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あまり知られていない 大失敗に終わったSF映画

こんばんは ぷらねったです
興行的大失敗に終わった上に あまり知られていない 悲劇のSF映画たち
今回は 大失敗映画の第2弾として「あまり知られていない...大失敗に終わったSF映画」というテーマで そんな作品を紹介していきます


1.ノイズ (1999年)

監督は ランド・ラヴィッチ
製作費は 7500万ドル
それに対する興行収入は 約2000万ドル
若かりし頃のジョニー・デップが主演した SFスリラー映画です
広告費などを除いた単純計算でも 5500万ドルほどの損失を生みだしてしまいました

ある日 NASAの宇宙飛行士スペンサーは 宇宙でのミッション中に交信を絶ちます
NASAの懸命な努力により スペンサーは一命をとりとめて地球へ帰還しますが 地球への帰還後 宇宙空間でともに作業をしていたアレックスは変死し アレックスの妻も自殺
その後 スペンサーは民間企業に転職し 妻のジュリアンと共にマンハッタンの豪華マンションに引っ越しますが 彼の様子がどこかおかしいことに妻のジュリアンは気づきます
夜中にラジオのノイズに聞き入るなど奇妙な行動をとるようになったスペンサーに対し ジュリアンは不信を抱く...というストーリーです


長編映画デビュー作となる ランド・ラヴィッチが監督,脚本をつとめました
7500万ドルという大きな製作費に加え ジョニー・デップとシャーリーズ・セロン出演ということで 大きな期待が掛かっていたことが伺えますが なぜここに新人監督が抜擢されたのかは不明です


作中では『ある宇宙飛行士がミッション中に起きた大きなトラブルを経て地球に生還したあと どこか様子がおかしい』という内容が描かれます
宇宙の描写はゼロに等しく あくまで帰還後の地球を舞台にした物語となっています
主人公は 様子のおかしい元宇宙飛行士の夫と うつ病になった経験をもつ小学校教師の妻
比較的地味な内容ながら スリラー映画らしい不穏な雰囲気が漂うなかなかおもしろい映画なので 個人的には好きです


大きな特徴としては 1968年のロマン・ポランスキー監督による名作ホラー映画「ローズマリーの赤ちゃん」にも通じる部分が描かれており さまざまなオマージュを捧げています
まず シャーリーズ・セロンのヘアスタイルや衣装は「ローズマリーの赤ちゃん」主演時のミア・ファローと酷似しており 出演者の1人であるニック・カサヴェテスの父親は「ローズマリーの赤ちゃん」に出演したジョン・カサヴェテスです
なんならタイトルも似せており あちらの原題が「Rosemary's Baby」なのに対して 本作品は「The Astronaut's Wife」になっています


そんな 過去の作品にリスペクトを示しながら 特殊な設定を活かした本作品
心理描写の光る SFスリラー映画となっています


2.ソルジャー (1998年)

監督は ポール・W・S・アンダーソン
製作費は 6000万ドル
それに対する興行収入は 約1450万ドル
カート・ラッセル主演の SFアクション映画です
広告費などを除いた単純計算でも 4550万ドルほどの損失を生みだしてしまいました

舞台は 誕生と同時に将来を決められてしまう 近未来の社会
戦士に選ばれた者は 人間の心を剥奪され 史上最強の殺戮精鋭部隊"ソルジャー"の一員となるべく徹底教育を受けます
5歳の時点で 脱落した者は抹殺され 17歳まで生き残った者だけが 戦士の誉れとして 頬に戦士番号が彫り込まれることになっていました
ベテランソルジャーの一人であるトッド3465は戦果を挙げてきましたが 遺伝子操作によって開発された次世代ソルジャーとの戦いに敗れ 瀕死の重傷を負ったまま 宇宙の果ての惑星に放棄されてしまう...というストーリーです


「イベント・ホライゾン」などで知られる ポール・W・S・アンダーソンが監督を務めた作品です
製作陣は豪華で 脚本は「ブレードランナー」,「12モンキーズ」のデヴィッド・ピープルズ
製作総指揮は「メジャーリーグ3」のジェームズ・G・ロビンソン
その他「アベンジャーズ」シリーズにも関わるスタッフが複数クレジットされています


1984年の「ターミネーター」に影響を受けて脚本が構想されたという本作品では 寡黙でタフな主人公が描かれます
どれぐらい寡黙なのかと言うと 映画全体の80%以上のシーンに登場しているにも関わらず 104個の単語しか喋っていません
終盤に近付くにつれて 少しだけ喋るようにはなりますが さすがに無口過ぎる気がします
序盤に登場するソルジャーを選抜する描写は まさにディストピアです
子どもたちが同じ服装で訓練に挑み それを監視し 評価する大人たち...この辺りの描写はSF的で なかなかおもしろい雰囲気です
脚本は終盤に向けておもしろくなくなってしまうのですが 全体的にセットデザインが妙に凝っており ソルジャーの訓練施設や荒廃した惑星の様子など なかなか見ごたえがあります


