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渡航前に、今のインプロ観をまとめる

今週土曜(7月29日)に、僕はカルガリーに旅立ちます。
インプロの権威であるキース・ジョンストンの作った劇場「ルースムースシアター」に行き、そこのディレクターであるショーン・キンリーと共に2ヶ月間インプロバイザーとしての修行を積みます。
他にも世界中から次世代を担うインプロバイザー達が集まり、少人数でショーンの下でインプロを学び、時にはルースムースでのスタッフワークやショーに出ながら過ごします。まさにインプロ漬けの毎日です。楽しみ♪
この2ヶ月を経たら自分のインプロ観が変わると思うので、現状の自分のインプロ観を記録として残しておこうと思い、書き始めました。ノープランで行き当たりばったりで書きます。

インプロ未経験者と、2人で、長くやるのが好き

最近の僕のパフォーマンスはというと、インプロ未経験者と2人でやるショーが多いです。その日来たお客さんを舞台上に上げて作る「Shall We Impro?」や「30SHOW」、インプロ経験のない俳優さんと作る「withOSHOW」なそ、どれも即興二人芝居です。長さは短いもので15分程度、長いと60分ぶっ通しで作ります。

↓15分×3作品の「30SHOW」↓

↓60分一本勝負の「withOSHOW」↓

未経験者の方が未知

まずなんで未経験者とやるかというと、その方が未知だからです。
インプロ経験者とやると、なんとなく「インプロってこういうものだよね」という枠組みを感じてしまいます。もちろんインプロはもっと自由なものなのですが、今までやってきたことが自分の枠に、セオリーになってしまって、今一つ未知に行けない感覚を味わうことがあります。構えたところにボールが来る感じです。それはやりやすさでもありますが、段々と僕はそんな交流に飽きてきていました。
それに対して未経験者だと、どこにボールが飛んでくるかわかりません。なので一瞬一瞬が未知です。自分がやったことない体制で捕球したり、なんとか当てて返すだけという時が多々あります。でも、だからこそ今まで行ったことない展開や瞬間に出会えることが多いのです。
それに、未経験者相手の方が、僕は一番高いパフォーマンスを発揮していると思います。なぜなら相手に100%集中するからです。相手が慣れている時、ちょっと自分のことを考える余裕が出来てしまいます、お互いに。その余裕が自意識を生んでしまい、結果的に相手や今この瞬間を見逃してしまうことに繋がります。ところが相手が未経験者だと、そんなことする余裕はありません。相手の一挙手一投足、セリフや行動の1つ1つを受け取る必要があります。じゃないと分裂して訳わかんないことになるし、相手を困らせてしまいます。この時の自分は、結果的に自意識から解放され、最も潜在能力を発揮しているのです。

2人だと面倒臭くない

インプロは多人数でショーをやる時もあります。ですが、最近それを面倒に感じてしまうのです。自分のパートナーのことだけに集中したいのに、他の人のことやシーンのことまで見なきゃいけない、場合によっては覚えておかなきゃいけないというのがストレスになってきたのです。それに変な話が、長尺でストーリーを作っている時に、自分と関係ないシーンが死にかけている時、キャラクター的に助けに行けない時があります。もちろん他のキャラクターで出て助太刀したり、SEを声で出したりすることも出来るのですが、やりすぎるとそれを気にしてしまう自分がいたりするのです。そんなこんなで色々考えることが人数分増えてしまうことが面倒臭く、最近は2人でのショーしか基本的にやりません。ショートフォーム(短いシーンをMC挟みながら色々見せていくスタイル)や、そんなこと気にしなくてもいいチーム(不条理狂詩曲など)は別ですが。

↓ショートフォーム↓

2人のショーであれば、目の前のパートナーだけを見ておけばいいわけです。わかる人はわかるかと思いますが、マイズナーのリピテションをやってる感覚に近いですね。相手がやってること、言ってることが全てなので、それがとても楽だし、やればやるほどより深い繋がりを得ることが出来るので、楽しいのです。

長い方が深く繋がれる

僕は元々脚本芝居出身で、リアリズム演劇が好きなので、相手とより深く繋がることが好きです。インプロを学びながら、同時にマイズナーテクニックを学んでいたのもその理由です。そして段々とそれらの感覚が繋がってきたように感じます。脚本芝居と即興芝居、インプロとマイズナーを、ほぼほぼ同じ感覚でやれるようになってきています。より深い繋がりを持つことが出来るようになってきました。そしてそれを体験するには、3分程度の短いシーンよりも、10分以上やるような長いシーンの方が良いのです。もちろんインスタントでコメディチックなシーンも好きですが、やはり自分が何をやり続けていきたいのかというと、相手との関係性を深めていくドラマを作りたいと思っています。

