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自然・建築・現代アートが共鳴する美術館|COMICO ART MUSEUM YUFUIN(大分県由布市)

大分県にある、美しい自然と温泉で有名な湯布院。温泉街らしいお土産物屋さんが並ぶ通りの脇道に入ったところに、黒い木の外観が印象的な建物が現れます。

COMICO ART MUSEUM YUFUIN 外観

こちらは、現代アートを展示する美術館「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」。2017年に開館し、2022年には展示エリアを拡張。日本を代表する現代アーティスト7名の作品を、落ち着いた建築と、雄大な自然の中で堪能できる美術館です。


▍日本を代表する現代アーティスト 7名の代表作を展示

オンラインで予約し、予約した時間に伺うと、週末でも待たずに入館できました。1枠(20分間)あたり上限は15名なので、ゆったりと観ることができました。(入館後の滞在時間には制約はありません。)

ロゴデザインは原研哉さん

建物のマップを受け取り、2建物、各2フロアの展示室を順番にまわっていきます。

こちらの美術館に展示されているのは、草間彌生さん、宮島達男さん、杉本博司さん、村上隆さん、奈良美智さん、名和晃平さん、森万里子さんという、日本を代表する現代アーティスト・7作家による46作品。

展示されている作品も、そのアーティストを代表するようなシリーズの作品群でした。

村上隆作品 展示室

例えば、草間彌生さんの「南瓜」をモチーフとした作品も、版画からペインティングまで。そして、1960年代から近年に描かれた作品まで、数多く展示されています。

村上隆さんの展示室では、お花をモチーフとした作品を中心とした絵画作品7作品を展示。

左から《マチスへの思い》(2015)、《フラワーボール:鯉/ 丹頂鶴の朱色》(2017)/ 村上隆

日本画の「花鳥風月」などの定番のモチーフと、現代の日本のサブカルやキャラクターの文化を結びつけ、海外のアートの瓶脈を踏まえたアートに昇華させた、村上隆作品の世界を堪能できました。

《かわいい夏休み:見上げると紺碧の空》/ 村上隆 (2016)

杉本博司さんの展示室では、大判の「海景」シリーズの作品5作品に、その海景をガラスの五輪塔のなかに封入した「光学硝子五輪塔」が2作品。

左から《エーゲ海、ピリオン》 (1990)、《カリブ海、ジャマイカ》(1980)、《カテガット海峡、クラベリ》(1996) / 杉本博司

黒い壁面で静かな展示室の中に、異なる土地で、同じ高さの水系線が浮かび上がり、厳かな気持ちになります。

《光学五輪塔》/ 杉本博司

スマホからQRコードを読み取って、無料の音声ガイドを聴けるのも嬉しいところ。アーティストごと、そして建物についてもとても分かりやすく簡潔な作品解説を聴きながら楽しめました。

▍隈研吾建築と現代アートの融合

黒い「焼杉」で覆われたシックな建物。建築家・隈研吾の手掛けたこの美術館の建物は、湯布院の街並みと自然に溶け込む「ムラ」をコンセプトにしたものだそう。

中庭の通路

その建物の中でも特に印章的だったのは、2つの部屋にまたがる草間彌生さん作品の展示室。

2つの展示室が、水盤を挟んでガラスの壁で区切られています。暗い空間の中でそれぞれの展示室、そしてその中の作品が映し鏡のように浮かび上がる、美しい空間です。(本展示室は撮影NG)

美術館は2つの建物に分かれているので、鑑賞の途中で、屋外に出て建物間を移動。その通路には、「八季の庭」と呼ばれる美しいお庭も。

中庭

通路を通り、鋭角・逆勾配の壁と、水盤の美しいもうひとつの建物へ。

COMICO ART MUSEUM YUFUIN 外観
COMICO ART MUSEUM YUFUIN 外観

こちらには、宮島達男さんの作品《Time Waterfall - panel #COM》も。硝子越しに屋外の緑が見える中、まるで掛け軸のように、建物の柱と一体化したディスプレイにデジタルカウンターの数字が移ろっていきます。

《Time Waterfall - panel #COM》/ 宮島達男 (2022)

▍雄大な由布岳を背景に観る 大型の屋外作品

屋内の展示を楽しんだ後は、2Fに移動。こちらでは、屋上の庭園に大型の立体作品が並びます。

COMICO ART MUSEUM YUFUIN 2F ラウンジ

最初に目を引くのは、奈良美智さんの《Your Dog》。雄大な由布岳を背景に、大きな白い犬の彫刻が佇んでいました。

《Your Dog》 / 奈良美智 (2017)

何もかもが大きく感じる幼少期の記憶から生み出されたという大きな犬。視界を遮るビルもなく、作品と自然と静かに対話できるような場所です。

その先には、空から落ちる一滴のしずくがフォルムを変えていくようすを彫刻化した、名和晃平さんの《Ether (lava)》。そして、宇宙をテーマにした森万里子さんの《Eternal Ⅰ》。

《Ether (lava)》 / 名和晃平 (2019-2021)

自然法則の大きなテーマを扱った作品を雄大な自然を背景に観られる面白さとともに、どちらもまるでCGが目の前に現れたような不思議な雰囲気と、自然と不自然さの相反する感覚も感じられるような意味でも面白い展示でした。

《Eternal Ⅰ》/ 森万里子 (2021)

現代アートの作品を、美しい建築と自然と合わせ、ゆったりとした雰囲気で楽しめる素敵な美術館でした。

【MUSEUM DATA】 COMICO ART MUSEUM YUFUIN

URL:https://camy.oita.jp/
住所:〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上2995−1
休館日:毎週水曜日
開館時間:9:30 – 17:00(最終入場 16:00)
入場料:一般¥1,700、大・専門学生¥1,200、中・高校生¥1,000、小学生¥700、障がい者手帳(一般・ご本人のみ)¥1,200、子ども(未就学児)無料

【美術館訪問前に気になるアレコレまとめ】

撮影可否:一部作品を除き可能。(草間彌生作品展示室はNG)
入館予約:予約可能。(オンライン予約の場合、200円割引)
音声ガイド:スマホで聴く無料の音声ガイド有り。(要イヤホン持参)
図録:なし
その他: 専用の駐車場はありません。


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