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【数学トラップ】作業のための作業に過剰適応なりがちな件

いつでも有理化?

 当塾では、生徒さんから随時ライン等で質問を受け付けています。ただし、当方の時間のある時、自分である程度考えた上で分からない時に限定。でないとこちらの身が保ちません。

 さて、生徒さんから「三角比はルート有理化しなくても大丈夫なんですか?」と質問が来ました。
 有理化とは、分数の分母にルートがあるときに無理やり有理数にする手続き。高校数学の初めの方でさんざん練習させられ、「有理化しないと気持ち悪い」くらいに染み込んでしまうやつです。

$$
\dfrac{1}{\sqrt2} = \dfrac{\sqrt2}{2}
$$

 こんなやつです。値は一ミリも変わっていません

 生徒さんの質問もごもっともで、あれだけ有理化有理化と騒いでいたのに三角関数とかでは

$$
\cos{\dfrac{\pi}{4}}=\dfrac{1}{\sqrt2}
$$

 と、分母が$${\sqrt2}$$のままでいいと言われても、有理化したくてうずうずするのも分からなくはないです。

基本は放置

 結論的には、どっちでも別に構わないが、基本は放置ですね。
 次の計算が「$${2\sqrt2}$$を掛けろ」になるかも知れないし足し算になるかも知れない。つまりは次の展開を待って、その時にやればよろしいということです。
 有理化の本質は、有理化と逆有理化(こんな言葉は正式にはないけどわざわざ分母を無理数にすることはままあります)を自在に行ったり来たりできる方が何かと便利というだけのことです。

作業に過剰適応の罠

 今回の質問が出た背景には、作業の目的を示さずひたすら手順を覚えることを教わる傾向があります。
 典型的な例として、問題で「式を展開せよ」と言われているのに展開後の式を「あ、これは因数分解しなきゃ」と条件反射的に因数分解して元の式に戻る、それをまた展開するという無限ループ地獄を何度か目撃しています。

 なぜこんなことが起こるのか。
 おそらく、次の点にまとめられると思います。

  • 作業方法を覚えることが目的となっている。つまり、作業は手段にすぎないという認識が得られていない。

  • 因数分解のような作業は、慣れればできるようになり、その都度小さな達成感が得られるのでついやってしまう。

  • 子供たちは、手持ちの武器をとにかく掴んで使う傾向にある。

 これ、一般の仕事にもありますよね。単なる入力作業とか、完成したら一定の達成感があって仕事をした気にもなるし。

 罠ですね、これ。
 作業過剰適応の罠と仮に名付けてみました。

 本来、例えば因数分解なら、その主な目的は$${XY=0}$$の形に持っていって、$${X=0  and/or  Y=0}$$を利用して二次方程式の解を求めることにあること、つまり手段により達成すべき目的を初めに明示しておくことが大事なのではないでしょうか。
 私は、そうしています。そう言われてもピンと来なくても、そのうち分かるようになりますので。

 みなさんは、どう思われますか?


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