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金魚の暴君たち

どうでも良い話なのだけど、不思議でならない。
3~4年前からお祭りですくった金魚を2匹飼っているのだが、そいつらに感情があり過ぎる。

当初は小さな網ですくえるほど可愛かった俗に言う餌金なのだが、いまでは『フナですか?』という程度のサイズになっている。
本当は猫を飼いたいのだけど、なかなか良い出会いがないので、せめて金魚くらいなら、それにどうせ早死にしてしまうのだろう?魚だし・・・と軽い気持ちで飼い始めたものの、これがなかなか手がかかる。

一日中餌をねだるのは良いが、そのねだり方がまるで犬。喜怒哀楽も顔に出る。魚なのに。

相方と二人で旅行に行く話などをしていると、怒り狂ってはねまくる。

水槽の前を素通りしていると、その昔よくヤンキーの皆さんにやられたときのようにハッキリと舌を鳴らしてくる。しかも、連発で。金魚に舌があるのかどうかは知らないが、とにかく同様のかなり大きめの音を響かせてアピールしてくる。
タンタン鳴らしながら『おいおい!マジで通り過ぎんのかよ!』と水槽ギリギリまで高速でついて来て壁にぶつかっている。あほか。

金魚は大食漢なので、水の汚れは早く結構な早い周期で水替えを強いられる。しかも、2匹の仲が悪くて一緒にすると死ぬまで戦うのでわざわざ45センチ水槽をそれぞれ一個づつ与えなければならない状況。

大きくなってしまったので、もう少し大きな水槽にしてあげないと可哀そうかな?と言うとKちゃんに止められた。『やめなさい。ますます大きくなってキリがないから。』と。

Kちゃんが近づくと、イルカやシャチがするように相当量の水をぶっかける。Kちゃんが水替えをしていると頻回に腕を連打して来る。バケツに移し替えようとしても、たくみに逃げて決して網に入らないので、いつも『この野郎ーー!』というKちゃんの声が聞こえて来る。

ところが、どれ・・・と私が水槽に網を入れると瞬時に『はい。』と網に自ら入って来るため、これまたKちゃんを怒らせる。『なんだ!それ?人によって態度を変えるな!』
と、怒鳴ってはまた水をかけられている。
ああ、そうだ。この網も、段々大きくなるので3回買い替えた。

旅行の間はKちゃんのお子さんに餌やりをお願いしているのにも関わらず、帰宅すると水底にぺったりと沈んで全てのヒレを畳んでいる。
うつ病になったかのようにいつまでも微動だにしないので、謝り倒していると、機嫌が直るのか、突然快活に泳ぎ出す。それまでは底にぺったり沈んだ状態でBGMには、あしたのジョーのみなしごのバラードがかかっているので、かなり長いことうざい。

余談だが、魚もうつ病になるそうだ。NHKの番組で隣、もしくは上に捕食者の水槽を置くと、全員水底に沈んで無気力になるという。魚も学習性無力感を陥るらしい。

話は戻るけど、来客でもあろうものなら『誰?それ、誰?』とうるさい。

保険屋さんに『これは、何という魚ですか?』と真面目に訊かれたときはビックリしたが、多分それくらい金魚離れしているのだろう。

何てことはない話なのだが、たかだか魚と言えど、せっかくなので幸せ(?)に暮らして貰いたい。
そう思っていたところ、気が付けば生活が金魚やメダカに支配されている可哀そうな女二人の物語は続く。

言葉を介するようで、かなりの状況を把握しているらしいのだが、ある日突然喋り出したらどうしよう?と思う。それは相当うるさいことになるだろう。プライバシーに関わることもペラペラ吹聴されそうだ。
はたまた今は水槽の中だけなので良いのだが、この空間を自由に泳いでついて来たら、それはそれでこちらが困る。

人間の勝手で限られたスペースで生きていただいているわけだが、最近可哀そうだとは思わなくなって来た。尽くしすぎだろ、私たち。


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