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もし、未来が変えられるなら『2話』

「何描いているの?」渚が初めて僕にそう聞いてきた。
「渚の顔」
「!? え? 私?」
「そうだよ」
「……」渚は何も答えてくれなかったけど、表情はどこか嬉しそうだった。
 
 そこから急激に距離が縮まった。渚は僕によく話しかけて来るようになった。それまでは僕が話しかけないと話てくれなかったのに。僕はそれが嬉しくて仕方なかった。クリスマスが来て、クリスマス会をデイケアでやった。渚はそんなの着る子じゃないと思うのに、サンタのコスプレをしていた。着てくれなさそうだからこそ、特別な気がして、すごく可愛く見えたのを覚えている。
 
 僕が入院する前、時系列はもはや分からないから、思いつく順番に話すけど、夢を見て発狂してしまった記憶がある。記憶があるというのは、今となっても、それが現実なのか、夢だったのか判断できないから、そういう書き方をすることにする。それは壮絶な夢だった。自分が今まで生きてきた中で、いろいろな罪なことの積み重ねが、最後死ぬ時になって、徐々に苦しめながら、胸に刺さる刃物の痛みのように、徐々に刺さっていき、時間を今まで生きてきただけかけて、苦しめるという夢を見て、胸に刺さる刃物が本当に痛くて僕は発狂した。

 発狂して目を覚ますと、両親が僕のその叫びを聞いて救急隊員を呼んだらしく、僕は何人かの救急隊員に取り押さえられた。でもその頃ガリガリに痩せていたにも関わらず、あまりにも力が強くて救急隊員では止められなかった。救急隊員は困り果てて、その後、警察官を呼んだらしい。僕はその警察官たちに取り押さえられ、警察署に連行された。連行されるときに、担架のようなものに乗せられた記憶がある。でもその担架は空間が歪んだように上下し、僕は上に持ち上げられたり、下に下げられたりした。その後、乗せられた警察車両も、すごく非現実的で歪んで見えた。赤色灯の明かりが反射する車内で、僕は拳銃が発砲されるビジョンを繰り返し見た。

 発狂するほど叫んで、抵抗したからだろう。警察署に着いた僕は汗でビショビショだった。そのまま僕は、落ち着きを取り戻し、朝になってパトカーで付き添っていた母親と一緒に自宅に帰された。

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