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ディスプレイの中でだけ生きる、5億年後の生き物。 ー河口洋一郎 「生命のインテリジェンス」 @ギンザ・グラフィック・ギャラリー

 コンピュータグラフィックによるアートの世界的先駆者、河口洋一郎さん。その1970年代の作品から最新作までを堪能できる展覧会がギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されています。

河口洋一郎 「生命のインテリジェンス」 @ギンザ・グラフィック・ギャラリー

川口洋一郎

 メディアアート関係の書籍を読むと必ず名前が挙げられているものの、私はまとまって作品を見る機会になかなか巡り会えず、なかなか捉え難かったのですが… 今回、ギャラリーの展示ながら美術館での展示だったかと思えるくらい見応えがあって、その活動の流れを知ることができる展示でした。

①ドローイング、立体、映像…様々なメディアで”5億年後の生物”を創造する。

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 会場は1FとB1の2フロア。1Fには節足動物のようなたくさんの不思議な生き物のドローイング、立体、そして映像作品が。

 ここで表現されているのは5億年後の生物。未来の生き物のはずだけれど、太古からずっと存在していそうで、存在しない、カラフルで造形的な生き物。

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 「コンピュータグラフィックによるアートの世界的先駆者」ということで、これらの生き物の形も計算のもとで生み出されているのかとも思ってしまっていましたが、もとはこれらのドローイングから生み出されているのだそうです。

②ディスプレイの中にしか存在し得ない生き物。自己増殖するグロースモデル。

 そして、個人的にとても興味深かったのが、地下の展示。1970年代から2000年代まで、ディスプレイの中にしか存在しない生命体の映像がたくさんのスクリーンとディスプレイの中でうごめいています。

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 昨年、岡本太郎記念館での個展「5億年後の生命体」を見たとき、それらの生き物の造形や動きが面白い一方で、なぜそれを作るのか?という部分がよくわかっていなかったのですが。今回、初めてこれだけの映像をまとめて見て、少しだけそこに触れられたような気がしました。

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 特に、1970年代の初期作品。小さな黒い画面の中に現れてくる白い線は、その先の作品と比べたらとてもシンプルですが、「コンピュータの演算機能を根底から芸術の手法に取り込もう!サイエンスをアートに引き寄せた新たな作品を生み出す事、僕のその思いはミッションになった。」という解説文からも、自分がまだ生まれていない時代で当時どのくらいのことがコンピュータで出来たのかが十分に理解できていないながらも、なぜこの作品を作るの?が導き出されるようで、興奮しました。

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 スクリーンの中の世界は、現実にありそうなリアリティがありつつ、少なくとも今の地球上にはない動きや質感で、引き込まれて見入ってしまいます。

③”ディスプレイの外”へ続く映像作品。

 地下の廊下の展示スペースでは、グロース・モデルとは少し毛色の違う作品の映像も展示されています。

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 例えば実際のダンサーとプロジェクションを組み合わせた作品や、センサーとプロジェクションの映像を組み合わせた作品など。ディスプレイの外に映像を持ち出したり、生態系を取り入れて、リアルタイムに動きを生成していくことなど、例えば今でもteamLabの作品などで、すごい、面白い、と思っていた試みが、この頃から行われていたことを知って衝撃でした。

 私にとって河口洋一郎さんの過去の作品からの流れをみることができる初めての機会だったこともあり、海の底のような暗く静かな空間での展示でありつつも、とても興奮する展示でした。

 3月19日までです。

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【展覧会概要】 河口洋一郎 「生命のインテリジェンス」 @ギンザ・グラフィック・ギャラリー

川口洋一郎

会期:2020年1月30日(木) 〜3月19日(木)
入場料:無料
時間:11:00〜19:00
土曜日は18:00まで
日曜、 祝祭日休館


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