早川沙織からの手紙 #10
沙織3
「あの日、先輩と待ち合わせをしてたの。神社のまえで」
「へー」
「先輩に事情を説明したら、新しい浴衣を買ってあげるよって。先輩の父親はコンサル会社を経営してるのよ」
「そうなんだ」
「私、ショックだった。この日のために一生懸命選んで買ったお気に入りだったのに、ちょっと汚れたら、新しいのを買う人なんだって。ウソでもいいから、似合ってるねっていってほしかった。先輩に悪気はなかったのはわかっているのよ。転んだのは私なんだし。そういう人なんだなって気づいちゃったの、そのとき