この世の万物に違和感を持つ

今回は生きるとか死ぬとかの話になります。

明るい話題ができていませんね!
不登校の時に忘れられない出来事があり、読み物として残してみます。
よければご覧くださいね。


不思議の国の


高校を休学して一度目の春、突然のことでした。

朝起きるとなんだか、自分が小さく部屋が広いのです。
言い表しにくいのに、拭えない強烈な違和感。
6畳のはずの自室。
壁までの距離が、変。

枕元のガラパゴス携帯を取る自分の手を見たとき、違和感が確信に変わりました。


小さっ


広角レンズで見ているようです。
休学中は悪夢で目覚めるのがしょっちゅうで、これもその類だと考え寝直してみます。
しかし、目覚めた先の世界は変わりません。

この状況。
もしかしたら本記事をご覧のあなたの周り、あるいはご自身に経験があるかもしれません。
私は当時全く知らず、大人になってからスマホが普及した頃に見つけた医学のサイトで、それが

「離人症」

だったことを知りました。
下記のページに解説されています。


ストレス、恐怖などへの防御反応として表れる状態だそうです。
この感覚自体がその上塗り、というか。
不登校の傷心に加え、強烈なショックを受けることとなりました。


ちなみに、上記の「不思議の国のアリス症候群」というものに通ずる点も多いですが、どちらでもいいかと思います。
原因は基本的に同じことを言われており、卵が先か鶏が先か、という話になるからです。
ファンシーな名称ですよね。
子供のころに一度は体験した方もいらっしゃるかもしれません。
「不思議の国のアリスは作者ルイス・キャロルが実体験をもとに書いた物語」と考えた精神科医が名付けた症状の名称だそうです。
センスあるなって思います。

私がその離人感の中で特に苦痛だったことについて書いていきます。
個人差の大きいものなので、あくまで一個人の体験談として捉えてください。

自分を疑う毎日

① 自分の実感がない


体が自分のもので、自らの意思で動かしているという感覚が希薄になりました。
「自分のはずの人形」を動かす日々が始まります。
動作すべてに違和感が付きまといます。
例えば、食事しているのは自分だと頭でわかっていても、どこかフィクションのように思えてなりません。
物が思っているより近くにあるなど、距離感が掴みにくい感覚もありました。

② 言葉が上滑りする


実感がないことは、会話に関しても言えることでした。
自ら発した言葉でも、まるでロボットのように「意思が乗らない」のです。
大きい声で伝える!と意気込んだところで無意味です。
現在この記事を書きながら、「水中で叫ぶ」という表現がこれ以上ないほどしっくりきました。
どう叫んでも、声は水が吸収するし、吐いた空気は泡となり水面まで届かずに消えます。
そのため相手との意思疎通の実感に乏しく、口数が減りました。

③ 色が鮮明に、生々しく見える


光の下にあるものは全て彩度が上がり、実物よりもビビッドに映りました。
視覚が敏感になったと思います。
景色をみても美しいどころか、余計な色まで見え、気持ちが悪かったです。
特に太陽光下の集合体がダメで、木々についた葉っぱや、敷き詰められたタイルなどがくっきりと際立って見え不気味でした。

④ 時間が何十倍も長く感じる


時間経過が恐ろしいほど遅くなりました。
時計を確認しながら数えても、確かに秒針と長針が比例して進んでおり、体感だけがおかしいのです。
ウォークマンでラジオを1時間聞いた感覚で時計を見ると、まだ10分も経っていませんでした。

⑤ 文字を見るのが怖い


携帯画面の文字を追うのが怖かったです。
異様にくっきりと浮かび上がって見えます。
文字は読めるのですが、パッと見は記号のようで短いメールの意味を理解するのにも時間がかかりました。
紙媒体は比較的見やすかったですが、斜め下方向へ虹色がかって見えました。

⑥ 知人が他人に見える


知人は言わずもがな家族さえ、その関係を疑う自分がいたりするのです。

とある日の夕方、自身の存在があるという実感がほしくなりました。

夕飯の支度をする後ろ姿に、

「わたし、いきてる?」

この7音の言葉で確かめたことを鮮明に覚えています。
目の前にいる、他人のようだけど「母」と認識していたはずの人から、教えてもらうしかありませんでした。
必死の問いかけでした。

母が、「うん、いきてるよ。」と少し笑って私の両肩を掴みました。


そっか。こんな風でも生きてるんだね。
残念なような、安心したような、変な気持ちでした。
このとても不思議な会話と、紛れもない「母」の態度は、自身がここにいていいことを示してくれていました。

その渦中で悩む人へ


原因は人それぞれで、精神的なショックの他にも片頭痛などもきっかけになります。
一過性のものであることも多く、大半は命に関わるようなことはないとのことです。
(※稀に脳腫瘍や、甲状腺の機能異常などが原因の場合もあるため検査しましょう)


これだけは声を大にして言わせてください。
当事者は、死にたくなるケースが確かにある。


現実からひとり切り離された感覚、イキイキしたくてもできないもどかしさ、非現実的のオンパレードで生き地獄なんです。
人類の歴史の中で、これが原因で死を選んだ人が間違いなくいると思っています。

私はその当時に統合失調症と診断されており、処方された薬の副作用と昼夜逆転の不規則な生活も相まって離人感が色濃く出ていたと思います。
それらが合併することで、今までどうやって生きてきたかわからなくなるほど、自身の見る世界を歪めていきました。

解放は「いつの間にか」


何年も別の世界に隔離されていたようでした。
実際には春先から夏になるまでの出来事です。
いつの間にか、その感覚はなくなっていました。
私から解決策の提示はできかねます。
しかし、そこから早く抜け出す手はずになったのかもしれない可能性の話があります。


薬の副作用かもしれない

向精神薬の副作用として、上記のような症状が出ることもあります。
私の場合は統合失調症との診断から、主にリスパダール、他睡眠薬を処方されていました。
ある日記憶が断片的になり、食器を落とした衝撃で我に返りました。
今薬を服用している方で、少しでも違和感が出た場合は、担当の医師に相談することを勧めます。

今、目の前のことに集中する

今この瞬間に感じることを受け入れます。
少しでも感情が揺れたら、そのままを受け入れてそれに的を絞り、感じきってみてください。

私はそのとき、部屋の模様替えをしました。
感覚は明らかにおかしいし、浮遊感が気持ち悪いのですが、それでも負けじと体を動かしてください。
自分が、どこに何を置きたいのかを必死で考えます。
浮かばないというなら、それはそれでOKです。
家具の組み立てなどもなんとか集中してください。
木材の香り、ビスの冷たさ、凹凸、ドライバーを回した時に体が拾った感覚をひとつずつ感じます。

DIYで例えてみましたが、食事、お風呂に入ること、なんでもいいです。
すぐには何も感じられなくても、ただその瞬間を過ごせばいいです。
ふと言葉が出てきた日には、自分に花まるをあげましょう。
そういうことを少しずつでいいので積み重ねていくことで、きっと本来の感覚が戻ってきます。
そのことを願っています。


周りには理解されない感覚でも、ネット上には理解してくれる人がいます。
誰でもいいので今の考えを発することも、そこから抜け出す足掛かりになるはずです。


終わります。また書きますね。

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