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99%以上の人が知らない...超絶マイナーな傑作SF映画|史上最大の問題作も...

こんばんは ぷらねったです
魅力的な設定で描かれる ほとんど知られていない 無名のSF映画たち
今回は「99%の人が知らない名作・傑作・カルトSF映画」というテーマで 見どころのあるマイナーな作品3作に加え SF映画史上最大ともいえる圧倒的問題作を 最後に1つ紹介していきます

1.ラスト・カーチェイス 原題:THE LAST CHASE (1981年)

監督は マーティン・バーク
あらゆる車が禁止された社会を描く カナダ・アメリカ合作のディストピアSF映画です

舞台は2011年 民主主義が崩壊したアメリカ
20年前のパンデミックによって人口は激減し ボストンに拠点を移した政府によって 全体主義の管理社会が築かれていました
主人公は 石油資源の枯渇という口実によって 車を持つ事さえ禁止された社会に不満を抱く 元レーシングドライバーのフランクリン・ハート
彼は独立国家“カリフォルニア・フリーダム”を目指し 隠し持っていた愛車のポルシェを駆って大陸横断の旅に出る...というストーリーです


自費でベトナムに渡り ジャーナリストとしてベトナム戦争を取材した経験をもち ドキュメンタリー映画なども多く手掛ける カナダ生まれのマーティン・バークが監督をつとめました
本作品では 車が禁止された社会における元レーシングドライバーの男と それに連れそうことになったひとりの少年の姿が描かれます


作中において 車は単なる乗り物ではなく "自由"を象徴するような存在となっています
自身のアイデンティティーとも言える車を禁止され 抑圧されて生きてきた男がポルシェに乗って旅立ち 追跡される...そんな物語です
車をテーマにした映画としては迫力に欠ける部分はありますし 脚本もゆっくりし過ぎているのは否めませんが 魅力的な設定で赤いポルシェが走り回っているだけで 十分な個性を感じることができます


主演のリー・メジャースは スタントマンを使わずに車の運転シーンをこなしました
すこし話は逸れますが リーメジャースについては本作品の撮影当時 カナダでのロケ撮影が義務付けられていた中で 妻であり女優のファラ・フォーセットの不倫が発覚するという悲劇も起きています
また 同じように車禁止のディストピア社会を描いた 前年の「ファイヤーバード2015」という映画がありますが 俳優のジョージ・トーリアトスは なぜか両作品に出演しています
ちなみに 同時期の1981年に カナダのRUSHというバンドがリリースした「Red Barchetta」という名曲では 車の禁止された社会でドライブする風景が高らかに歌い上げられています
こちらも素晴らしいロックソングなので 映画と合わせてぜひ聴いてみてください


それはさておき...80年代当時からすれば 車が禁止されるというのは荒唐無稽なディストピア設定と捉えられたように思えますが 現代社会において排除が徐々に進んでいるタバコのように 車が禁止される社会も近づいているのかもしれません
残念ながら本作品は 日本でも一部で劇場公開されながらも 日本版ソフトがリリースされていないようです
それでもSF好きの方だけでなく 車好きの方にもおすすめしたい 見どころのあるSF映画となっています

2.デフ-コン4 原題:DEF-CON 4 (1985年)

監督は ポール・ドノヴァン
ポストアポカリプスものとしては珍しく 宇宙から物語がはじまる カナダのSF映画です

宇宙ステーションでのミッション中 船内のスクリーンには 米ソの核戦争に関するニュース映像が流れてきました
三人の宇宙飛行士は 地球のいくつかの都市で核爆発が起きたことを知り 地球との連絡は取れなくなります
しばらくして彼らは 意見の相違がありながらも 結果的には地球に帰還することに
しかし残念ながら たどり着いた地球は核の影響で荒廃してしまっていました
僅かに生き残った人類でしたが そこは元軍人たちが牛耳っている状況であり 捕虜となった宇宙飛行士たちの必死の攻防が始まる...というストーリーです


製作費は80万ドル
物理学の博士号をもつ カナダのポール・ドノヴァンが監督をつとめました
作中では ポストアポカリプスものとしてはとても珍しく 宇宙ステーションから物語が展開されていくというユニークな設定です
地球の危機的状況を知る宇宙船内のクルー達の姿 そして彼らは核戦争後の地球へ...この序盤の物語の流れが秀逸で 変容してしまった地球の状況が少しずつ判明していくような展開は とてもワクワクします
また 地味な内容ながらも ポストアポカリプスにおける混乱した社会の描写もおもしろく 適当におこなわれる裁判や処刑のシーンなど ユニークな演出も見られます
序盤のおもしろさが際立ち それを中盤以降維持できず 落ち着いてしまった印象は否めないですが それでも雰囲気を大事にする方であれば楽しめる映画かと思います


