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お婆ちゃんの指令③

最近よく、KちゃんのLineに、お母さんから”至急、連絡されたし!”というメッセージが入る。

面倒臭そうにしつつも、いそいそとお母さんへ電話をかけるKちゃん。

Kちゃんとお母さんとは、長年の確執があり、『ずいぶん苦しめられた。』とのこと。でも、話を聴いていると、単に性格が真反対なだけのようだった。

それが近年和解なさり、今や一番仲が悪かった子であるKちゃんに、何でも相談しているらしい。

で、話は、認知症のお父さんが悪友に洗脳されてお金を湯水のように使ってしまうとのこと。このままでは家も財産も無くなってしまいそうだという危機。

こういう時のこの国は、決して女性や子供を守ってはくれない。軽い認知症くらいだと、妻がその所業にストップをかけることが出来ない。妻の方には何の権限もないのだ。税理士や不動産屋さんに認知症だと事情を話してもダメ。法律的にも旦那さんから権利を奪うことは出来ない。

そして、まだキャッシュカードを作れる能力はあるわけだから、隠したり取り上げたところで、また作る。下手するとその請求分がこちらへ来る。

それを諭そうとしたところで『俺に説教するのか』と意固地になる一方だ。

何という話だ・・・と思いつつ、全部聞こえる。だって、すぐそこで話しているし、電話の向こうのお母さんの声もデカいんだもん。

もう、どうすれば良いの、それ。という状況だ。

しかし、Kちゃんは、いつもの低めのトーンで『うんうん。』と聴いていたかと思うと、そのままのトーンで『まず、〇〇税理士へ電話をして○○という弁護士を紹介して貰って。あと、中野の物件を今すぐ売りに出して。離婚するにしても、相続税がかかかるから、あれはいかん。なまじマンションの家賃収入が入るから悪い友達と飲みに行くわけだから。それから、今住んでいるそこだけどね、家賃15万は今の状況では高い。払えなくなるから、もっと安いところへ引っ越して。払えなくなった分がお母さんのところへ来るから。ああ、あと、引っ越すことをお父さんに話すのは、前の晩。それまでは黙っていて。あと、それから・・・etc』。

こんな不測の事態だというのに、何という頭の回転の速さ。この人、いつ何時、誰が相手でも戦えるんだろうなあ。この低いトーンのままで。

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私は、聞こえてくるだけで目が回る。星の数ほどある私の欠点の一つは、あまり金銭に興味がなく、さらには、重度の面倒臭がり屋ということ。

そんな大変なことを、考えたりやったりするのなら、そして、そんなに酷い仕打ちを受けるくらいなら、とっとと別れて自分で稼いで生きて行く。←単に考えるのが面倒だというのと、ただでさえ少ないエネルギーを争いに使いたくないというだけ。

と、そんなことを感じていたところ、突然、こう聞こえた。『Ohzaさんは、何て言ってる?』と。

え?わし?

『離婚するのは良くない?って言ってる?Ohzaさんに訊いて。お婆ちゃんは離婚しない方が良いって言っていた?』

このお婆ちゃんという人物は、数年前に他界され、先日墓参りに行ったばかりだが、生前にはお会いしたこともない。本来ならその意向を訊けるはずもない。(夢以外では。)

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でも。

あの日、栃木の曇り空の下にあった墓石。その旅の話は、ついこの間、ここに書いたけれど。その姓に感慨深く尊いものを感じた。今でも、どう言って良いのか分からないけれど。

この○○家の人たちの多くが、早逝してしまう。すぐに神様に呼ばれてしまうから。

もちろん、こんなことは口にしたり、訊いたり出来るはずがないので、黙っていたが、後になって、やはりそうだということが分かった。

それがKちゃんの母方の一族。

そして実は、お父さん方の血が入ることで、沢山居る親戚一族の中で唯一Kちゃん一家だけが、五体満足で、強運だったと、お婆ちゃんは言った。(夢で。)

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私は、あの墓石の前にひざまずいている時、お婆ちゃんが夢で語った物語を思い出しつつ、その姓を見上げてた。

それを説明するのもアレだし、どうしよう?と思ったが、向けられた受話器に、『お婆ちゃんは”離婚するな。孫を使え。”と仰っていました。』とだけ告げた。言っている自分が何の事だか分からないのだが。

『・・・・・。分かった。ありがとう。』と言って、お母さんは簡単に電話を切った。

今は意味が分からないが、これもやがて繋がっていくのだろう。

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今日が良い1日でありますように。

いってらいませ。

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