主役のトッド3465を演じたカート・ラッセルは 撮影期間の初週に足首を骨折しました
そのため まずはカート・ラッセルが横たわっているシーンを撮影し 次に座っているカート・ラッセル そして立っていますができるだけ動かないカート・ラッセルという順での撮影が行われています
この骨折の原因は撮影時のアクシデントとされていましたが 実際は休憩中にキャベツを踏んで滑ったことによる骨折を 宣伝用に脚色して公表していたそうです
それはさておき 主役が無口で無感情に見えるというのは やはり映画としての魅力に欠け 興行的には失敗に終わっています


感情を失ったソルジャーと 感情をもった人々の交流が描かれる 本作品
カート・ラッセル好きの方は 観てみてもおもしろいかもしれません


3.クライシス2050 (1990年)

監督は リチャード・C・サラフィアン
製作費は 5500万ドル
それに対する興行収入は 約1000万ドル
NHK社員の原案を元に NHKも出資して ハリウッドで製作されたSFアドベンチャー映画です
広告費などを除いた単純計算でも 4500万ドルほどの損失を生みだしてしまいました

舞台は 西暦2050年
太陽は 中心核における核融合反応に異常をきたして制御不能になり だんだんと膨張
その太陽の超巨大フレアによって 技術が高度に発達した地球は 滅亡の危機に見舞われていました
人類は 反物質爆弾を使ってフレアの方向を変えるため 宇宙船ヘリオス号に乗り込んで太陽に向かう...というストーリーです


当時NHKの社員だった川田武の原案を元に映画化され 俳優でもある リチャード・C・サラフィアンが監督をつとめた作品です
特撮監督にはリチャード・エドランド そしてデザインにはシド・ミードがクレジットされている まさかの豪華な布陣です
別所哲也の映画デビュー作でもあり 半年以上のレッスンの成果として 流暢な英語を披露しています
太陽に向かう宇宙船をメインに描かれますが これは後に「サンシャイン2057」、「ソーラーストライク」などでも使われた設定です
終始薄暗いシーンが多く せっかくデザインされた宇宙船の様子も よく見えない場面が多いのがもったいないです
また 正直言って脚本については この内容で2時間近い尺というのはかなり厳しく ある意味製作陣は勇気があったのだと思います


本作品は まず1990年に日本で映画公開され 興行成績の不振によりアメリカでの配給が危うくなりました
これにより シーンの大幅なカットと再撮影がおこなわれ 1992年11月にようやく公開された経緯があります
この際 脚本の書き直しは監督の息子であるテディによって行われ 監督のリチャード・C・サラフィアンの名前はクレジットから削除され 架空の映画監督"アラン・スミシー"名義での公開となりました
また 科学者のリチャード・J・テリルが技術顧問を務めましたが 彼は当初『太陽へ人類を派遣するのは非科学的である』として 製作陣にこのテーマを変えるよう 説得しようとしました
しかし『視聴者にとって科学的な正確さは関係なく むしろそのような脚本が重要だろう』と説明されたとき『自分の仕事は あり得ない状況をもっともらしく見せることだ』と悟ってしまったそうです


アメリカのとある映画雑誌では こんなレビューがされています...
『素晴らしいビジュアルを楽しむか そのずさんな演出を嘲笑するか』
『映画にとっては小さな一歩だが アラン・スミシーにとっては大きな飛躍である』...なんとも皮肉めいたレビューです


NHK社員による原案に莫大なお金が掛けられ ハリウッドで製作されたという 不思議な製作背景をもった本作品
気になる方は 観てみてください

4.サウスランド・テイルズ (2006年)

監督は リチャード・ケリー
製作費は 1700万ドル
それに対する興行収入は 約40万ドル
ドウェイン・ジョンソン主演のSFスリラー映画です
広告費などを除いた単純計算でも 1660万ドルほどの損失を生みだしてしまいました

2005年 テキサス州に核爆弾が投下されたことでアメリカは無政府状態となり 第三次世界大戦が勃発
それから三年後の2008年
アメリカ合衆国には"US認証"という機関が新たに設けられ 国民のプライバシーは完全に政府の管理下に置かれていました
そしてその管理社会に対抗すべくレジスタンスが暗躍する中 大統領候補の娘婿であり アクション俳優でもあるボクサー・サンタロスが何者かに誘拐されます
その後ボクサーは無事保護されましたが 彼は記憶を失っており 頭の中には"世界の終わり"への筋書きが埋め込まれていた...というストーリーです


