「ただそれだけ」の話が書きたかったんだ
それに気づくのに、いつもどれくらいの時間を必要とするんだろう。
「書くこと」とは、私にとって呼吸に似た行為だ。だからこそ、忘れてしまう。
わたしは一体何のために、書きたかったのか。
わたしは誰に、話を届けたいのか。
・ ・ ・
先日のnoハン会で、私はたくさんのnoterさんと出会った。
noterさんたちは、ちゃんと私を見てくれていた。
私はnoteで、自分の内側を語るのが怖い。
今も、この文章を書いていると頭の中で「すぐに、今すぐに消せ」と大きな声が響いている。
でもnoハン会で、会って、喋って、自分の「主体性の無さ」を痛感してしまった。
だから、書く。
私が文章を書く理由となった、きっかけを。
・ ・ ・
高校生になってから、私は事実上の不登校になった。
あの時の耐えようの無い絶望感は何だったんだろうと、今でも不思議に思い返すことがある。
ーーキラキラした女の子が嫌いだった。
ーー優秀な男の子が嫌いだった。
ーー「嫌い」という感情が、嫌いだった。
あの時の私は、自分を世界一醜い生き物だと思って生きた。
「嫌い」という感情は、ブラックホールだ。
何でもかんでも飲み込んで咀嚼して真っ暗な世界だけがそこには残る。
そんなふうになったくせに、人一倍プライドは高くて、学校で「個性の無い」自分を憎み続けた。
いつ消えてもいい。
けど、自分から退場する勇気もなく、納得できない学生の習慣に従い、一週間に数日は登校していた。
そんなときに。
副担任の先生が、「お茶会」という名のついたカウンセリングを放課後に開いた。
私は、話したかったらしい。
嫌いな同級生達は、私の中で人ですらなかった。話し相手に、なんて考えられない。
けど、その先生は不思議な魅力を湛えた人だった。
その人に認められたい。そう思っていろんなことを話した。
興奮のあまり、当時の記憶がない……。
けれど一言、しっかりと覚えていることがある。
多分、興奮しながら自分の興味のあることについて話し終わった私に、その先生は微笑みながら言った。
「俺のクラスに、こんな面白いやつがいるとは思わなかった」
私は、学校の仮面をつけていない私を見てほしかった。
大嫌いな自分の中にひっそりと生きていた、「面白いやつ」を素敵な誰かに認めてほしかった。
たぶん、泣いたと思う。
もう、よく覚えていないんだけれども。
・ ・ ・
あの頃の「面白いやつ」が元となって、「千羽はる」が生まれることができた。
寂しさに絶望していた高校生は、ちょっとずつ世界の扉を開き続けてゆく。
それでも「こんなものを書いてしまっていいんだろうか」と、不安で揺らいでいたところに、noハン会が催される。
「千羽はるの世界」を、認めてもらえた。
だからこそ、私はそろそろ内側へ踏み出そうと思う。
私が書きたい話は、いつだって「誰か」に向いていることを、強く意識する。
例えば、あの時の恩師に見せたくて。
支えてくれた家族に感謝したくて。
読んでくれる、あなたに何かを届けたくて。
そして、今にも泣きそうにトゲトゲしている、高校生の私を「もういいよ」と許してやりたくて。
・ ・ ・
呼吸のように普段文章と向き合っていると、つい忘れてしまうけど、いつだってちゃんと思い出す。
私はただ、「誰かが寂しくならない」話が書きたい。
あの時の先生がくれた些細な言葉のような、「ただそれだけ」の話が、書きたいんだ。
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