援会社か?という常識では語れない「二刀流」の可能性を大いに感じました。リニューアルされていく「YET」、そしてii-inc.さんのこれからの「企み」がとても楽しみです。
[YET] ii-inc.
知りあうとき、触れあうとき、私たちの距離は近づく。はじめて出会う瞬間の心の揺らぎを、胸の高鳴りを、吐息からデザインできたら。マウスウォッシュ、YET。新しい世界にあなたを連れ出す、吐息のための香りが誕生しました。
https://yet-official.com
https://ii-inc.jp
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