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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 105:ロック=「白人によるエレクトリックなブルーズ」といったイメージを形成した貴重なミック・テイラー参加時代のストーンズの映像『Ladies & Gentlemen The Rolling Stones』(1973)

「ロック」という言葉を聞いて、多くの人が思い浮かべるのはビートルズよりもむしろローリング・ストーンズであろう。ビートルズはポップ(=アイドル)であり、また後期は前衛的過ぎた。アメリカで差別されていた黒人たちがブルースを生み、ジャズを生み、ファンクを生んでいったように、イギリスにおいて差別、というか下に見られていた労働者階級がロックを生んだ。そしてその中産階級たちがロックを生む際に頼りとしたのがブルースでありソウルである。そう、ローリング・ストーンズはロックバンドであると同時に白人によるブルースバンド、ソウルバンドなのである。

しかし、創立時のリーダであるブライアン・ジョーンズはそのような立ち位置に満足しなかった(というかできなかった)。ビートルズがインド音楽や電子音楽に影響を受けたように、ブライアンもその方向、つまりは前衛側へと進んだ。しかし、それは他のメンバーとの軋轢も生んだ。残りのメンバー(ミック、キース、ビル、チャーリー)とて、それが理解できなかったわけではない(事実、その方向に進んだ時期もある)。しかし、そのブライアンの脱退と死は、残されたメンバーに自分たちの方向性、自分たちのオリジナリティを改めて意識させたと言えるであろう。そう、俺たちはブルースバンドだ。白人によるブルースバンドだ、という意識である。70年代初頭、ブライアンに代わりミック・テイラーが参加していた時代の演奏は特にそれを感じさせる。そしてその時代の貴重な映像がこの『Ladies & Gentlemen The Rolling Stones』(1973)である。そして、こういった貴重な映像をさらりと流してくれるのがアマゾンプライムビデオの魅力でもある。

とにかく、これがロックだ!これが俺たちなりのブルースだ、としか言いようがない最高の演奏であり、最高の映像である(映像の粗さも含めて)。確かにこのステージではバンドとしてだけでは出せない厚みを出すためにホーンセッションを加えてはいる。しかし、シンプルイズベストというロックの精神は失われてはいない(ここが最新の機材を使いステージでは再現できない音楽を作って行った後期ビートルズとの違いでもある)。俺たちはロックバンドだ、という思いは俺たちはライブバンドだ、俺たちはツアーバンドだ、という思いとも通じる。恐らくそれがビートルズ解散後に改めてストーンズが捉えた自分たちの立ち位置でありポジションなのだろう。この後、ミック・テイラーが降り、代わりにロン・ウッズが参加するようになり、ストーンズもライブレベルからスタジアムレベルのスーパーバンドへとなっていくのであるが(その意味でも、ミック・テイラーは派手さには欠けるが、ロックの野太さがある)、とにかくその前段階の、スーパーバンド=ビッグビジネスのバンドとなる前の70年代初頭のストーンズの魅力がこの映像には詰まっている。ストーンズファンならずともロックファンならずとも、音楽ファンであれば、必聴であり、必見である。とにかくお薦めの1本である!

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