「ドニー・ダーコ」で知られるリチャード・ケリー監督による作品です
アナーキーな社会設定の中 シュールで奇妙な物語が描かれます
終始ブラックコメディ的ではあるのですが 風刺が大いに含まれた舞台設定なので 笑っていいのか分からない微妙な時間が続く内容です
作中では 中東との戦争で石油が不足し 代替燃料が必要になっていたり 量子のもつれを利用した新たなエネルギーが開発されたりと まさに今でいうSDGs的な 社会問題の行く末を描いた内容が描かれています
さらに ネオマルクス主義の過激な人々が出てきたと思いきや ポルノスターがリアリティー番組の製作に熱を入れていたり かなりカオスな様相です
元々は別の脚本だったそうですが 2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロの影響で リチャード・ケリーは当初の脚本を修正し このようなストーリーに至ったそうです


ちなみに本作品は144分という長尺で描かれていますが これは当初 さらに長い160分でした
視覚効果用の製作費をソニーピクチャーズから得る上で 作品の尺を短縮することを契約に盛り込まれ 144分になったといいます


すべてを皮肉ったようなカオスな内容に クエスチョンマークを浮かべてしまうような本作品
怖いもの知らずの方には観てほしい 奇妙なSF映画となっています


5.カオス・ウォーキング (2021年)

監督は ダグ・リーマン
製作費は 1億ドル
それに対する興行収入は 約2700万ドル
心の声が聴こえる 超能力をもった男が主人公のSFアクションスリラー映画です
広告費などを除いた単純計算でも 7300万ドルほどの損失を生みだしてしまいました

かつて人類は ニューワールドと名付けられた惑星に入植しようと試みました
その際に スパクルと呼ばれる原住民たちとの間で激しい戦闘が発生し 何とか人類が勝利を収めましたが 女性全員が命を落とし 生き残ったのは男性だけでした
そしてそれ以降 彼らは皆 自他の心の声が筒抜けになるという現象"ノイズ"に悩まされることになります
そこから長い時間が経過した 西暦2257年
主人公のトッド・ヒューイットは 養父と一緒にプレンティスタウンで暮らしていました
首長のデヴィッド・プレンティスだけは ノイズをコントロールする術を身に着けていましたが 他の住民たちは相変わらずノイズと共に生きていました
そんなある日 町の近くに宇宙船が墜落するという事件が発生する...というストーリーです


「スパイダーマン」シリーズで知られる トム・ホランド主演, 「スター・ウォーズ」でレイ役を演じた デイジー・リドリーが出演しているSF映画です
パトリック・ネスによる原作小説3部作の 第1作目を元に映画化されました
作中では"ノイズ"と呼ばれる 心の声が筒抜けになる現象がメインテーマとして描かれます
このノイズという現象がいかにも小説向きなテーマで 音声がとても騒がしく 独り言のようなノイズの演出に 観ている側が悩まされる始末です
なかなか奇妙な演出が終始繰り広げられますが 残念ながらシリアスな映画には向いていないテーマだったのでは...と思わざるを得ません


本作品は 構想から完成まで かなり時間が掛かってしまった作品です
元々は2011年頃から映画化の話があり 当初はロバート・ゼメキスに本作の監督のオファーが出ていましたが 途中で降板
トム・ホランドの主演が決まったのも数年経った2016年頃で 脚本の初稿は「脳内ニューヨーク」,「アダプテーション」などで知られる鬼才 チャーリー・カウフマンによって書かれています
その後 カウフマンは降板して彼の初稿は破棄されたため 本作品には いわゆる奇抜な"カウフマン風味は一切ありません


実は2017年に 撮影自体が一度完了していましたが 試写会での評判があまりにも悪すぎたために 2018年から再撮影を行うことが予定されていました
しかし 出演するトム・ホランドやデイジー・リドリーの多忙なスケジュールにより 2019年からようやく再撮影が開始され ようやく完成に至りました
「スパイダーマン」と「スター・ウォーズ」の主演が集まったということで 相当な興行収入が期待されていたと思われます


個人的には デイジー・リドリーが「スター・ウォーズ」のレイ役以外の演技をしているところを始めて観たので そういった点でも楽しめました
また 映画ではエイリアンに侵略されがちな人類が 侵略した側の立場になっているのは新鮮な部分もあって 興味深いところです
さりげないディストピア設定もあるので 観ることがあれば注目してみてください


あとがき

今回は「あまり知られていない...大失敗に終わったSF映画」というテーマで 比較的マイナーな大失敗SF映画の紹介でした
興行的には失敗だったとしても すべての映画には何か光るものがあるはず...そんな期待を持って これからもSF映画を探していきたいと思っています
大失敗SF映画の第3弾も またご期待いただければ幸いです
最後までご覧いただき ありがとうございました

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