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夜明けを恐れる私たちに


夜明けってなんであんなに切ないんだろう。

空が少しずつ明るくなって、車が通り始めて、バイクの音が聞こえて、家々の電気が点き始めて、けど街灯の明かりは消えていって…

また1日が始まってしまう。
鬱憤晴らすべく煙草を嗜み語らう私たちが、また世界の忙しなさに吸い込まれていく。


これがとてつもなく辛い。


このまま夜明けが始まる瞬間でいてほしい、そのまま世界が静かなまま止まっていてほしい。

もうしばらく私たちを2人きりにしてほしい。

ついでに煙草の火も消えないでほしい、あの炎は短命すぎる。夜明けの空と空気も短命すぎる。

泣きそうになる。
なのに私たちは笑っている。


生まれた瞬間から死に向い、出会った瞬間から別れは決まっているなんて

切ないね

運命はきっと意地悪だけど、私たちは最悪な時代を生きることになりそうだけど、一緒に時間を過ごせて嬉しいよ

ありがとう。

煙草も、ありがとう。私たちの憂鬱を半分くらい空気にしてくれて、ありがとう。
言葉が頼りない時は、煙草を吸えばいい。



生きるのが下手くそな私、夜明けの空気を吸って許しを乞う。

なーんにもしたくないの、ごめんね
なーんにもできないの、ごめんね

けれど私は好きなの、この明け方の空が、夜中と呼べる最後の時間が。


きっと私は何者にもなれない


なんて全てを知ったような顔して思うよ


私は何処へ向かってる?


こわいよ、生きるのも死ぬのもこわい。



この世に生を受けたあの日のように
私は声を上げて世界の中心で泣いてみたい。



その声を拾い上げてくれた人こそが、おそらく、運命の人だと思うから。




日本はもうすぐ朝4時を迎える。
明け方はすぐそこだ。



私は今日も何処かへ出掛けてゆく。

何処へも辿り着けないとわかっていながら電車に乗る。

その時ヘッドホンからはいつもと同じ曲が流れている。

同じ電車に乗り合わせた人々はきっと手元の画面を見つめている。

だから誰とも目が合わないと思う。

いつもと同じ曲が流れている。

今日はたぶん雨が降る。

私はきっと傘を握っている。

遠くに置き去りにした幼い少女を想う。



私は生きている。

夜が明ける。

私は生きる。









夜明けを恐れる私たちに、愛を込めて。

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