ちなみに タイトルにも使われている『デフコン』とは...「Defense Readiness Condition」の略であり 戦争への準備態勢を5段階に分けた アメリカ国防総省の規定を指します
例えば 最低レベルの『デフコン 5』は 平時における防衛準備状態を示します
タイトルの『デフコン 4』は 情報収集の強化と警戒態勢の上昇を意味し 冷戦時の大陸間弾道ミサイル部隊の態勢は 全てこのレベルだったそうです
最高レベルの『デフコン 1』は 現実世界で今まで一度も発動したことがないようですが ここまで行くと核兵器の使用が許可されることもあるといいます


この映画では 『デフコン 1』のレベルまで到達している物語になっているため タイトルと矛盾してしまっています
また ポスターデザインが印象的でそそられるのですが こんなシーンは映画内のどこにもないため『詐欺的』というレビューをされがちな作品です
それはともかく...実は日本版DVDも存在している 本作品
序盤だけで言えば傑作と言える内容になっているので 気になる方はぜひ観てみてください

3.飛べ、バージル/プロジェクトX 原題:PROJECT X (1987年)

監督は ジョナサン・カプラン
秘密の実験に利用されるチンパンジーをテーマにした アメリカのSF映画です

学生のテリーは研究のために チンパンジーのバージルへ手話を教え 人間と動物でコミュニケーションを取ることに成功
ところがその矢先 研究費が打ち切られたため テリーはバージルと離ればなれになってしまいます
テリーはバージルが動物園に引き取られたと聞いていましたが 実際は空軍のロックリッジ基地に送られていました
そこでは“プロジェクトX”という極秘の実験が行われており それは『核戦争が起きた際に飛行中のパイロットが放射能を浴びた場合 何時間生きられるかをチンパンジーでシミュレーションする』というものだった...というストーリーです


製作費は 1800万ドル
大学卒業後にロジャー・コーマンの元で修業した ジョナサン・カプランが監督をつとめ「ウォー・ゲーム」のマシュー・ブロデリックが主演
さらに「トランサーズ/未来警察2300」のヘレン・ハントも出演した映画です
作中では 心優しい少年と 感情豊かな動きを見せる 本物のチンパンジーによる物語が描かれます
映画の物語はフィクションですが 映画内のチンパンジーに対する実験は 実際に行われているものだといいます


このチンパンジーに関連して 脚本,製作のローレンス・ラスカーは 当初の製作会社であったワーナー・ブラザースが『本物のチンパンジーの代わりにチンパンジーの着ぐるみを着た俳優の起用』を主張したことに反対し 製作会社を20世紀フォックスに切り替え 本物のチンパンジーが撮影で起用されることになりました
そのため 予定調和ではないチンパンジーの動きや表情など 撮影現場のリアルな空気感が映像に閉じ込められている 稀有な映画となっています
例えばドライビングシミュレーターや フライトシミュレーターで運転練習をしたり 豊かな表情や動きを見せたり...チンパンジー達の様子には 感動を覚えてしまう程です


ただ 一部シーンの鳴き声については 人間によって吹き替えがされているそうで「宇宙空母ギャラクティカ サイロン・アタック」に出演していた アン・ロックハートなどがメスのチンパンジーの声を担当したそうです
チンパンジー達の撮影に対して テレビパーソナリティのボブ・バーカーと動物愛護活動家連合は 動物虐待があったのでは...ということで製作陣を非難
しかしこれは 噂に基づく事実無根の主張だということで裁判沙汰となり 最終的には 愛護活動家側が金銭を支払うことでの和解に至ったそうです


そんなこの映画ですが 音楽も素晴らしく これはジェームズ・ホーナーが「エイリアン2」と同時期に作曲しているため ところどころ類似性もあります
ストーリー含めて見ごたえ十分ですが 終盤の展開は賛否あるかもしれません
動物 特にチンパンジーに対する考え方を再考させられるこの映画は 日本版DVDも存在しています
2012年にも 同じく「Procect X」という原題の付いたSFではない映画があるので ご注意ください
カルト過ぎず 多くの人におすすめできる内容になっている 本作品
「猿の惑星: 創世記」にも近いテーマの描かれる 傑作SF映画となっています

4.世界を救った男 Dünyayı Kurtaran Adam 英題:The Man Who Saved the World (1982年)

監督は セティン・イナンク
史上最大レベルの 圧倒的に問題のある方法でスペースオペラが描かれる トルコのSFアドベンチャー映画です
どこに問題があるのかは 後ほど詳しく紹介させていただきます...

