お婆ちゃんの指令②(ふるまい酒だったらしい)
栃木にも宇都宮にも行ったことがなかったけれど、何となく新幹線で行くものなんだろうと思い込んでいた。
ところが、Kちゃん曰く新宿から湘南新宿ライナーなるもので1本で行けるとのことだった。へー、知らなかった。湘南の方へ行く時に使うものかと思っていた。
そんなわけで、のんびりと、のどかな風景を満喫している間に宇都宮へ到着。
何が不安だったのか?と言うと、夢の中でお婆ちゃんが”こういうのと、こういうの。ああ、でも、要らんよ。花と線香だけで良いよ。”と言いつつ、何度も日本酒とお肉のお弁当の映像を見せて来たこと。
しかし、出発の日が近づいて来るに伴い、不安だったので宇都宮の駅のホームページを調べたのだけど、全然そんなもの載ってなかったんだよね。
Kちゃんに聴いても『うーん、観たことない。でも、土産物屋さんにあるんじゃない?うーん、でも、餃子とか、あとは鶏飯とかの方が多いかなあ?』と言う。
牛肉のお弁当だったの!
『いや、そう言われても。』
・・・。ですよね。ごめん。
『でも、お婆ちゃんは、よくそう言う言い方してたよ。”要らんよ、要らん要らん。”って。そのくせ、何も持って行かないと”気がきかん!”と不機嫌になっていたんだよね。』
ずしーん・・・・。← プレッシャー。
ああ、単なる私の妄想のためにこの旅が始まるのかも知れない。
それはともかく、宇都宮駅の中にあるお土産屋さんに真っ先に入ったが、やっぱり和紙で包まれた日本酒なんて無い。お弁当も、餃子とか鶏飯の弁当ばかり。あーあ、やっぱりなあ。
でも、その時、頭の中で『左斜め前だよ。』という声が聞こえた。叱るような強い声。近くには家族連れが居たが、その若いご夫婦と小さな子供の声とは思えなかった。
が、どうしてか分からないけど急いでいた。
左斜め前・・・。
遠くを見ると、その駅ビルの奥の方にスーパーが見えた。自動ドアを二つ抜けて、スーパーに入ってからも、ひたすら左斜め前へ進む。
『どこ行くの?そっちにはお土産ないよ!』
分かっているんだけど、とにかく左斜め前なんだよね。
その途中で左側に花屋が見えた。なるほど、花はあそこで買おう。あとでね。何しろ、日本酒と弁当は急がなければ。
すると、本当に左の角のところにお酒のコーナーがあって、ただのスーパーなのに日本酒が沢山売っていた。酒屋さんみたいに。
あー、でも、白い和紙で包まれたものが全然無い。せめて同じ銘柄のものでもあれば・・・。と言っても、夢の中での黒い文字が今一つぼやけて見えなかったんだよね。見れば思い出すと思うんだけどね。
と考えていたのが長い時間に感じたのだが、それを見ていたKちゃんに、後から聞いたところによると、私がスーパーの方へ駆けて行ってその日本酒を手に取るまで1分もかからなかったそうだ。
あった。
これだった。まさにこれ。残1本。
『でかっ。Ohzaちゃん、こっちに小さいのも売ってるよ。』
いや、一升瓶だったの。
そして、スーパーに並んでいるお弁当を指さしてKちゃんが『これじゃない?』と言う。
それを見て『うーん、惜しい。よく似ているけど、入れ物が違う。』という私。
『いいんじゃない?そこは。』
そうだねえ、そうしよう・・・と答えようとしたその時、向かい側にあったんだよね。ベージュというか木箱に似せた入れ物に入った牛めし弁当が!あった!
これも残一個だった。それで急いでいたわけか。
後は先ほど見かけた花屋さんに戻って、花束を作り、ほら、お線香もあったよ。しかも、この香りだよ。
そこから電車で向かったのは、Kちゃんのお婆ちゃんが居た町。田んぼと畑ばかりのところで、電車は1時間に1本。
Kちゃんの叔父さんが迎えに来て下さり、さらにその車で20分。おうちの傍の畑の真ん中にお墓がある。
叔父さん曰く、その日、近所の人の納骨があって人が沢山集まっていたそうだ。
夢で見たのと同じ砂利道をKちゃんと二人で歩き、お墓へ行った。
余談だけど、立派な墓石の苗字を見てハッとした。Kちゃんの旧姓ってこれだったの?と。『そうだよ。母方はこれ。』と。
ここではどう説明して良いのか分からないけれど、ちょっと感慨深いものがあった。
そして、お墓にお線香とお花をあげて日本酒を置いたとき、何とも言えない清々しい気持ちになったのだった。
お婆ちゃん、Kちゃんを育ててくれてありがとう。この旅をありがとう。
***
今日が良い1日でありますように。
いってらっしゃいませ。
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