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東京を殺す「東京一極集中」

概要:都市部への集中、地方の衰退は、都市部の勝利ではなく、都市の失敗(少子化)を意味し、持続不可能なのでは、という話です。

「東京一極集中」は東京には良いこと?

「東京一極集中」、「地方の衰退」が問題だと言われて久しいですが、当の東京の人や、都市部(京阪神など)の人はそれほど危機感を持っていないんじゃないかな、と感じることがままあります。

「田舎に魅力が無いから、都市が魅力的だから、一極集中は起きて当然」

「東京一極集中や都市集住は、効率的な社会を生み出す」という意見もあるようです。

正しい部分もあると思います。
それは平均所得や企業集積などで都市が経済的な魅力を持っているという部分ですが、その点は指摘するまでもないと思うので、他の記事に説明を譲ります。

この記事では、「都市発展・地方衰退モデル」容認論が見落としてしまっている部分に注目したいと思います。
つまり、そのモデルでは持続可能ではない、都市部と地方が共倒れになるという部分です。

都市の欠点:子どもが生まれない

では、見落としてしまっている部分とは何か。
それは際立った少子化です。

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出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H27/h27/html/b3_2_2_2.html

このグラフでは、白に近いほど生まれる子どもが少ないことを示しています。
日本の主要都市圏である関東圏、近畿圏で出生率が低いことが見て取れます。

別のグラフでも、出生率の低さを見ることが出来ます。

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出典:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2018/30pdfhonpen/pdf/s1-6.pdf

青い棒グラフで示された地域が、生まれる子どもが少ない地域と言うことが出来ます。
ここでも、関東圏、近畿圏の出生率の低さが見て取れます。

地方が都市部の人口を支えている

生まれる子どもは少ないのに、都市部では人口が減っているわけではありません。

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出典:https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2017np/index.html

このグラフは、青い都道府県、いずれも都市部の地域が人口を維持できていることを示しています。

なぜでしょうか?
それは地方から都市部への移住があるからです。

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出典:https://www.stat.go.jp/data/idou/2018np/kihon/youyaku/index.html

生まれる子どもが多いのは地方ですが、このグラフを見ると地方からは人口が流出していることが分かります。

逆に人口が増えているのはどこか、つまり地方からの移住先はどこかと見ると、関東圏が際立って多いことが分かります。

この移住が、子どもの生まれない都市部が人口を維持できている理由だと考えられます。

地方が都市部へ人材供給することによって、都市部は自らだけでは減るはずの人口を維持できているのです。

地方と都市は共依存

このまま地方が疲弊し、支えとしての機能が衰えていくとどうなるか?

都市部への人材供給が細り、都市部は働き手不足になります。
業容拡大したくても、人がいない。
雇用拡大で現場の負担を減らしたいけど、人がいない。

改善のチャンスがあるのに、その手段が制限されている。
それはいわば、車があるのに運転手がいないようなものです。

運転手を供給してくれていた地方が衰退するということは、都市部がいかに素晴らしい車であったとしても、いずれストップしてしまいます。

「東京一極集中」是正は東京のため

上記の話は、都市の発展と地方の衰退というアンバランスさの顕著な例である「東京一極集中」にも当てはまります。

地方からの人材供給が無ければ、いずれ東京の発展を殺してしまう可能性があるからです。

地方の発展を助け、衰退を食い止めるべき理由は、「地方が可哀想だから」ではありません。
地方からの人材供給に支えられる東京にとってもメリットがあることなのです。

参考記事

この記事を書くにあたって参考にしたウェブサイト等です。
この記事では簡略にするため統計などの論拠は最低限にしていますが、より詳細な情報を知りたい方は、下記のウェブサイトをご覧になると良いかと思います。

OECD テリトリアル・レビュー「グローバル経済における都市の競争力」日本語要約
https://www.oecd.org/gov/37840092.pdf


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