舞台は宇宙
2人のトルコ人宇宙パイロットは戦闘機に乗り込み 宇宙空間での戦闘ミッションに臨んでいました
しかしその結果 重力場に落ちてしまい 戦闘機ごと未知の惑星に墜落
彼らは惑星の砂漠を歩きながら ここには女性だけが住んでいると推測し始める...というストーリーです


製作費は 5000万トルコ・リラ
「トルコのスター・ウォーズ」としても知られており「スター・ウォーズ」を中心に 他のSF映画の映像や音楽,効果音をそのまま盗んで使用するという 大胆な悪事を働いた映画です


例えば 映画の序盤ではいきなり かの有名な"デス・スター"も登場しますが 残念ながらサンプリング時のアスペクト比が間違っていたことにより デス・スターは縮小
卵型の"デス・エッグ"とも言える形になってしまっています
しかし 単なる酷いパクリ映画かと思いきや 主に「スター・ウォーズ」から盗んだ映像をうまく活かし 宇宙の冒険を成立させているのは驚きで かなり笑える内容になっています


その他にも 実はNASAのロケット発射時の映像なども盗まれていますが...
意外にも 見どころは盗んだシーンだけでなく 自前のアクションシーンもスピーディーで見ごたえがあり 映像的にもおもしろいです
また 「スター・ウォーズ」の映像を背景に撮影された宇宙戦闘機のシーンのヘルメットは 路上で見かけたバイクに乗っている男性から30分借りたもので 撮影中は俳優たちが交互にかぶって使用していたものだという 低予算エピソードもあります
当初は2時間30分の尺であり 長すぎるとの判断があって約1時間30分に短縮されたそうですが この影響なのか おそろしいほどのスピードで映像が転換していくのも本作品の特徴です

さまざまな映画を盗んで完成した本作品ですが 製作陣がこのような悪事に走ったことには 言い訳のような経緯があるそうです
まず 本作品のために巨大な宇宙船のモデルが海岸に建てられましたが 撮影が始まる前に嵐と巨大な波がセット全体を破壊
これにより 製作陣は財政難に陥ってしまったというのです
ここで 映画の権利者であり 音楽にもクレジットされているクント・トゥルガーから『トルコの配給会社の倉庫から さまざまな映画のコピーを盗み出す』という 禁断のアイデアが提案されました


さらに『フィルムの一部を切り取ったあとで倉庫へ戻す』という極悪非道な作業が遂行されます
これにより 翌日上映された「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」では シーンが欠落していたといいます
さらにクント・トゥルガーは 映像だけでなく音楽も さまざまなSF映画からそのまま引用するという禁じ手を使っています
この時に彼が"借りパク"したのは「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」をはじめ「スター・ウォーズ」,「猿の惑星」,「サイレント・ランニング」,「フラッシュ・ゴードン」,「ブラックホール」,「007/ムーンレイカー」,「宇宙空母ギャラクティカ」,「ベン・ハー」などだとされています
これで自身の名義を音楽にクレジットするとは...色々な意味で驚きです


特に かの有名なインディー・ジョーンズのテーマや クイーンによる「フラッシュ・ゴードン」のテーマソングのイントロは何度も使われており 驚きます
さりげなく 一瞬だけ使われている曲もあるので よく耳を澄まして聴いてみるのもおもしろいかもしれません


ちなみに本作品は 公式(?)含めYoutube上にもアップロードされているので 自動翻訳機能を駆使すればなんとか日本語字幕で観ることもできます
また まさかの続編として 2006年の「世界を救った男の息子 英題:Son Of The Man Who Saved The World 原題:Dünyayı Kurtaran Adam'ın Oğlu」が存在しますが やはり本作品のような質感は出せず 不評のようです
絶対にやってはいけないことを行ない トルコで作りあげられた本作品
さまざまな意味でSF映画史上に残る傑作であり とんでもない内容の問題作となっています

あとがき

今回は「99%の人が知らない名作・傑作・カルトSF映画」というテーマでの SF映画紹介でした
たとえ無名でもおもしろいSF映画に 稀に出会うことができます
まだまだ知らない映画はたくさんあるので 今後も探して紹介していきたいと思っています
次回のマイナー映画特集は『99.9999%が知らないSF映画』ということで 本当の意味で誰も知らないような 過去最高にマイナーな映画の情報をお届けしたいと思いますので ご期待ください
最後までご覧いただき ありがとうございました


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