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葛西臨海公園で谷口吉生の3つのモダニズム建築をめぐる

東京にある葛西臨海公園は、ディズニーランドの隣に位置し、大きな観覧車で有名な公園です。この公園内にある、日本を代表する建築家のひとり、谷口吉生氏の手掛けた3つの建築があります。この建築を巡り、その特徴を探りました。


▍建築家・谷口吉生

谷口吉生(たにぐち・よしお)は、日本を代表する建築家の一人です。1937年に東京で生まれ、父である建築家・谷口吉郎の影響を受けて育ちました。慶應義塾大学工学部機械工学科を卒業後、ハーバード大学デザイン大学院で建築を学び、丹下健三研究室に所属。独立後は、モダニズム建築のスタイルを追求し、機能的かつ合理的な造形理念に基づいた建築を数多く手掛けてきました。

代表作には、東京国立博物館の「法隆寺宝物館」、愛知県の「豊田市美術館」、そして近年では銀座のランドマーク「GINZA SIX」などがあります。

▍葛西臨海公園でみる 3つの建築

それでは、葛西臨海公園で3つの谷口吉生氏の建築をめぐっていきましょう。

1) 葛西臨海公園展望広場 レストハウス (1995)

葛西臨海公園展望広場 レストハウス

「葛西臨海公園展望広場 レストハウス」は、東京湾の美しい景色を楽しむことができる休憩施設です。

光が美しい透明感のある建物
外壁がガラスの透明感のある構造で、自然光をたっぷり取り入れる設計になっています。建物内部からは、遠くに広がる東京湾や公園の緑を楽しめます。

葛西臨海公園展望広場 レストハウス ファサード

景観との調和
長方形の建物は地下1階、地上2階と低層で、奥行きが少なく、広がりのある形状が特徴です。内部の構造もすっきりとしていて、ガラス越しに建物の向こう側の風景が見えるため、周囲の自然と一体化しています。

駅側から見ると2階建て

ファサードの表と裏で高低差があり、駅側から観ると2階建て、海側から見ると3階建ての建物になっています。

海側から観ると3階建て

直線でできたスタイリッシュな構造
内部は無駄のない空間で、白い壁面に直線的な階段とスロープが配置されています。外壁の柱も細く、光が入るとその影が幾何学的な模様をつくり出し、美しい視覚効果をもたらします。

光と影が美しい建物です

2) 葛西臨海水族館 (1989)

葛西臨海水族館

「葛西臨海水族館」は、1989年に開館した水族館で、東京湾から世界の海の生き物たちまでの多様性を体験できます。子どもから大人まで楽しめる施設です。

巨大なガラスドーム
この水族館のシンボルは、直径約30メートルの巨大なガラスドームです。空に向かって開かれた開放感あるデザインが特徴で、建物全体の中心的存在として視覚的インパクトを与えます。

葛西臨海水族館のガラスドーム

一方で、透明感のある構造体は威圧感がなく、周囲の環境に溶け込んでいます。

ガラスドーム内部

海や森林の環境と調和するデザイン
ガラスドームを囲む巨大な水盤も印象的です。谷口吉生氏の建築では、水盤を使ったデザインが豊田市美術館や鈴木大拙館などにも見られ、ここでもその特徴が感じられます。

海とつながるように見える水盤

特にこちらの建物の向こう側には海があり、建物が自然と海につながるような感覚を生み出しています。

水盤には噴水も設けられています

また、建物自体は高さを抑えられており、周囲の森林と調和するデザインが魅力です。

変化に富んだ空間構成
ガラスドームから館内に入り、地下へと進むと、ドーナツ状の大きな水槽が迎えてくれます。

館内にある建築模型

「旅行するように、動線に沿って様々なシーンが展開する」と設計された水族館内部では、劇場のように水槽を鑑賞できるスペースや、水槽を上部から見渡せる空間など、異なる雰囲気の空間を楽しめます。

この建物もまた、シンプルな直線と曲線の組み合わせが美しいです

3) 東京水辺ライン 葛西臨海公園発着場 (1993)

東京水辺ライン 葛西臨海公園発着場

「東京水辺ライン 葛西臨海公園発着場」は、東京湾を巡る水上バスの発着場で、水辺の風景を楽しむことができる施設です。

シンプルな機能性と、有機的なデザイン
この発着場は、葛西臨海公園展望広場レストハウスに似た直方体の構造を持ち、ガラスで覆われたデザインで周囲と調和しています。

東京水辺ライン 葛西臨海公園発着場 内部

一方で、上部には有機的なアーチ状の白い屋根が特徴です。海に面していることもあり、ポールはヨットの帆をイメージさせ、シンプルな建築の中にリズム感を与えています。

▍まとめ

葛西臨海公園にある3つの谷口吉生建築は、どれもモダニズム建築の機能性と合理性を持ちながら、周囲の自然環境と見事に調和しています。葛西臨海公園を訪れる際には、水族館や公園での体験とともに、これらの建築もぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?

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