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#07デンマーク・コペンハーゲンのスマートシティと自転車政策@ケンジーズドーナツ

 Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。bicycle frendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。
 Plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしていますので、ご覧ください。(随時更新)

0. Plat Fukuoka cyclingの描く未来
1. Copenhagenize index2019を読む
2. Plat fukuoka books&cycling guide
3. Fecebook ページ
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「Plat fukuoka cycling guide」では本とサイクリングで寄りたいスポットをご紹介する連載になります。第3回は前回の紹介のCopenhagenize Index第1位のコペンハーゲンの都市・自転車政策の本とサイクリングのお供に最適なドーナツ屋さんの紹介です。

○包括的アプローチに基づくコペンハーゲンのスマートシティ 中島健祐(著)『デンマークのスマートシティ‐データを活用した人間中心の都市づくり』(学芸出版社、2019.12)

 本書はデンマークで進むスマートシティに関する本ですが、なかなか実現せず超未来的な映像ばかりがイメージされる日本の「スマートシティ」(1)の姿とは異なるスマートシティの姿を紹介しています。まずデンマークでのスマートシティの定義から引用します。

スマートシティは住みやすさと持続可能性、そして繁栄の実現を目的として、革新的なエコシステムに市民の参加を可能とするしくみを構築し、デジタルソリューションそのものよりも、市民にとって福祉と自足的な成長の手段になるということである。

 つまり、デンマークでのスマートシティの定義がかなり幅広くとられており、市民の生活を向上しつつ、エネルギーや環境問題を包括的な解決策を講じていこうという考えとなっています。本書ではこのデンマークの考え方を「包括的アプローチ(holistic approach)」及び本書タイトルにある「人間中心」(2)の思想と呼んでおり、物事を多面的に捉えて、その問題の本質に迫る方法です。「包括的」とあるとおり、1つの施策目標の達成のために、複数のアプローチが試みられます。それはスマートシティが様々は施策とリンクして実施されていくことになります。

〇コペンハーゲンのスマートシティと自転車政策
 デンマークのコペンハーゲンのスマートシティも様々な施策とリンクをして、包括的アプローチを実践しています。そのリンク先に一つが2025年に世界初のカーボンニュートラル首都を実現する目標「CPH2025気候プラン」です。
 この戦略において、自転車が重要なグリーンモビリティとして扱われています。コペンハーゲン市は今後も人口が増加が見込まれています。一方で、人の移動にかかるエネルギーとCO2の増加を抑える方法として、技術的に電気自動車や水素自動車などは普及手前であることから、自転車が重要視されています。
前回のコペンハーゲナイズインデックスで紹介したとおり、コペンハーゲンにはすでに世界トップレベルの自転車走行環境が整備されていますが、それをさらに推進する目標が「CPH2025気候プラン」で設定されています。CPH2025気候プランで、自転車に関する目標は次の5つが紹介されています。

・コペンハーゲンにおける自転車道を80%増やす
・サイクリストの走行時間を15%低減させる
・自転車で大きな怪我を負うサイクリストを70%削減する
自転車文化が都市環境に良い影響を与えていると考える市民を80%まで高める
・駐輪場に満足する市民を70%まで高める

 特筆すべきは「自転車文化が都市環境に良い影響を与えていると考える市民を80%まで高める」というデンマークの包括的アプローチを象徴している目標です。単なる自転車政策の目標であれば、自転車道を整備距離などで十分なはずです。「自転車文化が都市環境に良い影響を与えていると考える」ということは、自転車利用者だけでなく、歩行者やお店の経営者などの様々な理解が得られているということになると思います。
 この目標は「#01MOVE(移動)→TRANSPORT(交通)by Bicycle!」で掲げた「歩行者や自転車、公共交通がバランスがとれたゆとりある「街路」という「交通という場所」をつくることで、居心地のよい都市ができるということ」ができているということに他ならないのではと思います。

〇自転車道整備だけでない、時速20キロで快適な自転車道「グリーンウェーブ」
 自転車ハイウェイと呼ばれる郊外と中心市街地を結ぶ自転車道ではグリーンウェーブと呼ばれる赤信号で止まることなく時速20キロで走れるように信号を調整する交通システムが構築されています。コペンハーゲンのサイクリストの平均走行速度は時速16キロで、時速20キロは平均より少し早い速度です。
 一方で、ロードバイクなどは早い人では平均速度は時速25キロはザラですので、広いとはいえ早い自転車とゆっくりな自転車との接触事故の発生が懸念されます(3)。そこでどんなに早く走ったとしても赤信号で止まるような仕組みと導入し、誰もが安心して走れる走行環境を整備しています。

 筆者も自宅から天神まで約15キロを50分で自転車通勤していますので、平均で時速18キロになります。途中赤信号でいくつか停車しますので、仮に信号が全て青だった場合時速20キロになるのではないかと思います。私は学生時代、運動部などに所属したこともなく、特段体力に自信がある方ではありません。なので、この平均時速20キロというのは、ちょうど良い速さなのではないかと思います。

