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第35回 「ドローイン」と「ブレーシング」

今回は「ドローイン」と「ブレーシング」についてお話ししたいと思います。

まずはじめに、ジュニアを含めたアスリートやアンチエイジング目的、健康増進などすべてのトレーニングをされている方々に共通して言えることは

「正しい姿勢と動作でトレーニングをする」

このことが安全でより効果的に物になり、大切なことになります。 
そして「正しい姿勢と動作のコントロール」で大切なのは「コア」になります。

「コア(体幹)=Lumbo-Pelvic Complex(腰椎−骨盤複合体)の安定性」

が、必要不可欠であり、このコアを安定させる代表的なトレーニングとして
ドローインとブレーシングがあります。

●ドローイン(Drow-in)

 ・腹式呼吸を用いて下腹部を凹ませるトレーニングです。
 ・腹横筋を選択的に活動させることが目的のトレーニング。
 ・ホローイング:Harrowingと呼ばれることもあります。
 ・腰痛患者および腰痛の既往歴のある人に腹横筋の筋収縮の遅延
 (フィードフォワード機能の低下)が起こる事に対する改善トレーニング
  

●ブレーシング(Bracing)

・ドローインによる腹横筋に加えて外腹斜筋・内腹斜筋を意識的に収縮させ
 腹筋群全体を収縮させるトレーニングです。 
・非常に薄く発揮トルクの少ない腹横筋(ドローインによる腹横筋の収縮)
 だけでは腰椎骨盤値の安定性を得る事は出来ないという仮説から
 提唱されたトレーニングです

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腹横筋は他の筋より先に収縮を起こし(上肢運動0.03秒前・下肢運動0.11秒前)
脊柱の安定性を高める事でヒトは四肢を動かす事が可能と言われています。
この事を腹横筋のフィードフォワード機能と言い、腰痛患者や腰痛の既往歴のある人の腹横筋のフィードフォワード機能が低下し、適切な腰椎骨盤帯の安定化が出来ないという報告があります。
適切に働かない腹横筋は腰痛の原因やそれに伴う不定愁訴の原因・代償動作の原因となるため、ドローインはリハビリテーションの中で腰痛対策のトレーニングとして腹横筋の再学習の手段として多く用いられています。
 しかし、様々な研究によると腰椎を安定させる目的においてはドローインだけでは不十分でブレーシングの方が効果的であるとする報告もあります。

これを踏まえると

ドローインは腰痛などによって極端に腹横筋が弱化している場合やブレイシングの導入段階に実施すべきトレーニング」
ブレイシングはドローインによる腹横筋の収縮が意識的に正しく行える上で、
コアスタビリティトレーニングの難易度を上げる準備や複雑な動作の準備として実施すべきトレーニング」

と言えるかと思います。
つまりドローインは基本であり、主にリハビリテーションで実施し、誰しもが出来なくてはいけない事。
ブレイシングパフォーマンス向上のベースとして身につけておくべき事と言えると思います。
アスリートの場合、偏ったトレーニングや局所オーバーユースによって相反抑制により腹横筋を正しく使えていない場合も多く、まずはドローインによる腹横筋の選択的収縮を正しく行えるかをチェックする必要があります。

▼正しいドローイン

腹横筋を意図的に収縮させるには腹式呼吸を用いて腹部を引き込む事です。
徒手で腹横筋の収縮を確認、腹横筋は上前腸骨棘から内側に2横指下側に2横指付近で触診する事が出来、正しくドローインが出来ている時に腹横筋の収縮を感じる事が出来ます。

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ドローインは仰向けから練習を開始します。
何故かと言うと腹横筋の収縮方向に重力がかかり、腹横筋の収縮を手助けしてくれるからです。仰向けで適切なドローインを身に付けられたらヒトの発育発達の順番と同様に腹臥位→四つばい位→座位→立位の順番でドローインを正しく行えるようにトレーニングします。これらの方法を用いて腹横筋が意図的に適切に収縮せる必要があります。感覚をつかむまで非常に難しいですが根気よくトレーニングする事が大切です。

▼正しいブレーシング

ドローイングが出来るようになったら腹横筋だけでなく外腹斜筋・内腹斜筋を意識的に収縮させ腹筋群全体を収縮させます。
ドローインが正しく出来ればこのトレーニングは簡単に出来ます。
ドローインと同様に仰向けから始め腹臥位→四つばい位→座位→立位の順番で正しくブレーシングが出来るようにトレーニングします。

●まとめ

・ドローイン :腹横筋の弱化、ブレーシングの導入段階やリハビリに行う

・ブレーシング:高強度のトレーニングや複雑な動作の準備段階に行う
        ※ドローインが意識して行えるという前提

・ドローイン :リコンディショニング・プレハビリティ

・ブレーシング:パフォーマンスアップ

とうことになります。
競技アスリートには偏ったパターンオーバーロードや局所オーバーユースによる、相反抑制により腹横筋のスイッチがオフになっている場合もあり、その場合はドローインによる腹横筋の活性化によってコンディションとパフォーマンスが回復する効果もあります。
トレーニングはそれぞれの目的と効果を理解して、必要に応じて使い分けることが重要です。

次回はコアを意識した状態で上肢と下肢の協調性・連動性を高めていくトレーニングについてお話ししたいと思います。

広崎 哲也/Tetsuya Hirosaki
鍼師・灸師・あんま・マッサージ・指圧師
明治大学柔道部トレーナー(2002)
NTT -G Fukuokaラグビー部トレーナー(2003〜2013)
日野RedDolphinsラグビー部トレーナー(2014〜2016)
SuperFormula トレーナー(2013〜)
ボディケアマネジメント講師
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