物語を理解するための「想像力」

4コマ漫画「コボちゃん」


小学部の国語で、4コマ漫画のコボちゃんを教材として取り扱ったことがありました。


その日に使った4コマ漫画の内容は、以下のようなものです。

主人公のコボちゃんの視点で書きます。
1:置いてあったゼリーを全部食べてしまった。
2:お父さんがお風呂から上がってきた。
3:お母さんに「お父さんにゼリーをあげようと思ってたのに」と言われる。
4:机の上に、代わりに持ってきたカブトムシゼリーを置くが、お母さんに「こんなもの置くんじゃないの!」と叱られる。




「文脈」がない


「どんな意味か分かる?」と質問すると、全員が「わかった!」と言いました。

「じゃあ、この4コマ漫画はどんな話なか、説明してみて」と言うと、「それぞれのコマに描いてあるまま」を説明し始める人ばかり。

たとえば、

ゼリーを全部食べて、お父さんが風呂から上がってきて、お母さんが「お父さんにあげようと思ったのに」と言って、「カブトムシゼリーを置くんじゃないの」と叱られた。

確かに間違えてはいませんが、ただ一コマ一コマ、描いてあることを並べているだけ。つまり「文脈(文章の筋道、流れ)」がないのです。


それに加えて、「主語」がハッキリしないので、「食べて」「言って」「叱られて」の主語がバラバラです。

これは、小学生が書く作文に共通する問題点でもあります。




「文脈」と「想像力」


今回の4コマ漫画は

ゼリーを全部食べてしまったので、自分が持っていた「カブトムシゼリー」でごまかそうとしたけれど、余計に叱られてしまった。


言葉で書かれていない部分
「なんとか失敗を取り返そうと考えた」
「ごまかせなかった」

この2つを自分で補ってあげないと、的確に説明できません。


学校などで「国語力がない」と指摘されてしまう生徒たちは、この部分が苦手な場合が多いです。

つまり、
1:「文脈」を意識・理解していない
2:1枚の絵ともう1枚の絵の間を、「想像力」で補うことができない

この2点です。




上手い文章は、「語尾やニュアンス」でも表現されている


この4コマ漫画を「文章」に置き換えると、直接書かれていない部分は、「ごまかせなかった」とストレートに表すことができます。

でも同時に、「語尾」や「表現」を少し工夫することで、相手にそのニュアンスを伝えることもできます。


たとえば、「失敗をした」という部分は、「ゼリーを食べた」ではなく「ゼリーを食べてしまった」と書くだけで、失敗したという意味が相手に伝わります。


こうした「表現の工夫」ができる小学生は、残念ながらほとんどいません。

同時に、文章読解においても、それに気づける生徒がほとんどいない、というのが実情です。(小学部の国語では、その「ニュアンス」を受け取ることに重点を置いていますが、なかなか難しいようです)




まずは日常会話から


ご家庭でも、お子さんとの対話にちょっと気を配ってあげて下さい。

意図が相手に伝わるだけの会話で終わらせずに、「的確に相手に伝わる」ような言葉・表現を選んで使えるよう、事あるごとに「自分で説明させる」ということを心がけてみて下さい。

そして、それをお子さんの目を見てしっかり聴いてあげて、気になった点を指摘する。

こうした日常会話を大切にすることで、「国語力」にも少しずつ良い変化が見られるはずです。