見出し画像

コンセプトへの共感で、仲間を増やし続ける、 ちょっと危険なジンジャーシロップ「peligro」

日本における生姜発祥の地と言われている「高知県いの町」の生姜そのものの風味を生かし、極めて小ロットな手づくり製法にこだわったジンジャーシロップ「peligro(ペリグロ)」。自然の個性を表現することにこだわり、季節で味わいも見た目も変わっていくというユニークなブランドの背景や戦略について株式会社Ginger&Company代表の大倉皓平さんに話を伺いました。

大倉皓平/株式会社Ginger&Company代表・株式会社KIIIRO代表
株式会社電通パブリックリレーションズにて、営業や企画ディレクションなどを担当する。2011年に同社を退職し、世界をめぐる旅へ。2018年、日本へ帰国し株式会社Ginger&Companyを設立、ジンジャーシロップブランドをローンチ。2021年にはクリエイティブとPRを主とする株式会社KIIIROも設立。 


中米グアテマラではじめたクラフトジンジャーエールづくり

- まずはペリグロを始めたきっかけを教えてください。

1番最初のきっかけは2012年から18年にいた中米のグアテマラという国に遡ります。バックパッカーとして世界を回っている時に、たまたまグアテマラでいい家を見つけてしまい、ゲストハウスビジネスとレストランを始めました。

東京ではクラフトジンジャーエールが流行ってる時期で、それを見て、グアテマラで本当の生姜の味わいを使ったジンジャーエールを広めたいと思ったのが、最初のきっかけです。グアテマラは、年中、生姜が取れていたので、新しい使い方の提案として、クラフトジンジャーエールをやりたいと思ったんですね。

- 元々、ジンジャエールがお好きだったんですか?

そうですね、結構飲んでいました。自分が好きなもので、本当に生姜から作ったものを広めたいと思って自分のレストラン用に作り始めたのが、本当に1番最初です。 

その後2018年に先進国でもチャレンジしたいなという想いが出てきて、 東京に帰ってきたんですね。その時に始めたのがジンジャーシロップのビジネスです。当時は、とにかく早く始めたかったので、自分でパッケージラベルを作って、マルシェとかで売り始めました。

しばらく続けてたんですけども、どこか自分1人の力ではクリエイティブ面で満足してないな、みたいな時があって。味はいいんだけど、最後のアウトプットのブランドっていう部分が、なんかイマイチだなと。じゃあいよいよ満足行くブランドを作ろうと、リブランディングをしたんですが、それが2021年6月15日、生姜の日です。


ロットごとに味が違うことの気づきから生まれたコンセプト 「自然の個性を表現する、ちょっと危険なジンジャーシロップ」

- ブランドの特徴を教えてください。

グアテマラと日本でジンジャーシロップを作り続けて気づいたのが、ロットごとに、風味や、とろみ、甘み、辛み、水っぽさとかが、ちょっとずつ違うということでした。

例えばナチュールワインはロットによって違うのが当たり前だけど、ソフトドリンクってコーラもジンジャーエールもオレンジジュースでさえ、夏飲んでも、冬飲んでも年中一緒っていう、固定観念があるなっていうのに気づいて。じゃあそこに、味が季節やロットによって変わっちゃう危険性を打ち出したいと思いました。

ペリグロってスペイン語で、危険っていう意味なんですね。可変的であるっていう、常識をちょっと覆すような危険性をはらんだ商品を作りたと思いそれを名前にしました。ラベルが4種類あるのもロットごとの違いを表現するためです。ロットごとにラベルを変えて可変的なところを見せたい。アーティストの、Akari Uragamiさんに、「危険性をはらんでいて、混ぜ合わさった感じを出してほしい」とお願いし 4枚書き下ろししていただいきました。

Akari Uragami氏によるアートワーク4種


- ロットごとに毎回味も、香りも違うんですか?

