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国境の医療者

"彼女は会議やスピーチでは長く長く話す。しかし雑談ではあまり積極的に話すことはしない。声も小さい。そしてよく笑う。深刻な話題でもよく笑う(中略)本当は誰よりも心を痛めている彼女の、それは処世術なのだ"2019年発刊の本書はタイ・ミャンマー国境での無償診療を医療従事者たちが綴った珠玉のリレーエッセイ集。

個人的に『ミャンマー(ビルマ)の民主化を支援する関西学生ネットワーク』の代表の方に本書をすすめられたので手にとりました。

さて、そんな本書はタイ・ミャンマー国境の町で少数民族のカレン人、シンシア医師が立ち上げ、以降30年にわたって難民・移民たちに無償診療を続けている『メータオ・クリニック』にNGOの活動として国際ボランティアとして赴任した派遣された歴代の日本の医療従事者たちが日本の事情とのあまりの違いに驚きながら奮闘してきた日々が綴られているのですが。

まず、タイにこそ訪れたことはありますが、本書の派遣員の想いを通じて、興味はあるも未到の地ミャンマー、そこに住む人たちが抱えている政治に翻弄され【自ら選択の余地がない状況】に置かれていることを知り、それに対して一見すると格差が広がっているとはいえ、まだまだ選択の余地は保証され、恵まれている日本に生まれたことの有難さを実感しました。

また、やはり医療従事者たちの視点ということもあり、劣悪な環境下で手術しようにも出来ないケースや、そもそも『看護』の概念がない状況下で様々な葛藤を抱えつつも『生命の選択』をしなければいけないエピソードも数多く描かれていて。コロナ禍で日本でも医療体制の厳しさ。受け入れや病床が足りない問題が報道されましたが【それ以前の現実】がある国や人たちが存在していることを実感しました。

ミャンマーやタイに関心ある方はもちろん、NGOや国際ボランティアに関心ある方にもオススメ。

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