↓そんなドラマを作るユニット「シコウ品はいつもモノトーン」↓

自分のインプロしか信じていない

これは大いなる誤解を招くと思いますが、そんな覚悟を持ちながら発言します。まだ日本ではインプロへの誤解や偏見が蔓延っています。無茶振りをするだけだと思われていたり、身内ウケだと思われていたり、くだらないネタ合戦だと思われていたりします。これはそんなショーを見せてしまった人の力不足、もしくはそんなに見てもいないのに想像だけで批判してる人の無知の責任だと思います。もちろん僕も過去を振り返ればそんなショーを何度か、何十回か、やったことがあります。しかしここ最近の、少なからず上記の方針に切り替えてからは、僕のショーを観てそんなことを言う人はいません。むしろ「今までインプロ嫌いだったけど、好きになった」「これを最初に見ちゃったら他のやつ見れなくなりそう」と言われることの方が多いです。
ついこないだまで、インプロ界を変えていこう、インプロに対する人々の認識を変えていこうと意気込んでいましたが、最近ではそんなこと考えなくなりました。そもそもインプロ界なんてものが枠組みとして何となくあるからそんなに広がっていないし、プレイヤーが大して成長してないんだと思うし、むしろ壊していくべきものだと思っています。それに僕の手の届かないところでやられているインプロショーの評判のことなんかどうすることも出来ないし、面白くあってくれと願うことしか出来ません。だから僕は自分のパフォーマンスをいかに良くするかを考えることしか出来ません。だからインプロの評判というよりも、忍翔のパフォーマンスの評判が良くなることを考えています。
一見冷たい考えのように思えますが、実際のところそれしか出来ないと思います。結局自分の手の届く範囲しかどうすることも出来ない。インプロの良い評判も悪い評判も、いろんなところから届くわけで、それをコントロールすることは出来ない。だからインプロという枠組みで考えるのをやめた方がいいと思うのです。インプロというか忍翔、人それぞれのパフォーマンスがどうかという話。たまたまスタイルがインプロで同じかもしれないけど、それは関係ない。皆がプレイヤー個人として、所によっては団体やチームとして、評価されていってくれるのが一番良いなあと思います。

どうすれば良いインプロバイザーを育てられるのか…答えは「わからない」

自分のパフォーマンスのことはそのように考えています。じゃあ指導者としてはどうかというと、最近は第23回手探り期に突入しています。つまり「どうやったら良いインプロバイザーを育てられるのか、わからない」っていう時期です。
インプロの権威であるキース・ジョンストンですら、生涯通して「インプロはどう教えていいかわからない」と言っていました、自分で作ったくせに。でも同時にこうも言っていました。「わかってしまったら、私はもう教えていない」と。
インプロが未知への旅であると同時に、インプロバイザーへの道、指導者への道も未知なのです。未知の道です、おおー。僕は何度もその答えを出しましたが、同時に何度も捨ててきました。答えが出てしまったら、そこで止まってしまうんだと思います。多分ずっと先があるし、終わりがない、ひょっとしたら後退すること、止まることすら良いことなのかもしれない。事実、インプロをしばらくやってない人が久々にやってめちゃくちゃ良いパフォーマンスをしたり、先述したように、未経験者が素晴らしいパフォーマンスを発揮することもあります。
キースも言っていましたが、インプロは禅と同じです。ひとつの相にこだわらない無相。一処にとどまらない無住。ひとつの思いにかたよらない無念の心境なのです。そんな無責任なと思うかもしれませんが、事実そうなので仕方ありません。答えを知ることではなく、それを求め続ける哲学的なプロセスこそがインプロの道なのだと思います。

そんな想いを携えながら、本日最後の指導に出向きます。あ、一旦の最後ってことね、10月に帰国したらバリバリ教えますよ。ショーもやりますよ。でもこの時の僕とは変わっていると思います。
僕には自分に対するこだわりがありません。それが自慢でもあります。昨日まで言ってたことを「全部間違いでした」と言っていつでも開き直れるのです。探求しているのは、人をより楽しませること、自由にすることです。自分がどう在るか、何をするかは関係ないのです(これもひょっとしら変わるかもしれませんがね)
しばらく対面で会うことはないかと思いますが、少しでも繋がっていたい人は以下のツールを使ってもらえると大変嬉しいです。というわけで、またいつか笑顔でお会いしましょう。

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