コンセプチュアル・アートも怖くない?! ー岡山芸術交流2019 (岡山県岡山市)
「コンセプチュアル・アートって、なんだか難しそう…しかも、海外のアーティストばかり… 何点かでも楽しめる作品と出会えたらいいかな…?」
そんな風に意識低めに訪れた岡山芸術交流2019ですが、想像以上に面白いイベントでした。
(隈研吾さんがデザインを担当した岡山駅前のインフォメーションセンター)
1)根源的なテーマを扱った作品
毎年、日本各地で多くの芸術祭が開催されていますが、“芸術祭”とは呼ばないこのアートイベント。作品もコンセプチュアル・アートばかりと、国内の芸術祭とは一線を画しています。
(《癒すもの(水域) / パメラ・ローゼンクランツ)
作品の外観ではなく、アイディアやコンセプトを重視し、目で楽しむよりも頭で楽しむコンセプチュアル・アート。なんだか難しそう。分かるかな…?というのが訪れる前の懸念。
ところが、実際に作品を見て行くと、例えばその国固有の政治的や歴史にフォーカスするような作品ではなく、もっと人として根源的な“生”を扱うようなテーマの作品が多く、アーティストの出身国などの知識がなくても楽しめる作品が多かったです。
テーマにちなんでか、スタッフさんの衣装も白衣風です。
例えば、天神山文化プラザの地下のエティエンヌ・シャンボー《熱》と《ソルト・スペース》。一見無機質な展示室ですが、コンクリートの建物の柱を触ると体温のような温かさ。一方、足元に散っているのは動物の骨。建物が、途端に森の中のような有機的なものに見えてきます。
(《熱》《ソルト・スペース》 / エティエンヌ・シャンボー)
また、1Fでは、部屋全体に設置されたエアシャワーが音楽のようにうなり、中央の磁性流体でできた池では、時折、なにかの生き物が生息するように表面がうごめきます。気配だけを感じる空間は心地よく、いつまでも見ていられるような空間です。
(《ニュー・ヒューマンズ》《フォース・タッチ(からだ)》 / ミカ・タジマ)
…とはいえ、どの作品も解説を読んでみると、深い深い意味が込められているようで結局難しすぎるんですけどね…
2)著名アーティストによるスケールの大きな作品
総合プロデューサーはコレクターとしても有名なストライプインターナショナルの石川康晴さん、総合ディレクターはギャラリー・TARO NASU代表の那須太郎さん、そして、アーティスティック・ディレクターはアーティストのピエール・ユイグ。
ピエール・ユイグ自身の作品をはじめ、世界的に著名なアーティストによる作品が並びます。
特に、印象的だったのが、林原美術館でのティノ・セーガル作品。ネタバレNGだと思うので詳細は書けませんが…まず、他の作品とコラボしたパフォーマンスの導入に驚き。そして、安心してみていられる「見る側」の立場から、強制的に自分が「演じる側」というか、自分の考えを伝えなければいけない側に突然引っ張り出されるというのはかなり強烈な体験でした。
(林原美術館)
作品のスケールも大きく、展示の中心である旧内山下小学校では、校舎全体、体育館、運動場、プールと、それぞれが1つの巨大な作品となり、なおかつ作品間のコラボレーションまで見られます。
(《皮膜のプール(オロモム)》 / パメラ・ローゼンクランツ)
(《ワイルドなシンセ》《安全圏の陰極》 / マシュー・バーニー)
3)近代名建築を使った会場
岡山には見応えのある近代建築が多いのですが、今回の展示会場は、前川國男さんの林原美術館と天神山文化プラザ、岡田新一さんのオリエント美術館…と、会場を巡りながら、近代建築めぐりも楽しめます。
(天神山文化プラザ)
(オリエント美術館)
(林原美術館)
※ 岡山には会場以外にも近代名建築が多く。昨年、岡山の近代建築をめぐったnoteはこちら
数年前まで使われていたという旧福岡醤油建物や、岡山城の濠や楼門なども会場となっています。
(旧福岡醤油建物)
いくつかの会場がありますが、岡山城周辺にコンパクトにまとまっているので、1日で徒歩でコンパクトにまわれるのも嬉しいです。(時間が読めない長〜い映像作品なども少ないので…)
レビューを読んで行むと、それでもやっぱりちゃんと理解できてない部分が多かったなぁとは思ってしまいますが…
でも、コンセプチュアル・アート難しそう!なんていう食わず嫌いを払拭してくれ、また、芸術祭の新しいかたちも見せてくれるようなイベントでした。
【開催概要】岡山芸術交流 2019 IF THE SNAKEもし蛇が
会期:2019年9月27日(金)~11月24日(日)[51日間]
休館日:月曜日(10 月 14 日(月・祝)、11 月4日(月・振休)は、翌日の火曜日休館)
時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
会場:旧内山下小学校、旧福岡醤油建物、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、岡山城、シネマ・クレール丸の内、林原美術館ほか
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