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くぼっちの「ワンルームから宇宙をのぞく」

昨日、 劇団しおむすび時代の教え子である、久保勇貴の著書を買いに行きました。

東大を卒業し、JAXAの宇宙研究所研究員である彼は、日々エッセイを書き記しており、それをまとめたものが書籍化されたのです。自分の教え子が大手出版社から本を出すなどはじめての事だったので、自分のことのように嬉しく、演劇とは全然関係ありませんが、今日はここで彼の話をしたいと思います

彼と出会ったのはPlatform主催の学生シアスポです。学生が集まってチームを組み、インプロによる対決を行う。その企画に指導者の1人として関わっていました。僕はその中の1チームの指導とケアを主に担当することになりました。そのチームにいたのがくぼっちこと、久保勇貴でした。 当時、彼は東大の学生でしたが、持ち前のユーモアとどこか抜けてる脱力感で、とても周りに愛される人でした。 その後、何度か僕の劇団のショーにも出演する事になり、そのまま劇団員になったわけです。

劇団しおむすびは当時、2年での卒業制度とっていました。学生サークルと同じような感じですね。「2年間は面倒みるけど、その後の身体については自分で決めてください」と言うスタンスをとっていました。しかし彼は1年経ったある日、僕を食事に誘い、劇団を辞めたいと言ってきました。

彼はこのように語りました。

「僕は忍翔のもとでインプロをやったことで、自分に素直であること、自分のやりたいことをやることの大切さを身をもって実感することができた。そしてその経験が積み重なったからこそ、やっぱり僕は宇宙飛行士になりたいんだと言う自分の小さい頃からの夢を捨て切れない自分にも気づいた。インプロと勉強を両立することもできなくは無いかもしれないけど、やっぱり自分の夢を追いかけたいだから劇団をやめます」

僕は学生の頃からインプロを教えているが、そのモチベーションは、別にみんなにインプロを一生続けてほしいとか、プロフェッショナルになってほしいとかそういうことではなく、その人の人生がよりよく変わっていけばいいなと言う思いの方が強く、彼の申し出はまさに自分の思いを体現してくれているかのようで、とても嬉しかった。

だから僕はこう言った

「わかった。じゃあ1つだけ約束。やめたら二度と戻ってこないでください」

その年の年度末、毎年恒例の卒業式があり、2年の期間を終えた2期生たちとくぼっちが一人一人が最後の言葉を思い思いに口にした。

僕はその時の彼の言葉が深く心に残っている。

「僕はインプロに出会ったことで、自分のやりたいことを見つけることができました。だから僕はインプロに出会ったことで、インプロをやめることが出来ます。ありがとうございました」

そんな乙な言葉を残せる、彼が日本全国に向けて本を出版した。中身は彼のユーモアと文才がたっぷり詰まった、知的で面白く、そして優しさのあるエッセイだ。

ぜひ書店で手に取ってみてください。


2期生たちと僕とくぼっち(一番右)


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