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【オンライン展 公開中】 大正時代の重要文化財建築で楽しむ、 個性豊かな現代彫刻。 / 「気韻生動」展 (明治神宮 宝物殿)

2020年に創建100年を迎えた明治神宮。この明治神宮を舞台に、昨年から開催されている芸術と文化の祭典「神宮の杜芸術祝祭」。昨年より野外彫刻展や美術展などが開催されてきましたが、結びとなる彫刻展「気韻生動」が修復工事を終えた「明治神宮宝物殿(中倉)」で開催されています。

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残念ながら緊急事態宣言を受け、現在は臨時休館となっていますが、オンラインで展示の様子が公開されています。

この記事では、臨時休館前に訪問した際の写真とともに、展覧会の様子をご紹介します。

明治・大正・昭和の時代 をつなぐ 彫刻家・平櫛田中の作品

展示の中心となっているのは近現代彫刻に大きな影響を与えた明治〜昭和期の彫刻家・平櫛田中。明治5年生まれで、東京美術学校(現・東京藝術大学)の教授も務めました。

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≪幼児狗張子≫ / 平櫛田中 (展覧会チラシより)

その平櫛田中は、30歳の時の作品を明治天皇から買い上げを受けたことがあるそう。それが展示の中にある木彫の作品《唱歌君が代》(小平市平櫛田中彫刻美術館蔵)。友人であり、彫刻家の米原雲海が「3畳で制作した作品が宮内庁買い上げになったのは初めてだろう」と語ったというエピソードも。

展示の中でもひときわ目を引くのは、6代目尾上菊五郎が演じる鏡獅子の姿を表した≪試作鏡獅子≫。白い鬘は、木彫なのに繊維で出来ているようにも感じられてしまうのが不思議です。

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≪試作鏡獅子≫ / 平櫛田中 (展覧会チラシより)

≪鏡獅子≫は、1958年から20年をかけて完成させ、完成した際にはモデルの6代目尾上菊五郎はすでに故人となっていた。この作品が完成したときの年齢は104歳… 明治・大正・昭和と激動の時代を生き抜き、100歳を超えても死の直前まで創作を続けたというのは、驚きですね…

平櫛田中の気迫を継ぐ 現代アーティストたちの共演

そして今回の展示では、”平櫛田中の作品を知って・見て・学んだ” という14人の現代アーティストたちの彫刻作品も展示されています。(※ 現代アート作品は撮影可能)

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≪鹿≫ / 土屋仁応

入り口で出迎えてくれるのは、土屋仁応さんによる木彫の≪鹿≫。白く、そして近づいてみるとまるで血が通っているようにも見える肌。そして、柔らかいフォルム。仏像のように推奨のはめ込まれた瞳には吸い込まれるような奥行きも感じられます。

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≪鹿≫ / 土屋仁応

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≪A↔UN≫ / secca

まるでピクセル画のようにも見えるユニークな狛犬は、金沢を拠点に活動するクリエイター集団・seccaによる≪A↔UN≫。なんと15,000枚もの小さな木のピースから組み上げているのだそう。合わせ鏡のようにどこまでも続くように見えるのも面白いですね。

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≪A↔UN≫ / secca (部分)

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≪Throne≫ / 名和晃平

薄暗い展示室の中でひときわ絢爛豪華な雰囲気を醸し出すのは、名和晃平さんの≪Throne≫、ルーブル美術館にあるガラスのピラミッドに展示された作品の1/7スケールの作品です。名和さんが近年取り組む京都の伝統工芸復興プロジェクトは、名和さんが3Dシステム上でデータを制作し、仏師の方々によって木彫、漆塗り、箔押しなどの伝統的な技法で形にするというもの。力学的に再現するのが難しい形状を、仏師の方々の知識と経験で木の目などを工夫して成り立つというのは驚きですね。

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先ほどの作品とは対照的に、一見、何も入っていないのかと思ってしまうような展示ケースの中で、静かにたたずむのは、須田悦弘さんの≪雑草≫と 三沢厚彦さんの≪Insect 2021-01≫。

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≪雑草≫ / 須田悦弘

動物の姿を等身大で表す木彫作品を制作する三沢厚彦さん。今回の等身大のセミは、会場の宝物殿を訪れ、その会場の雰囲気からインスピレーションを受けて制作されたそう。1つの展示ケースの中に展示された2つの作品は、生と死も表すようで、小さいながらも最後に強い印象を残します。

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≪Insect 2021-01≫ / 三沢厚彦

※ 名和晃平さん, 三沢厚彦さんの作品の大型作品の展示も行われた「神宮の杜 野外彫刻展「天空海闊」」のレポートはこちら。

修復後の明治神宮宝物殿(中倉)のお披露目も。

この展覧会の会場は、国の重要文化財に指定されている明治神宮宝物殿。奈良の正倉院を模したという、校倉風大床造りの美しいこの建物は、1921(大正10)年に竣工以来、明治天皇・昭憲皇太后の御物が納められてきたそう。

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今回は、平成29年からの修復工事を終えてのお披露目。かまぼこ型の格天井でつくられた広大な空間に、天井付近の窓から差し込む柔らかい光。まだ建物の一部は工事中ですが、この広大な展示空間はオンラインギャラリーからも見ることができます。

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こちらの展覧会の本来の会期は2021年5月30日(日)まで。緊急事態宣言中は臨時閉館とのことで、再開は難しいかもしれませんが… 個性豊かな現代彫刻が楽しめるこちらの展覧会。是非オンラインでお楽しみください。

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【展覧会情報】 彫刻展「気韻生動」

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会場:明治神宮 宝物殿(中倉)
会期:2021年3月25日(木)〜 2021年5月30日(日)
※緊急事態宣言の発令継続を受け、4月25日より宝物殿の気韻生動展は臨時閉館中です。
休館日:木曜日(但し3/25、4/29は開館)
時間: 10:00~16:30 ※最終入館は閉館時間の30分前まで
入場: 無料
参加アーティスト:平櫛田中、澄川喜一、深井隆、舟越桂、土屋公雄、宮島達男、三沢厚彦、棚田康司、須田悦弘、保井智貴、名和晃平、土屋仁応、secca、小林正人(絵画)、原良介(絵画)


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