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新しい表現が生まれるまで、と出会う。 ーENCOUNTERS @東急プラザ銀座

「なんだこれは?」と、商業ビルのなかで 思わず足を止めてしまう作品たちと出会えます。

「ENCOUNTERS」展 @東急プラザ銀座

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文化庁のメディア芸術クリエイター育成支援事業の「成果プレゼンテーション」として行われるこの展示。

新しいメディアをつかって作品を作り出す「メディアアート」。その新しい表現の作品たちとともに、それらの表現がどう生まれるのか?も体感できる展示です。特に印象に残った3展示をご紹介したいと思います。

《Layers of Light》 / 石川 将也さん

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なんといっても実際の作品を見ていただきたいなと思ったのが、映像作家・石川将也さんによる新しい立体映像装置 ≪Layers of Light≫

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≪Layers of Light≫ / 石川 将也

3層のスクリーンとプロジェクタをつかったとてもシンプルな装置ながら、なんともいえない「気持ちの良い動き」と「如実な立体感」が感じられます。

今回の展覧会に先行して石川さんのオフィス「cog」で開催された「Layers of Light / 光のレイヤー」展を取材させていただき、webメディア「ナンスカ」で記事にさせていただきました

お話を伺う中で特に印象的だったのが、世間の映像メディアの解像度が上がってより「リアル」を求める中で、それとは違った方向で”表現”による面白さを追求するということ。

"メディアの解像度が足りないところに、人間の能力やメディアの特性をうまく生かして補ったり拡張したりして、人間の認知を使って表現を拡張していく表現が面白いと思っています"
”今回のデバイスのように制約のあるメディアの中では、そのように人間の認知を利用した表現ができる。”

会場ではこちらの映像や写真には出ていない新しい表現も。実物を見ないと体感できないこの感覚、是非会場で体験してください。

《ドローンが来ると、風が吹く》 / 大西 拓人さん

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今回初めて知って面白かったのが、「テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみ」を軸に作品制作している大西拓人さんによる「ドローンが飛ぶ際に起こす風」に焦点を当てたプロジェクト《ドローンが来ると、風が吹く》

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《ドローンが来ると、風が吹く》 / 大西 拓人

小型になり音も静かな小型ドローンですが、ドローンから発生する風で風船のような軽いものを持ち上げることができたり、ドローン同士を相互作用させてみたりと、その小さな風の力から生まれるさまざまな「おもしろみ」が映像にまとめられています。

メディア芸術クリエイター育成支援事業のインタビューの中で、大西さんのこんなコメントがありました。

”思い返すと、最初に試したのは、風船をドローンで割ってみるということでした。その際、ドローンがプルプルと震えるのを見て「かわいい」「かわいそう」といった感情が芽生えました。”

映像を見ていると、まさにドローンが生き物のように見えてきて。「ドローンにとって風は感触器として活用可能である」といった仮説からも、その生き物のようなかわいらしさ・面白みが伝わってきます。

《INDUSTRIAL JP – ASMR》/ INDUSTRIAL JP

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日本の産業を支える町工場の工場音を音楽レーベル化するプロジェクトを進めてきたINDUSTRIAL JP。日本の町工場で採集した音と映像を、アーティストがリミックスし、映像作品化するプロジェクト「INDUSTRIAL JP」では、2018年のメディア芸術祭・エンターテイメント部門の優秀賞も受賞しています。(これらの作品はwebからも見ることができます。)

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今回の作品≪INDUSTRIAL JP – ASMR≫ では、日本中の多種多様な工場の音を3Dサウンドとして採集し、無料で公開するほか、高音質の音源の販売も行っています。(会場に置かれたカードのQRコードからアクセスできます。)”音だけに集中することでコンパクトな体制で動けるため、より多くのアーカイブをつくることができる”とともに、それ自体を”素材”としてほかのアーティストが使うこともできるといいます。

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《INDUSTRIAL JP – ASMR》/ INDUSTRIAL JP

その工場で働く人にとっては 仕事場の音であり日常の音だけれど、別の人が聞いたら、作業用BGMにもなるような心地よい音だったりするのかも。 ”エラー音は現場の方にとっては不安な音だけれど、我々はそうは感じない” というような、聞く人による非対称性も面白く感じられます。

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これらのほか、日常の風景、町や公園、森、植物、有機物と無機物を、4Kカメラとウェアラブル・カメラで撮影し、映像を何度も重ねて抽象化するという牧野 貴さんによる《Echoed》や、難読症の人でも視覚からダイレクトに音楽を生み出すことができる方法として生み出した、共感覚を用いて色や形を音楽に変換する≪Colour Chaser≫を量産化するスズキユウリさんのプロジェクトなど、個性的な9つのプロジェクトが展示されています。

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《難読症の為の音楽:共感覚トイ Colour Chaser 量産プロジェクト》/ Team Yuri Suzuki at Pentagram

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《Echoed》/ 牧野 貴

作品そのものだけで無く、その新しい表現が生まれてくる課程も合わせて楽しめる展覧会「ENCOUNTERS」展は、2021年3月14日(日)までです。

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【展覧会情報】 「ENCOUNTERS 令和2年度メディア芸術クリエイター育成支援事業成果プレゼンテーション」

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[プロジェクト紹介展示]
日時 2021年3月5日(金)〜14日(日) 11:00-19:00
会場 東急プラザ銀座3F・4Fみゆき通り側エスカレーター横、10F・11Fパブリックスペース
入場無料/申込不要
出展作家:
石川 将也/大西 拓人/佐藤 壮馬/細井 美裕/牧野 貴/山田 哲平/INDUSTRIAL JP/株式会社ねこにがし/Team Yuri Suzuki at Pentagram

また、採択クリエイターによるコメント映像を、文化庁メディア芸術祭公式Youtubeにて公開予定です。
公開日:3月10日(水)15:00予定



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