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十角館の殺人

"僕にとって推理小説とは、あくまで知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理の遊び。それ以上でも以下でもない。"1987年発表の本書は著者デビュー作、館シリーズ1作目にして、新本格ブームを巻き起こした傑作ミステリー小説。

個人的にはミステリーは普段あまり手にとらないのですが、ミステリー好きな友人に必読!とすすめられた事から手にとってみました。

そんな本書は、大学のミステリ研に所属する7名の男女、それぞれミステリー作家の名前を仲間内のニックネームにするメンバー達がかって悲惨な事件のあった孤島をおとずれる所から始まり、1人、また1人と連続殺人が起こるわけですが。

1986年を舞台設定にしている本作。ワープロが貴重で、スマホもない学生たちの描写は今では牧歌的で古臭く感じてしまうし、また仲間内でミステリー作家の名前で呼び合うのにも中二病ぽさを感じてしまいながら読み進めていったのですが。。六日目第十章の『最後の一行』に"え?"と見事に騙されました。そして最後まで読み終えた後にもう一度読み直して【張られていた細かな伏線の数々】に唸らされました。これは確かに面白い!

また、イメージするしかないのですが。本書発刊当時の状況。現代の社会派情勢をリアルに反映し犯行の理由づけにする『社会派ミステリー』が流行する一方、その対極。時代がかった舞台やあやしい登場人物が集まる中、トリックを考案し読者を欺く古典的な形式の『本格ミステリー』はパターン化【最早トリックがすべて出尽くし、滅んでいくのか】と言われていた時代において、当時弱冠26才の著者が本書で与えた衝撃、そしてバッシングを受けるも結果、現在はむしろ『新本格ミステリー』として主流になっていることを知り、その凄さを考えたり。

アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』好きな方へ。また新本格ミステリーの原点的一冊としてもオススメ。


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