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金塊か美か?美なのだ

ミケランジェロ プロジェクト(2014年 アメリカ)

第二次世界大戦中、美術館学芸員や美術史家らが集められ特殊部隊が結成された。
ヨーロッパ各国に侵攻したナチスドイツが歴史的に重要な美術品の略奪を繰り返し、それらは既に夥しい数になっていた。
7人の美術専門家で構成される特殊チーム「モニュメンツ・メン」に託された任務は、ヒトラーが芸術品を破壊してしまう前に奪還するというものだった。

このプロジェクトそのものも、それに従事した特殊部隊である彼らも、当初は冷遇された。その理由は、命すら危うい戦火の中で美術だの芸術だのと言っている場合か?!という尤もらしい理由だったし、最初から多くの理解を得られないことは分かっていた。
観ている私自身も銃弾を浴びながらやることではないな・・・と最初は思っていたほどだ。

ナチスドイツは略奪し膨大な芸術品を隠し持ってもいたが、同時に自分たちの価値観で不要だと判断した多くの歴史的作品を焼き払ったり破壊したりもした。

そんな困難な状況下で命がけで人類の財産である芸術品を取り戻して行った様は圧巻だったし、それが何故なのか?ということを理解して行くにしたがって涙も出た。

印象的だったのは、たった一人の人間が天文学的数字とも言えるもはや価値も測れないほどの貴重な品を我が物にしようとしたこと。

そして、行く先々で歴史的美術品の隠し場所を発見し奪還した時よりも、無数の金塊を発見した時の方が世の人々の歓声や賞賛が大きかったこと。
同じ時代に生きていたら私もそうだったかも知れない。が、実はあの金塊の山よりも価値あるものが、人類が生産してきた「美」だったのである。

美しいものを求め探し、取り戻す物語。その過程でついでに見つかったものは金塊の山だけではなかった。
金の粒の山を見つけて「これは何だろう?」と近寄り触れて、それが人間の金歯の山だと気が付いたときの絶句。

美しきものを守るために、もちろん美しきものに触れることが出来た。見ることも出来た。
しかし、彼らは、同時に醜いものを目にして絶句したのだ。

そして最後に結論を出した英雄たちの物語。

結論というよりは、最初から分かっていたものだ。だから、証明したと言えば良いのだろうか。

私も美しいものを見て生きていたい。ただそれと同時に見るに堪えないものも観るだろう。
その時、心が汚されてしまうのか、どうか?
もしも汚されることのない信念を持って生きられるのだとしたら、それは何故なのだろうか?

この映画はその答えにそっと結論を、いやその答えを証明してくれるような映画だったとも言える。

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