生姜がどのぐらい土の中にあったとか収穫してからどれぐらい保管されてるのか、みたいなことによって、味や、この沈殿の量とかも変わってくるんですよ。

やはり収穫したての時は、すごい瑞々しいというか、新生姜っぽい味がするんですよね。ちなみに製造は1ロット当たり75本でやっていて、月に3,4ロット作る時もあれば、月に1ロットの時もあります。

- 個人的に、○/75というシリアルナンバーが入ってるところが好きです。

手作り感っていうのは、すごく大事にしています。 風味の変化とか、オートメーションじゃないっていうところは、ブランドの大事なところかなって思うんですよね。 

- 味が違うっていうのを、とてもポジティブに転換されていているのが面白いですね。

フックになるというか、目に止まる、気になるワードを入れたいなと思っていました。「ちょっと危険な」みたいなワンフレーズを入れることで、 何が危険なんだろうっていう、その先を読みたくなるような工夫ができたかなと思っています。


共感を元に広がっていく売り場、仲間、そして活動

- 販売チャネルや、今買ってくださってるお客さんについても教えてください。

ECサイトと、直売マルシェと、セレクトショップやカフェなどの店舗です。店舗は全部で6、7店舗、お客さんは30前後の女性がメインです。

1つはプレゼント需要があって、パッケージ的にすごい珍しい商品だなっていうところで、 買っていただいています。もう1つは、コンセプトと味わいのセンスに共感してくれて、定期的に買ってくれてる方です。特に秋冬の寒い時期にたくさん出るようになりますね。ホットティー、お湯割り、ホットジンジャー、ホットミルクに使われる方が多いですね。

それと実は、ペリグロは糖度がめちゃくちゃ低いんですね。普通のジンジャーシロップだと糖度40%前後が多いんですが、ペリグロでは20%ぐらいに落としています。なのでショットでそのまま飲んでもらうこともおすすめしています。  もしかしたら風邪っぽいかなとか、喉の調子イマイチかもっていう時にも効きます。

- 今後の販売戦略について教えてください。

基本、お互いに共感できる方々に積極的に卸しをやっていきたいと思っています。本当にオートメーションとか工業化は全然考えていないので、手の届く範囲の卸し展開をしていきたいなっと思っています。コンセプトやスタンスを見て問い合わせいただくことがとても多いので。共感してくださってるなっていう感覚があれば、展開を進めたいと思っています。

あとはイベントをやっていきたいと思っています。最初のローンチ時にも、まさにここのお店(SR Coffee Roaster & Bar)でイベントをやって、コラボドリンクを開発したりDJのEITA GODOさんに音楽化/プレイリスト化してもらったりしました。そういう手の届く範囲での コラボレーションをやっていくことで、 世界観がちゃんと伝わっていくんじゃないかなと思ったりしています。

- 今の話を伺っても、いたずらに規模を目指してないじゃないですか?そんな中で行動をドライブさせるモチベーションって何なのでしょうか。

世の中に、なんかちょっと意外で面白いよねみたいな感覚は持ってほしいっていう遊び心はあります。ビジュアル的にも、瓶を重ねてみたりとか、使った後は花瓶として使いましょうとか。いかに遊ぶかみたいなところを提案してるのが自分も楽しいです。

ソフトドリンクだけど、味が変わっちゃうところや、ちょっと危険な印象があるところの意外性を楽しんでもらいたいっていうのが、今、自分をドライブしてるモチベーションかなと思ったりします。

先ほどは言及できなかったんですけど、ブランドを作るときは僕1人じゃなくて、みんなで作っていったんですね。ロゴデザイン・アートディレクションにはMayuko Kanazawaさんが入っていて、アーティストはAkari Uragamiさん、コンセプト作りのところには料理研究家のSayoko Tsukamotoさん。クリエイティブディレクションにはMaico Nishikojiさんに協力してもらいました。

そもそもは全員友達なんですけど、僕が入っているMIDORI.soっていうシェアオフィスのコミュニティを活かして、協力して1つのブランドを楽しみながら作っていったっていうチームワークではありましたね。


編集後記

ブランドのパーパスでも楽しみや遊び心を掲げているブランド「peligro」。それ以上に大倉さんが仲間と楽しみながら作ってる姿勢が印象的でした。共感をチカラに、共感できる範囲で展開していく「コミュニテイブランド」とでも言えるような新しいブランドの形を見た気がすると同時に、今後こんなブランドが増えていくのだろうなという予感がしました。


[peligro]
自然の個性を表現することにこだわり、季節で味わいも見た目も変わっていく、ちょっと危険なジンジャーシロップ。生姜そのものの風味を生かし、極めて小ロットな手づくり製法にて製造。

[SR Coffee Roaster & Bar]
取材場所を提供いただいた日本橋にあるコーヒーショップ。peligroを使ったオリジナルドリンクも提供している。
https://stockholmroast.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?