 このように自転車道というハードだけではなく、交通システムまでも自転車にやさしい取り組みがあるからこそ、コペンハーゲナイズインデックスで1位を守れていると思います。

〇コペンハーゲン・ノーハウン地区で取り組まれている「〇分間都市」
 ノーハウン地区はコペンハーゲンの港湾地区でかつての工業エリアだったところを再開発し、新たなウォータフロントとして職住一体で4万人が住む予定の地区です(4)。再開発エリアにおいても、「包括的アプローチ」でスマートシティの考えが行き届いています。
 6つあるヴィジョンの1つとして「グリーン交通の都市」として自動車ではなく自転車、公共交通機関、徒歩による、サスティナブルな交通の重視が掲げられ、そのコンセプトとして、「5分間都市」(人が5分間で歩ける距離が平均400mから、この5分を基準としている)を原則とし、自宅、職場、公共交通機関、自転車道、緑地、公的機関、商業施設が短い距離で移動できるような都市を目指しています。そして、市民の移動の3分の1が自転車、3分の1が公共交通機関、残りが自動車であるが、3分の1を超えないことが目標となっています。

 前回のポートランドは都市全域で「20分」で、コペンハーゲンのノーハウン地区はさらにエリアを狭めた「5分」となりました。そのエリアの人口密度により、設定できる「〇分間都市」というのが決まるのではないかと思います。
 ノーハウン地区のような、新たに開発された比較的広大な開発では、意識されていないにけれども、そのエリア内での「〇分間都市」というのが導き出せるのではないかと思います。地区の状況により、このエリアは自転車、徒歩で「〇分間都市」の都市といえるのかを分析していくと、その都市のエリアに応じた、交通政策が考えられるのではないかと思います。
 Plat Fukuoka cyclingでは、少しずつ研究の幅を広げて、この課題に取り組んでいく予定です。

○Plat Fukuoka cyclingでドーナツ片手に"ケンジーズドーナツ"
 人に地球にやさしい「クラフトドーナツ」を作っているのがケンジーズドーナツさんです。お店は福岡市内に多くありますが、日赤通りの南区市民センター前はその中心のお店です。
 先んじて福岡でカーゴバイクを使って、ドーナツの配達などを行なっています。自転車はメッセンジャーさんが配達。またお店の油を車の燃料に再利用するなど、環境配慮にもとても熱心なお店です。
 筆者は揚げドーナツの「奄美ざらめ」を寄る度に毎回買って帰ります。
サイクリングのお供においしいドーナツはいかがでしょうか

◆ホームページ:https://canezees-doughnut.com/

 次々回になる「Plat Fukuoka books&cycling guide」の第5回として次回のコペンハーゲナイズインデックスで紹介するアムステルダムに関する本と、サイクリングのに寄りたいカフェの紹介です。
そして次回は「コペンハーゲナイズ・インデックス2019を読む」として、インデックス当初の1位であり、2019インデックス第2位のネーデルラントの首都アムステルダムについて意訳になります(5)。
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〈参考文献等〉
(1)近年国内で「スマートシティ」に関しての大きなニュースとしては、トヨタ自動車が静岡県裾野市に開発を発表した実験都市「Woven City(ウーブンシティ)」が大きな話題となりました。設計計画にはデンマークの建築家であるビャルケ・インゲルス氏が参画しています。着工は2021年初頭。

(2)「人間中心」というと人間の欲求に従順な選択をとるようにも受け止められがちですが、本間美夏「自転車は地球を救う? 自転車の国デンマークに学ぶ「システム思考」(Forbes JAPAN,2019.12)にて、目の前状況ではなく、その先の視線という意味が正しいと思います。

(3)イギリスのロンドンで整備が進む自転車ハイウェイでは、同様の指摘があり、ハイウェイという名前を使わなくなったそうです。ロンドンの自転車ハイウェイは下記の動画が大変参考になります。「Cycling London’s Bicycle Super Highways(日本語字幕付き)
 仮に日本でも通勤を主体とした自転車道を整備した場合、高速系の人とママチャリなどのユーザとで、同じような自転車同士の軋轢が生まれることが予想されます。日本は先進事例がたくさんあり、これらの経験を生かした走行環境づくりを策定するべきと思います。

(4)福岡でウォーターフロントで開発された住宅地といえば、アイランドシティです。計画人口は2万人で、現在は半分の1万人が住む街になっています。広幅員の自転車レーン(自転車歩行者道)もあり、自転車にやさしいエリアと見えますが、公共交通機関がバスのみのため、自家用車の利用が多いようです。

(5)前回では次回のコペンハーゲナイズインデックスはコペンハーゲンの自転車政策の読み込みとしてお知らせしましたが、予定を変更いたします。

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