閉店と渡仏と、新店舗
突然ではございますが、
パティスリープレジレイルは3周年を迎える2023年5月24日をもちまして閉店させていただきます。
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により予定していた渡仏が不可能となり、人生迷子の中急遽オープンしたのが現在のお店でした。
それからもうすぐ三年、24時間365日と言っても過言ではないほど、どんな時でもお店のこと、仕事のこと、お菓子のことを常に考えながら、時間・お金・気力・体力、持てる限りの全てのものをかけて現在のお店と向き合ってきました。
そんな中で、精神的にも肉体的にも限界を迎え体調を崩してしまったり、何もかもうまくいかなかった時期もありました。
しかし、お店に通ってくださる沢山のお客様、SNSを通じて応援してくださる方々やお仕事をご依頼してくださる方がいて、友人、知人など周りのみんなの支えもあり、ここまでやってくることができました。
3年前には想像もできなかったような大きなお仕事をいただいたり、ずっと通い続けてくださっている常連様が何人もいたり、まだまだこれからお店が大きくなっていく良い時期であろうに、本当に今ここで辞めてしまっても良いのか正直正解はわかりません。
ただ、ずっと昔からの夢であった"自分のお店を持つ"ということを実現した今、もう一つの目標であった"お菓子の本場フランスで学びたい"ということを、可能な限り若いうちに実現するべきだと考えました。
(オープン当時の心境や状況は、こちらのnoteに綴ってあります。)
元々は、コロナ凌ぎのために一人で細々とやっていくつもりだったお店が、いわば繁盛店と言っていただけるほどのお店となり、オープンしてからの数ヶ月間は毎日毎日、寝る時間もないまま翌日の仕込みに追われていました。
数日間のお手伝いを予定していたのんすけは、結局そのまま2年弱も一緒に働いてくれたね。
途中、手が足りないからとさらに人を雇ってみたり、設備を整えて製造効率を上げても、とにかくその日その時の仕事だけに追われる毎日の中、ある時プツっと糸が切れたかのように動けなくなってしまい、地獄のような日々を過ごしていた時期もあります。
そんな毎日の中で、私が人生をかけて本気でやりたいこと、夢や目標、お菓子作りを続ける理由、様々なことを考え自分を見つめ直した結果、今が次のステップへ進むべき時だと決断しました。
現状、大好きなお菓子作りを通してお客様と関わることができ、常連様のお子様の成長を近くで見守れたり、お隣さんと世間話をしたり、こんなにも平和で幸せな日々はもう二度とやってこないのではないかと思うほど、とにかく幸せな毎日です。
しかし、25歳になった今、このまま現在のお店を続けている自分自身の未来を想像すると、30歳、40歳になった時、10代の頃に思い描いていたレベルに到達できていません。
レベルというのは、肩書きとか、知名度とか、そんなものではありません。
職人として、お菓子を召し上がられたお客様をたった一口で魅了させられるような、一生記憶の片隅に残り続けるぐらいの感動を与えられるような、そんなお菓子作りがしたいです。
そして、昔、私がお菓子の世界に人生を救われたように、どこかの誰かに夢や希望を与えられるような人間になりたいです。
現在では、本や講習会、インターネットを活用すれば、いくらでも世界中の有名店のレシピを知れて、真似して作ることは誰にだってできます。
日本国内にいたって、繊細で美しく美味しいお菓子や、素晴らしい食材も豊富にあります。
しかし、私は、有名店のお菓子が作れるようになりたいわけでも、フランスで修行したことを自慢したいわけでもありません。
ただただ、まだ知らない本物のフランス菓子をしっかりと自分の目で見て、感じて、味わい、理解したいです。
ほかにも、美味しいもの、美しいもの、"まだ見たことのない魅力的ななにか"にたくさん出会って、自分の表現できる世界を広げたいです。
そして、将来はまた、一つ一つ心を込めてお作りした最高のお菓子を自らの手でお客様にお届けすることができるような、小さいけれど温もりのある、こだわりを詰め込んだお店を作ります。
パティスリープレジレイルの閉店後は、同い年のパティシエールすみれちゃんが、同じ場所で新たなお店を開きます。
この三年間、全てをかけて営んできた大切なお店を適当な人に渡してしまう事だけはどうしても避けたく、彼女なら、そんな心残りも一切なくなるぐらいの素敵なお店を作り上げると信じて、引き取ってもらえないかと声をかけました。
即答で良いお返事をくれた彼女に、心から感謝し、夢をどんどん実現させていく姿をいつも尊敬しています。
今までPlaisiraileへ通ってくださっていたお客様にも自信を持ってお勧めできるぐらい、本当に美味しいお菓子を作る素敵な方です。
私自身は、閉店日、渡仏日を決め航空券を購入したものの、現状、ビザは申請可能期間ですらなく許可が下りるかは不明です。
許可が下りると信じているけど、万が一のことがあれば、その時はその時でまた考えます。
今はとにかく、『為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり』を胸に。
いつかまたどこかで、大好きなお客様に、更にレベルアップしたお菓子をお届けできる日を目指して、精一杯頑張ります。
すみれちゃんの新しいお店と、
何年先になってしまうかわからないけど、Pâtisserie Plaisiraile ver.2
楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
それまでにもあと少しだけ、
とても短い間ではございますが
残り三ヶ月、Pâtisserie Plaisiraileをよろしくお願いいたします。
2023.2.22
パティスリープレジレイル 石渡
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