【観劇記録】山田ジャパン『愛称⇆蔑称』
2024.03.14 @ 六行会ホール
初めての六行会ホール。京急沿線には疎いので、ホールの存在自体、今回がきっかけで知った。駅近だし2列目から段差がついていて見やすい会場だった。ただ、トイレの動線がやたら凝ってて、出るときに間違えて男子トイレに突撃しかけたのはここだけの話。
導入こそまあまあセンセーショナルだが、蓋を開けてみれば意外と真摯に作られていた。私の好きなタイプの会話劇。もちろんそれを期待していたのだが、期待以上。終演後カフェにでも入ってしばらく反芻してから帰りたくなるような作品だった(が、終演も遅く翌日も仕事だったので諦めた、残念)。
私が過去にあだ名で嫌な思いをしたことがあったのと、今までに見た山田能龍さんの作品の傾向からして過去を思い出してキツいかも……と警戒していたが(先月のこともあったし)、本当にキツいところの核心はうまく避けてくれていた。私個人としては助かったが、何かふんわりしてると感じる人もいそうだな、とは思った。
もちろん議論自体も興味深いのだが、畑中の成長譚としても上手くできているのが面白い。だんだん若手とも言いづらくなってきて、学年主任として判断を下さなければいけない立場になった畑中が彼なりに問題にぶつかっていく姿は素直に応援したいと思ったし、どんな判断をするのかは純粋にわくわくした。
そしてそんな畑中を見守る、校長、教頭をはじめとする先輩教師たち。議論の中ではあれだけ反対していても、最後に下した結論には文句を言わない。距離が近いように見えても立場はわきまえているというか、一線を引いて社会人として尊重している感じは印象に残った。まあ展開の都合上そうしてるだけかもしれないけれど。
ちなみに、私は「個人的にはあだ名が禁止されたところで一向に構わないし警戒事項が1つ減って嬉しいけど、それで何も解決しないのにメリットを奪う必要ないよね」というスタンスで、あの議論を経ても変化はない。"仮の結論である"と明示したうえであだ名禁止にする、という結末にはわりと納得している。
ただ、あくまで"仮"であるということは、職員室だけでなく生徒たちにも共有してほしいな、と感じた。議論の過程も(ある程度工夫は必要だと思うが)丁寧に説明してほしいかな。クローズドなままだといらぬ詮索が起きそうだし、中学生なら生徒たち自身が考えるきっかけにできそうな気がする。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?