見出し画像

音楽が好きだと気付いた日

生まれて初めて自分のお金で買ったものは、「鍵盤が光るキーボード」だった。
10歳位だったと思う。


幼稚園の頃からピアノを弾く同級生に憧れを持っていた。体育館に置いてあるグランドピアノを華麗な手つきで奏でる同級生の横で、じーっと立ち尽くしていたのを覚えている。


母曰く「内気すぎて習い事はさせられなかった」らしいが、当時を思い出すと「やってみたい」という自分の想いに自信がなく、母親にすら意思を伝えることができなかったのだろう。


楽譜は読めなかったので、毎日何時間も光る鍵盤を追いかけ、運指を暗記した。
夢中だった。メロディになるとわくわくした。

購入してから1週間後、BeatlesのLet It Beを両手で弾けるようになった。
(デモ演奏を流した時に、父がご機嫌に歌っていたという理由でこの曲に決めた)

家族皆が「すごいね!才能あるんじゃない?」と大絶賛。親ばか&兄ばかである。
嬉しかった。初めて好きなことを見つけた気がした。

それからの人生でも音楽がずっと好きだった。中高は吹奏楽部、大学は軽音楽部に入り、10年間でホルン、ギター、トランペットを一通り演奏できるようになった。
好きだからといって才能がある訳ではなく、努力しても人並み以上に上手くなれなかったのが残念な所。

負けず嫌いが凶と出て、「練習しても特別上手くはならないな、そこまでじゃないや」と思い、卒業後は続けていない。
(自分のこういう所がとても嫌いなので改善したい。)



長い年月が経った今、ふと初めてLet It Beを弾いた日を思い出した。
仕事が終わってから楽器屋さんに直行した。ひととおりピアノを見てから、体験レッスンを申し込んだ。
こんなに衝動的になることは、私の人生で稀である。

本物のピアノはあの時のキーボードと違い、鍵盤が重い。「楽しい」と思った。久々に心が躍る。

真っ白な電子ピアノを買った。届くのが待ち遠しい。
また夢中になれる日がくるのかな。
今後の自分に少しだけ期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?